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01. 異世界より

 >>自分が前衛にバフかけるので、りぃさん回復担当お願いします!

 >>了解です!

 >>じゃあ私タイミングみて風ダメ激化貼りますねー

 >>お願いします!


 ルナティックもこの感じならいけそうだな……

 ってかSSRの竪琴当たってくれればもっと楽なのになあ……

 明日は人集まったら周回できるだろうな、そんなことを思いながら、APも使い切ったことだし……とスマートフォンから目を離し、冷え切ったコーヒーを啜った。あれ、注文届いたのいつだっけ。まあゲリラのレイドイベの開催時間が四十五分だから結構時間経ってるのか……

 せっかく来たんだから、どうせなら追加で頼もうかと悩んだが、窓の外の景色は一向に変わる気配が無かったし、むしろ雨脚が強まっている気さえしたので、そそくさと喫茶を出た。ここの喫茶店、思ったより学生も少ないし、何より一人で来る客が多いせいか店内が静かでいいな。店内に響き渡るのは遠くどこかの雷鳴と轟々と地を叩く雨のノイズだけだった。今日は空が憂鬱だったから人々の口数も減っていたのかもしれない。


 轟音。後に続くのは瞬く間に移ろう青白い光。……鋭い閃光。


 驚くことにそれはすぐそこまで迫っていた。傘を少し傾けて空を仰いだ。容赦ない雨粒の無数の針と共に神々しく光る大きな槍がこの身に落ちてくる。一千万分の一だという。そんな現実味に欠ける確率の領域で僕は命を絶った。


 ♦     ♦     ♦


「……と、いう訳でだな、君はようやく在るべき世界に還るわけだ。君があの世界に産み落とされたのはこちらの手続き上のミスだったというわけだ」

「……にしても凄いものだ。君が元いた世界の人間の想像力には感服だよ。なんせ、多元世界の〝あちら〟側まで見事に再現してしまうのだからな」

 僕の目の前には光を纏った球体がいた。手のひらに辛うじて収まるくらいの球体だ。それは聞き覚えのある言語を使った。それが人外であることは容易に察することができたが、どこか懐かしさや親近感といったものに似た感覚が心の中にはあった。

「はぁ……」

 僕は畏まることしかできない。何しろまだ、現状を理解できていない。

「おっと、無駄話はいけない。それでだ、肝心の転生時の引き継ぎなんだがな、肉体は今ある情報を基にあちらの世界に適応するように補正が入る。しかし、どの世界でも人間は人間だ。容姿がまるっきり変わることもなければ、魔法といった概念も適性が無ければ扱うこともできない」

「はぁ、そうなんですか」

 転生って……マジか。自分がとんでもない空間に飛ばされてきたのがなんとなく分かる。球体が話し始めたかと思ったら今度は転生の話ですか。にしても異世界モノって馬鹿にしていたんだけど案外本当にあるんだな、でもさすがに俺TUEEEはありませんよってことだよな。当たり前だ。その方が納得がいく。

「まあ、あちらの世界では魔法は標準装備だ。ほとんどの人間が程度は違えど魔法を操ることができる。だから君もそのうち使いこなせるようになるだろう」

 あらぁ、魔法使っちゃっていいんですか。いや、むしろそんな簡単に使えちゃうんですか。でも、それって属性とかどういうシステムになっているのだろう……

「聴こえているぞ、〝属性〟といったな」

 心の声も見透かされてるってことですか、それじゃあやっぱりこの光を束ねている球体は神様的な何かか。

「的な、でなく神様とはっきり言ってほしいところだがな」

 げ、もはやこの球体の陰口はできないな……

「もう少し崇めてくれてもいいのだぞ。仕方ない、属性についても説明してやろう」

 球体を覆う光が少し曇ったように感じた。神を気取った言葉とは裏腹にどことなく困っているという様子に見えた。

「どこも気取ってなどおらぬがな。まあさておきだ。属性は火、水、風、雷、土、光、闇、無の八つ存在する。三すくみのような有利不利は本来存在しないのだが、物理現象の仕組みは君が経験した世界とほとんど変わらない。つまるところ水魔法に雷魔法をぶつければ雷を通すし、反対に火魔法をぶつければ余程のことが無い限りその火は途絶える。とはいっても光、闇の二つは例外だがな」

 術者自体にresistとweakはないけど、魔法そのものはあくまで物理現象にのっとった形になるのか。

「うーむ、体質を無視すればそういうことになるな」

「もう少し詳しく話してもよかったのだが、残念ながら時間があまり無い。替え玉が死んでからもう一時間が経っている。急がなければ因果が崩れてしまう。やっとのことで人間一人を無理やり死なせてここに呼び戻したんだ、労力を無駄にはしたくない」


 えっと……待て、ちょっと待て。


「ってことは神様が故意に僕を殺したんですか。確率弄って僕に雷を落としたってことですか」

「それが運命というものだよ」

 光が可笑しそうに笑った。表情なんてないけどもこれは断言できた。

 へぇ、……ってとても素直に受け止める気にはならないんだけども。そんなこと聞いたらまともに生きるのがばかばかしくなった。まあ、今は死んでる状態なんだっけか。

「悪いが時間的な問題で処理が間に合わない。記憶もリセットといきたいが、前世の記憶は引き継いだままだ」

「ぐぬぬ、まだ君には話しておかねばならないことが色々とあったのだがな。悠長に属性の話をしている場合ではなかったか」

「うぬ、上手く辻褄を合わせることができたら、私も君の世界にちょっとばかし顔を出そう。その時にでもまた詳しく話そう。そうだ、君も私に質問したいことがあれば忘れぬよう書き留めておくとよい」

「では達者でな」


 走る閃光。

 上手くは言えないがまた光の槍に突き刺されたときと同じ感触だ。これから生まれるっていうのに死ぬときと同じ感覚っていうのも変な感じだ。


 家族の記憶も、友人の記憶も残されたままか……

 もう会えないというのに、寂しくなるだけだよな……


 かくして図らずも名だたる異世界転生モノの作品と同じ条件を手に入れた。記憶は引き継がれたまま、強くてニューゲームというわけだ。まあ、肝心の俺TUEEE要素は保証されてないけど。でも、なんかもう、話が跳躍しすぎてて、流れ的に俺TUEEE要素もついてくるんじゃないかって、そんな気さえする。さーてどう生きようかな。異世界、か……

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