幼少期12
私の心とは裏腹に晴れ渡る青空、見事な秋晴れだ。
ドレスを仕立てた日から2週間後、モスグリーンのドレスに淡いピンクのショールに身を包み、金の髪をハーフアップにした私は馬車に揺られながら、お母様と王妃様主催のお茶会が開かれるお城に向かっている。
お茶会と言っても、来年度アマ・デトワール学園初等部に入学する令息・令嬢がメインのお茶会にするため、堅苦しいことはないそうだ。
因みに、お父様はお仕事でノアはお留守番である。
ピンク色卒業したい!とか心の中で叫んではいたくせに淡いピンクのショールを羽織ってる自分に内心呆れながら、儚さを少しでも演出するには仕方がないと納得させる。
違う色のショールも散々試したのだが、どれも気が強そうな見た目を増長させるばかりだったのだ。
「アリアちゃん、緊張しているの?」
私が黙っていたからだろうか、心配そうにお母様が顔を覗き込んでくる。
「…はい。少しだけ。
同年代の方々とお会いするのは初めてですので、仲良くできるか心配で…」
嘘ではないが、本音を言えば将来悪役令嬢にならないような人間関係が作れるのか心配なのだ。
「大丈夫よ。第一王子のレオナルド様はお優しいと聞いているわ」
「そう…ですか…」
その王子とお近づきににりたくないのですって言えればどんなに楽になれたんだろう…
「アリアちゃん、大丈夫よ。
お母様が勇気が出る魔法をかけてあげるわ」
「えっ?」
茶目っ気たっぷりにウィンクしながら言うお母様にほんの少し肩の力が抜ける。
「さぁ、目を閉じて」
「………?」
言われた通りに目を閉じると、ふわりと甘い匂いが近づき、すぐに離れていく。
「はい、できたわよ。よく似合ってるわ」
手渡された鏡を覗き混むと、私の右耳には瞳と同じ色の綺麗な赤い宝石がついていた。
「これはね、魔法がかかってるお守りなの。
このピアスがアリアちゃんを守ってくれるわ」
そっと右耳に触れてみる。冷えた指先が少しだけ暖かくなった気がした。
……あれ?
「お母様、このピアスどのようにつけたのですか?」
私の耳にピアスの穴は開いていない。ピアスをつけてくれた時も痛みは何も感じなかった。
「魔法でつけられるようになっているのよ。
耳朶に穴を開ける必要もないし、痛くもないからいいでしょう?」
ふふっと笑いながら教えてくれる。
「ただねぇ、一度つけてしまうとお守りの効果が切れるまでは外せないのよ」
「えっ?」
何それ!?これ、外れないの!?
もうすぐ学校に入るのにいいのかな…
「大丈夫よ。学校の許可もきちんと貰ってあるから」
私の心を読んだかのように答えるお母様に驚いていると、「声に出てたわよ」と笑っている。
「お家では良いけれど、お外ではもう少し口調を気を付けなさいね」
「…はい」
一体どこまで口に出していたのだろう。うっかりしてこれ以上ボロを出さないようにしようと気を引き締める。
それから色々とお母様とお話ししているうちにお城へと到着した。
大きい…。
うちも大きいと思ってたけど、流石お城。比べ物にならない…。お城を見上げながらその大きさと厳粛な空気に圧倒される。
失礼にならない程度にお城の中を観察しながら、お茶会が開かれる秋の庭園へと案内してもらう。
そこでは既に王妃様が待たれていて、到着するとすぐに声をかけてくれた。
「カトレア、アリアさん、ようこそ」
「ご無沙汰しております、ローゼ様。
本日は素敵なお茶会にお招き頂きありがとうございます。娘とこの日を楽しみにしてましたの」
お母様と王妃様が挨拶を交わし、いよいよ自分の挨拶の番が来る。
「本日はお招き頂きありがとうございます。
デニス・スコルピウス公爵の娘、アリアと申します」
きちんと貴族の礼をとる。
ローゼ王妃様も私に自己紹介をしてくださった後、やはりと言うべきか、レオナルド王子を紹介してくれると言うのだ。
全力で断りたいが、そんなこと言えるはずもなく、遂にレオナルドとのご対面の時が来てしまった。
アリアの両親の名前が出てきました。
アリアの父:デニス・スコルピウス
アリアの母:カトレア・スコルピウス
王妃様:ローゼ・シュテルンビルト
因みに王様はアレクサンダー・シュテルンビルトです。