幼少期:レオナルドside1
主にお茶会が決まってから、前ページまでの内容をレオナルドsideで書いていきます。
結婚という言葉に目を見開いて驚いているアリアを見ながら、純粋だなぁ…と眩しく思う。
僕にもこんな時があったのだろうか…。
まだ6歳なのにこんなことを考える自分がおかしいのかもしれない…。
僕は5歳の誕生日から社交の場に出るようになった。
幼いため短時間の参加ではあるものの、様々な思惑の人々に晒されるのはあまり良い気持ちのするものではなかった。
大人だけではなく、時に子供までもが自分を利用しようと近寄ってくることに嫌気がさし、特に次期王妃の座を狙ってやってくる令嬢の相手に辟易としていた。
しかし、王座を継ぐ身としてあまり敵を増やすべきではないと判断し、受け流すだけの日々を送っていた。
そんなある日、母上から僕の婚約者候補であるスコルピウス公爵令嬢の話を聞いた。その令嬢、アリアはこの国では非常に珍しい、弟と同じ赤い瞳を持っているという。
それを聞いた途端、俄然興味が湧いた。もしかしたら、弟の理解者になってくれるのではないか。
淡い期待を抱きながら、パーティーやお茶会で会える日を待ち続けた。
しかし、一向に赤い瞳の令嬢は現れない。
アマ・デトワール学園に入学すれば会えることは分かっているが、できれば入学するまでに会いたかった。日に日に外へ出るのを嫌がるようになる弟に会って欲しかったのだ。
会えない日々に苛立ちが積もるばかりだったが、遂にチャンスがやってきた。母上が赤い瞳の令嬢を元気づけるためにお茶会を開くことにしたのだ。
赤い瞳の令嬢、アリアにやっと会える!!
喜んだものの『元気づけるため』ということが気にかかり母上に聞けば、なんと階段から落ちた後、ショックで寝込んでしまったのだという。
きっと階段から落ちたのが余程怖かったのだろう……。か弱い令嬢を想像し胸が締め付けられる思いがした。
それは初めての感情で、戸惑いはしたが嫌な気分ではなかった。
僕も少しでもいいからアリアを元気づけたい。
その時始めて赤い瞳の令嬢だからでも、弟の理解者になって欲しいからでもなく、アリア本人を意識した。
お茶会の開催が決まれば、僕に何かできることはないかと母上に相談した。今まで社交の場では相手から来るばかりで、自分から話しかけることはなかった。そのため、どうすれば良いのか分からなかったのだ。
母上は僕の相談にとても驚いていたが、同時にアリアのために何かしたいという僕の気持ちを喜んでくれた。
母上の提案で子供がメインの堅苦しくないお茶会にすることが決まり、僕はお茶会でやる催しを考えた。
お茶を飲み、語り合うだけのこともあるのだが、プロの奏者が来て演奏するなど何かしらの楽しみがないと僕達子供は暇をもて余すのだ。
女の子が喜びそうな催しを一生懸命考え、少し恥ずかしかったけれどアリアへの招待状は僕が書いた。
アリアからの返事に『とてもたのしみです』と書いてあるのを見て舞い上がった。社交辞令かもしれないが、丁寧に書かれてあるその言葉がとても嬉しかった。
お茶会前日に、最後まで渋っていた父上を何とか説得して催しの許可を取り、後は当日を迎えるだけとなった。
そして、当日。朝からそわそわと落ち着かない。招待客が少しずつ到着するなか、今か今かとアリアのことを待っていた。
次々とやってくる令嬢を軽くあしらいながらも会話をしていると、急に周囲が静まり返った。その視線の先に目を向ければ、モスグリーンのドレスに薄ピンクのショールを羽織った少女がいた。
美しい艶やかな金の髪に、雪のような白い肌、頬は薄く色づいており、煙るような長いまつ毛が瞬けば紅のように赤い意思の強そうな瞳が見える。特徴的な少しばかり吊り上がっている目尻が、凛とした気高さを物語っているかのようだ。
まるで時が止まってしまったかのように会場は静まり返り、誰も声を発することができなかった。その静寂の意味を理解した母上が彼女とその母に声をかけるまでは…。
レオナルドsideまだ続きます。