初等部編59
いつもありがとうございます。
方向性は決まってたのですが、上手く書けず遅くなりました。次回も苦戦しそうなので、更新が遅くなるかもしれません。
気長に待って頂けると嬉しいです<(_ _*)>
皮肉めいた言葉にカチンと来たが言い返してしまったら、また前と同じになるだろう。冷静にならなくては。
「……確かにそうかもしれない。私の家は自由だと思う。だけど、どうしてイザベラは……ピスケス家は自由にものが言えないの?」
「私の及ぼす影響が大きいからよ。それが、たった一言であっても」
苦虫を噛み潰したかのような表情でイザベラは拳を握りしめた。
「何かあったの?」
「アリアも覚えているでしょう?初等部入学前のお茶会での私の傲慢で醜い姿を」
「えっ?」
「レオナルド様に相応しいのは私だと言い放ち、あなたの瞳まで馬鹿にして……」
もちろん覚えている。あの時、私は私に変わって悪役になってくれるんじゃないかと喜んでいた。だけど、イザベラは後悔してたなんて……。
気まずさのあまり視線を足元へと移す。だが、それが良くなかったのだろう。イザベラの声が震えた。
「あの時の私は何も考えてはいなかったわ。私の考えなしの言葉が、嫉妬から産まれた言葉がどんな影響を与えるかなんて……。私達はどんなに幼くても公爵令嬢なのよ。その言葉は時として大人の……ピスケス家の言葉だと思われてしまう。
私は危うくピスケス家とスコルピウス家で派閥を作ってしまうところだったのよ」
「待って。それっておかしくない?いくら公爵令嬢とは言え、そんな小さな時の言葉だけで派閥が作られるはずない。誰かがそうなるように仕組もうとしたとしか……」
その後の言葉は続けられなかった。あまりにも悲しそうに笑ったから。
「そうね。アリアの言うとおりよ。あの日、私はアリアに話しかけるつもりは元々なかったの。だけど、不安になったのよ。このままではレオナルド様のお心はアリアのものになってしまうって。それならば、アリアに身の程を弁えさせるしかないって。全ては私の弱さが原因よ。
そもそも、身の程を弁えなくてはならなかったのは私の方なんだけどね」
おかしい。嘘は言ってはいないのだろうけど、何かを隠している気がする。
何を隠してる?いや、庇ってる?
「……イザベラは誰に言われたの?」
そう問いかけた時、イザベラの体がビクリと跳ねた。
イザベラの性格上、直接言ってきたとしても、外見のことや作法のことしか言わない気がする。今思えば、あの時のイザベラは変に思える。確かに人を見下してたんだけど、どうも入れ知恵されてた感が否めない。訳も分からず、不貞なんて言葉をすぐに使うだろうか?このプライドの高いイザベラが。
「あの時、不貞って言葉の意味を正しく理解してた?」
「大人の真似をしたのよ。考えなしだったわ」
そう言って、視線をそらしたイザベラに確信めいたものを感じた。
「誰をかばっているの?」
私の問いに無言で首を横に振る。本人はどうにかして誤魔化そうとしているのかもしれないが、ここで見逃すわけにはいかない。イザベラをずっと追い詰めていたものがここにあるのだから。
「ウィダーさん?それとも、ヴィオラさん?」
取り巻きだった二人の名をあげるがイザベラは首を振るのみ。
「あの二人がそんなことをあの歳で言えるはずないか。………………えっ?まさかーーー」
私が気が付いたのが分かったのだろう。イザベラが小さく「違うの」と呟いた。その一言で確信へと変わる。
イザベラに入れ知恵したのは私の親友だと言うことが。




