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初等部編52



 教室へと戻り、いつも通り授業を受ける。私の席は一番後ろなので、少し離れた席のジンスの後ろ頭をぼんやりと見つめる。

 ジンスは寝不足なのか珍しく船をこいでいる。昨夜のお部屋突撃が原因なんだろうと申し訳なく思いながらも揺れている頭が可愛い……なんて重症だ。


 そんなジンスを隣の席のレオが起こしている。

 …………レオにも早く話さないとだよね。

 これまでレオにはずっと曖昧な態度だった。私が自分の気持ちに気が付かなかったから。


 レオはいつも周りを気にかけられる優しい人だ。そして、人の上に立つという重責にも負けず努力し、公平な目で判断できる人。

 初めて会った時は強引さに困らされたっけ。でも、私の名前の入ってるオレアリアという花を見せてくれた。弟のリカルド様の為に初対面の私に頭を下げた。

 私が避けてた時も不満そうにしても責めないでいてくれた。曖昧な態度の私に甘い言葉を囁きながらも、本気で困ることはしないでくれた。

 きっと、ジンスがスコルピウス家に住むことになった時も嫌だっただろうな。あの時は分からなかったけど、好きな人ができた今なら分かる。それでも、嫌な顔一つせずジンスの安全が確保できるって喜んでくれた。


 こんなにも優しい人をこれから振らなくてはならない。今まで以上に傷付けるんだろうな。もしかしたら、今までみたいに仲良くしてくれなくなるかもしれない。


 それでも、私はレオと一緒になる未来は選べない。自分の気持ちに気が付いた以上、悪戯に答えを引き伸ばしてはいけない。

 お父様に婚約者候補の辞退を言ってもらうこともできるけど、逃げちゃ駄目だ。レオは王子としてではなくレオナルド個人として私を好いていてくれたと思うから。だから、私も公爵令嬢としてではなく、アリアとして答えなくてはならない。


 今日の放課後はジンスと約束があるけれど、ジンスとの予定はまた明日にしてもらえるか聞いてみよう。ただの自己満足なのは分かっているけれど、少しでも早く伝えることが私にできる最大限の誠意だと思うから。



 だけど、その日もまた次の日もレオと話すことはできなくて、機会を窺い続けてもう一週間になる。


 皆で話す時は普通なのに私と二人になることを避けられている気がする。

 どうしよう……。まさか二人になることがこんなに難しいなんて。


「私が呼び出そうか?」


 見るに見かねたカトリーナの申し出に、悩んだが、このままでは(らち)が明かないのでお願いをした。


 そして、その日の放課後にカトリーナは呼び出すことに成功した。


「なんて呼んだの?」

「事実を言っただけよ」


 気になって聞いてみれば、凄みのある笑顔で答えてくれた。でも、言っている意味がさっぱり分からない。


「女々しく逃げ回ってないで腹くくったらいかがですか?って言ったのよ」

「…………え?」

「事実でしょう?」


 カトリーナの笑顔が怖い。何が彼女をこんなに怒らせているのだろう。


「やっぱりレオは私のこと避けてたよね」

「そうね。逃げ回ったって答えなんか変わらないのにね」

 カトリーナの毒舌は止まらない。

「無駄に逃げ回って好きな子を困らせるなんて、しょうもない。ビシッと振られて、振ったことを後悔させるくらいの男になれってもんよ」

 ぷりぷりと怒っているカトリーナは、見た目に反して男らしい。


「……やっぱり、レオは私が何で話したいのか気が付いているんだよね」

「そりゃそうでしょうね。アリアのジンスさんを見る目が以前にも増して熱が混もってるもの。

 レオナルド様は可哀想だけどお互いのためにさっさと話し合うべきね。放課後は逃げないようにしっかりと捕まえてサロンまで連れていくから安心して」

 頼もしいカトリーナにお礼を言う。


 そして放課後、逃げないようにとカトリーナに見張られながらレオはサロンへとやって来たのだった。




 



次回は時間を少し遡ってレオナルドsideかジンスsideです。どちらにするかは考え中です。

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