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硝子職人

 夏だからこその涼しさ、爽やかさ。あなたも体験してみませんか?

 西に淡青色、東に菜の花色が広がる空。太陽が高くなるにつれ、淡青色が主張を強くする。飲み込まれる菜の花色。グラデーションがなくなると同時に、街が動き出す。それに合わせるよう、外に出る人がいた。その人は空を見上げ、伸びをする。今日もいい天気だ、と行動で示す。するとその人は玄関から外へ、カロロロロと様々な形をした硝子細工を撒き始めた。撒き終えると、ふわりと涼しい風が玄関口を通り抜けた。

 空一面が天色に満たされる。視点を変えると木や人、太陽などの影響から空の表情が変化する。まさに七変化だ。するとそんなことを気にもせず、一人の人が縁側に現れた。その人は桶を抱えながら、器用にグラスを持っている。桶には切子のみ、グラスには麦茶と切子が入っており、動きに合わせてカラリ、カラリ、と鳴り響く。桶を外に出し、ホースで水を入れる。縁側に座り、足を外の桶に突っ込む。足から「涼」が駆け上がる。追い打ちをかけるよう、グラスに口を付ける。その人は「涼」に包まれた。

 空が人参色に覆われる。天色の残る部分も少なからずあるが、誰から見ても人参色が圧倒的に優勢だ。木や人、家などの西側が人参色に染められる。色が深くなるにつれ、次から次へと街から人が減っていく。一人、また一人と帰路につく。それに反比例するかのように、柱の釘や長押、カーテンレールから吊り下げられたとんぼ玉が風に合わせてチリン、チリン、と音楽を奏でる。風が一層冷えていく。それを伝えようとしているのか、木々がさわさわと揺らめいていた。

 雲一つない花紺色。真っ青な空を見続けていたからか、黒に感じさせるつもりすらないのか、予想以上に暗くない空。所々、大小様々な檸檬色が点々と光り輝いている。そんな中、街は今までにないほど賑わっていた。そう、夏祭りだ。帰ったばかりの人々が家族や友人、恋人たちと祭りを楽しんでいる。ある人が出店で何かを頼んだ。手渡されたカップには下方にのみ研磨剤が吹き付けられた、青空と同じ色のステンドグラスが入っている。所謂サンドブラストだ。それをスプーンですくい、口に含む。すると夏特有の爽やかな風が吹き抜けた。

 ガラスってキラキラしてますよね。それって凄く夏だなって感じるんです。夏特有の涼しさを感じさせてくれるような、汗をかいたときのグラスに入った麦茶と氷を思い出してみてください。そのグラスを食べてしまいたい衝動に駆られることはありませんか?私だけかもしれないですけど、これって夏にしかない、夏特有の気持ちなんです。

 夏の涼しさや爽やかさ。一度、クーラーや扇風機を一瞬我慢して楽しんでみませんか?

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