初等部編65
あだ名のところを訂正しました。王子呼びに違和感を覚えたので……
「……レオ」
ぽろりと彼の愛称が口を出た。それを聞いたレオナルド王子は目を細め、名残惜しそうにもう一度頬を撫でると離れていった。
「もう、そうやって呼んでもらえることはないと思ってたよ」
「いや、その……」
何と言えば良いのだろう。うっかりしたなんて言えないし……。
「嬉しかった。……でも、駄目だよ。変な憶測を呼ぶようなことをしては。僕達は後少しでただの友人になるのだから」
「うん。ごめん」
「まぁ、僕としては仲間内だけの時ならそうやって呼んでくれてもかまわないんだけどね」
そう言うとパチンとウインクをされた。気障な言動にくすりと笑いが溢れる。
「プリオス様みたい」
くすくす笑いながら言えば、レオナルド王子は心底嫌そうな顔をしていた。
「プリオスとだけは一緒にされたくないのだけど」
「そんなこと言うと、プリオスくんが悲しむんじゃない?レオくん」
「……いや。プリオスのことだから自分の素晴らしさが分からないなんて人生損してる!!なんて言うんじゃないかな?」
「あり得る!!」
私のレオくん呼びに少し驚いたようだったが、レオナルドは気にすることなく話を続けてくれた。レオという愛称ではもう呼べない。だから代わりにジンスが王子と呼ぶみたいにあだ名にしたのだ。
だって今更、様付けなんてしちゃったら遠い人みたいだもの。折角、友人のままでいられるのだから。だからいっそのこと、君づけで読んじゃえば良い。レオのこともプリオス様のことも、フランチェスコ様のことだって。みんなを君づけにしてしまえば、特別感は薄れるはずだ。
レオナルドはどう思ったかな。私もあなたの友人でありたい、一貴族として少しでも支えになりたいという想いは伝わったのだろうか。
……うん。多分、レオナルドのことだから伝わったんだろうな。
これからも友人でいてくれることが嬉しくて笑えば、レオナルドも笑みを返してくれる。それは晴々しい笑顔だった。
何でジンスも呼ばれたのだろう?と思いながらも、そろそろ3人で中に入ろうとすると、レオくんに先に戻るよう言われてしまった。
なので、私は只今一人ぼっちです。まぁ、ノアとリカルド様を探せば良いのだけど、何となくそんな気分になれなくてバルコニーの近くの扉で二人を待っているんだけどね。
決して仲間はずれにされたとか思っているわけではありませんよ。……ただ、ちょっと寂しいなぁとは思っているけど。
チラリとバルコニーへと続く扉の窓から二人を覗くと背中を向けているので、表情すら見えなかった。
仕方なくボーイからドリンクをもらい、喉を潤す。一口飲んでその美味しさに小さく息を吐いた。
あぁ、これはシュタインボックス領の果実を使ったものだ。味は濃厚なのにさっぱりとしていて炭酸にもよくあっている。……懐かしいな。一年生の時に思い付きで作ったことを思い出す。
あの頃はカトリーナはレーン様との未来を夢見ていた。……今はどうなんだろう。本人はこの婚約を幸せだと言っていた。その表情に嘘偽りはなく、スクラート様に恋をしているようにも見えた。
けど、カトリーナのことだからそれを指摘したところで認めないような気がする。認めちゃった方が今よりもっと幸せになれる気がするんだけどな……。
何となく、レーン様を視線のみで探せば、すぐに見つかった。今日も腕にはエラ・ヴィダーさんがくっついており、表情には疲労感が滲み出ていた。
……あっ、うん。見なかったことにしよう。
そんなことをしている間に、レオくんとジンスが戻ってきた。間もなく、カトリーナの婚約パーティーが始まる。
次回はレオナルドかジンスsideでバルコニーでの出来事を書きます!!なかなかカトリーナの晴れ姿にたどり着けない……