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幼少期9


 さて、どうしたらいいのだろうか……。

 突然だが、私は今新しい壁にぶち当たっている。勿論、本物の壁ではなく気持ちの上での壁だ。


 6歳って、どんな手紙を書くの?


 実はまだ手紙を書いています。昨日から少しも進まないんです。


 拝啓……は違うかな。親愛なるって言っても会ったこともないし、親愛なる関係になるつもりもないしなぁ…。あまり大人っぽい内容は駄目だけれど公爵令嬢として相応しい手紙を書かなければならない。


 前世の記憶を思い出し精神年齢が6歳から22歳にまで一気に成長してしまった私は、常に6歳の令嬢ってどう振る舞えばいいの?という疑問にぶつかっている。


「どうしよう」

「体調を気づかって下さったお礼と、喜んで参加させて頂く旨を書けばいいんじゃないかしら」

「…お母様」


 気付けば後ろにお母様が立っていた。悩みすぎてて気が付かなかった。


「レオナルド様からのお手紙の返事に悩んでるのでしょう?本当はゆっくり書いてって言ってあげたいところなのだけど…」

「いえ、あまり遅くなると失礼ですもの。お母様のおっしゃる通りお礼と参加させて頂くことを書きますわ」


 私の返事に笑顔を返したお母様はそのまま薄ピンク色の猫足のソファーにゆっくりと腰をおろした。


「アリアちゃんは何に悩んでるの?」

「えっ?」

「お手紙の返事もだけれど、それだけじゃないように見えたから」


 驚いた。表には出していないつもりだったのに、どうして分かったんだろう。そんなに顔に出てたのだろうか。


「言いたくないことなら言わなくたっていいわ。でもね、これだけは覚えていて。私もお父様も何があってもアリアちゃんの味方よ」


 そう言って笑みを深めたお母様を見て泣きたくなった。私が何に悩んでるのかなんて言えない。

 だけど……

「ありがとう。お母様」

心がすっと軽くなった気がした。


 私はソファーへ行きギュッとお母様に抱きつく。謝罪と感謝を込めて。


「いくつになっても甘えん坊さんね」


 優しく抱き返し、背中をゆっくりとさすってくれる。この時ちょっとだけ泣いたのは誰にも秘密だ。もしかしたら、お母様には全部お見通しなのかもしれない。


 どの位そうしていただろう。5分かもしれないし10分かもしれない。本当はもっと短いのかもしれない。


 恥ずかしくなってきた。

 もぞもぞとゆっくり体を離すと、さらりと髪を撫でられた。


「さぁ、手紙を書いちゃいましょうか。

午後からは新しいドレスを仕立てなければならないし、忙しくなるわよ」


 明るく言うと机の方に向かっていく。どうやら、私と一緒に手紙を書いてくれるらしい。急いでお母様の後を追い、手紙を書き始める。


『レオナルド・シュテルンビルトさま


 おてがみありがとうございました。

 おへんじがおそくなってごめんなさい。


 たいちょうもすっかりよくなりました。


 おちゃかいには、よろこんでさんかします。

 いまからとてもたのしみです。


 アリア・スコルピウス』




まだ6歳が書いたものとして、手紙の内容は平仮名にしました。読みにくいとのご意見を頂いた場合は漢字に直そうと思っています。

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