ホロホロのこもりうた
「ホロホロのこもりうた」
この世とあの世のはざまに ホロホロという大きな魔物がいました。
世界のはざまには いつも いろいろな人間が迷いこんできます。
ホロホロは 迷いこんできた人間を その大きな口で食べてしまうのです。
ホロホロの前では よいこも わるいこも
お金持ちも 犯罪者も 王様も めしつかいも みんな同じです。
みんな平等に食べてしまうのです。
はざまに迷いこんできた人間が いいました。
「どうか食べないでください。わたしにはまだやりたいことがたくさんある」
ホロホロは いいました。
「あなたの席は なくなったのだ。
あなたのこれからの幸せは ほかのこどもたちにわけてあげなさい」
その人間はいいました。
「どうして わたしなんですか」
ホロホロは いいました。
「理由なんてない。ただお前が ここに来たからだ」
そしてホロホロは その人間を 無慈悲に飲みこんでしまいました。
ホロホロの巣には たくさんのたまごがありました。
いろんな色や形をしたたまごは すやすやと寝息を立てるようにゆれています。
あるたまごが ふと 動き出しました。
孵ろうとしているのでしょうか。
ホロホロは 動き出したちいさなたまごを拾い上げ やさしく歌をうたいます。
しばらくして 静かになったたまごを 満足そうに見つめ 元の場所にもどしました。
ホロホロの やさしい やさしい こもりうた。