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あたたかく、そしてあつい2

 門をくぐり抜けた2人は晴れてラフィグローブに入国した。レイはこれほど沢山の人のいる大きな市街地に来たことがないので、ついキョロキョロとしてしまう。人々は皆薄着で、あちこちから笑い声が聞こえる。あちらこちらに高い煙突が見られたが、そのどれからも煙は出ていない。


「煙突から煙が出てない……」

「そうよ。今日は休みなの。いつもはずーっと工場で何かしら燃やしてるわ。だから火の国」

「ふーん、それにしても賑やかなところだね。僕の村全員よりも人が多いや」

「まーそうねー。今日は特に多いわ」


 そういえば、さっき入国者が多いと門番が言っていた。国内にもレイと同じように辺りを見回している人や地図を眺めている人が散見できる。


「何かあるの? 」

「そうよー。今日は年に一回のね……」

「あらサキちゃんデート? 」

「え、違いますよー!こいつ新入りで! 」

「ひゅー!おアツいぜ! 」

「ここは元々暑いでしょ!もう! 」


 確かに暑い。薄着の人が多いのも納得だ。レイは纏っていた上着を脱いで、背中の袋に畳んでしまった。


「えと、そうそう今日はね。年に一回のお祭りの日なの。この日は仕事はお休みで、ああ飲食関係とお役所は忙しいや。とにかくみんなで飲んで食べて走り回って大騒ぎするのよ」

「へえー。なんのお祭りなの?うちの村でも自然や動物に感謝するお祭をやっていたよ」

「それはねー、まあ見てなさいって。多分見た方が分かるわよ。ほら、そろそろ」


 そんなことを話しながら歩いていると、大きな広場に出た。この広場は特に人が多く、進むこともままならない。そしてその広場を一望できる大きな建物のテラスには体格のいい初老の男性が立っており、お付きの者と何やら話し合っているようだ。


「あれ、見て。ほら上」


 言われるままレイが上を見上げると、街の各地に散見された煙突の中でも一際巨大な煙突がそびえていた。雲ひとつない青空を背景に伸びるそれの上には、何か巨大なものが居座っている。


「あれは…アニマ? 」

「そ。毎年この時期になると現れるの」


 目を凝らして見ると、篝火のように揺らめく翼、煙突を二巻きした尻尾、鋭い爪をもった足が見て取れた。まるでおとぎ話に出てくるドラゴンだ。

 レイが上を見上げていると大きな声が響き渡った。


「えー、皆の衆!本日は皆も知っての通り、風鳴きの宴の日である」


 テラスの男性だ。


「お、始まった始まった」

「えっなになに」

「日頃の疲れも悩みも今日は全て忘れ、最高の一日を過ごしてもらいたい。この宴は遥か古より伝わる……」

「長いぞー!長ー! 」

「早くしてくれー!竜神様もー! 」


 民衆からの野次でどっと笑いが起こる。長と呼ばれたテラスの男性も苦笑し


「せっかちめ!まあいい。それでは皆、お告げを待とう!怪我はしないようにな! 」


と挨拶を締めくくった。


「毎年最後まで言わせてもらえないのよ」

「なんだかかわいそう」

「きっと長も織り込み済みよ。みんな長話聞きにきたんじゃないもの。あっほらほら見て! 」


 おおっ、とどよめきが走る。皆の視線を追うと先ほどの竜のアニマが畳んでいた揺らめく巨大な翼を大きく広げ、長い首をもたげて天を見据えている。スルスルと長い尻尾を解いた。

 飛び立つのか、とレイは身構えた。

 そして竜は、咆哮した。轟く雄叫びは大地を揺るがせ、国中の民の鼓膜を震わせた。竜は一声を上げた後、フッとかき消えた。


「と、飛ばないのか」


 レイの独白もつかの間、今度は民衆から雄叫びが上がった。


「うおおおお! 」

「きたぁぁぁぁ! 」

「よっしゃ行くぞぉぉぉ! 」


 歓声が上がって数秒後、突然体が飛ばされてしまうような風が吹きつけた。人々の帽子や地図がいくつか宙に舞った。歓声は一際大きくなり人々は拳を突き上げ、手を叩き、隣の人と肩を組んだ。そしてその中でもよく通る声で長が叫んだ。


「それでは、開宴! 」

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