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初等部編58


 プリオスの予想通り、イザベラは庭園にいた。白いベンチに腰を掛けてぼんやりと一番好きな花だと言った薔薇を眺めている。


「私はここで待っているわね」

 遠くにイザベラの様子は見えるが、声は聞こえないであろう場所でカトリーナは足を止めた。様子は気になるが、私達二人の問題のため席をはずしてくれるようだ。


「ありがとう」

 私にカトリーナは笑顔で頷くと近くのベンチへと座る。その隣に然り気無くプリオスが腰を掛けると嫌そうな顔をした。


 カトリーナってプリオスのこと苦手だったっけ?二人で話してる姿って見たことがあまりないかも……。イザベラのところに行きたいけど、このまま二人で待たせるのは不安だ。

 そんな私の様子に気がついたカトリーナは顔に笑顔を張り付けた。


「大丈夫だから、行ってらっしゃい。プリオス様のことは本当に苦手だけど、この方は紳士だから心配いらないわ」


 本人を目の前にして苦手だと言い切るカトリーナに対し、プリオスは「そんなこと言わないでおくれ、美しい人」とカトリーナの手をとっている。そして案の定、手を叩き落とされて冷たい視線を浴びせられていた。その時のプリオスの何と嬉しそうなこと。


 そう言えば、プリオスはドMだったな。カトリーナはSっ気が強いけど、いじめて楽しいタイプじゃないし、ああやって喜ばれるのが嫌なんだろう。


 さっさと行けと言わんばかりに笑みを深められる。

「なるべく早く戻ってくるから」

 この状況が長く続くのもまずい気がしてそう言えば

「ゆっくり話してらっしゃい。お互い遺恨(いこん)の残らないように」

と手を振って見送ってくれた。





 近くまで来れば、気配で気がついたのだろう、イザベラが視線をこちらに向けた。


「アリア……」

 今にも消え入りそうな声で呟かれる。


「さっきは言い過ぎた……ごめん」

 言ったことは本心だったけれど、傷つけたかったわけじゃ…………いや、あの時は敢えて傷つくような言葉を選んだ。自分を否定されたから、傷つけようとした。最低だ。

 でも、言ったことは謝らない。譲れない。だから、言い過ぎたことを謝ろう。傷つけようとしたことを。許してもらえなくても、自己満足でも。


「いえ、私の方こそ。アリアの気持ちを考えていなかったわ。自分を否定されることがどんなに辛いのか、知っていたはずなのに」

 そう言って視線を落とした。いつもの勢いも快活さもなく、公爵令嬢としての凛とした姿も見られない。そこには年相応の女の子がいた。


「私ね、初めて好きになったんだ。今までずっと友達や家族の好きはあったけど、それとは違う感情を知らなかった。だから、イザベラが言う通り少し浮かれちゃってたと思う。

 その姿は人から見たら滑稽かもしれない。他の人を傷つけているのに恋に浮かれるなんて薄情に見えるかもしれない。だけど、私はそれが悪いことだとは思わない。何で好きな人を好きだって思ったらいけないの?言っちゃいけないの?

 確かに私は筆頭貴族の娘だし、まだレオナルド王子の婚約者候補みたいだけど…………、だけど心は私だけのもの。言いたいことは言うわ。時と場合は選ばなければならないけれど、私達には発言の自由があるんだから」


「私達に自由なんてないわよ。公爵家の娘として産まれた時から。あぁ、でも魔術師を輩出した家系は特別だものね。様々なことに縛られることがないんだもの」




週末は予定があるため、次回更新は来週になるかもしれません

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