幼少期1
次期国王となる第1王子、レオナルド・シュテルンビルトが生まれた年、私アリアもスコルピウス公爵家の長女として生まれた。
公爵家全体が私の誕生を喜び、使用人達も代わる代わるに私のことを見にやって来た。最終的にはあまりにも見に来るものだから、お母様や私の気が休まらないと思ったお父様が面会謝絶にしたほどだった。
2歳の時に弟のノアが生まれ、公爵家は再び喜びに包まれた。私が生まれた時の反省を生かして使用人たちの面会時間を午前と午後の30分ずつに定めていたそうだ。
私もノアをとても可愛がり時間の許す限り側にいた。
この時はまだ礼儀作法の練習のみだった為、かなりの時間を一緒に過ごせていた。常にノアにベッタリで礼儀作法の練習を嫌がり周りを困らせていたのはご愛嬌だ。
いつも一緒にいたおかげかノアは私になついてくれ、私がいないと泣くものだから、更にノアから離れられなくなってしまった。
こうして公爵家の仲良し姉弟はできあがり、私はすっかりブラコンになっていった。
弟が生まれた後も、お父様もお母様もアリアは世界一美しくて愛らしいと私のことを可愛がり、自分たちの娘こそ王妃に相応しいと常々話した。
絵本の中の王妃様や王女様、きらきらした世界に憧れていた私は大人になったら王妃様になると思っていた。
優しい両親に可愛い弟、私と弟を可愛がってくれる使用人に囲まれて毎日が幸せだった。習い事は年々増えて弟と一緒にいられる時間が少しずつ減っていくのは寂しかったけど、何の不安もなかった。
そんな毎日の転機が訪れたのは6歳の誕生日のこと。
6歳の誕生日の日、私はとても浮かれていた。私の誕生パーティーを行うのだ。まだ小さいので家族のみでのお祝いだが、誕生日はやっぱり特別である。
可愛らしいピンク色のドレスに身を包み、嬉しくって何度も鏡の中の自分を見つめた。私付きのメイドのミモルは私が鏡を見るたびに世界一可愛いと誉めてくれた。
両親と弟に早くドレスを見せたくて、ミモルを急かし急いでパーティーを行う広間へと向かう。広間へと続く階段を下りている途中、お母様と手を引かれている弟の姿が見えたので駆け寄ろうとした時、階段を踏み外し転がり落ちてしまった。
転がり落ちた時、自分だけど自分じゃないような記憶がよみがえった。
あれは関東では珍しく雪が降った日の翌日だった。当時高校生だった私は年の離れた小学生の弟を迎えに行く途中で、前日の雪が凍って滑りやすくなっていたため気をつけて歩いていた。しかし、うっかり足を滑らせて歩道橋から転落し、打ち所が悪くて死んでしまったのだ。
そこまで思い出した後は雪崩のようにどんどん記憶が入り込んで来た。記憶の渦に6歳の私の頭はパンクしてしまい意識を手放したのだった。