第八話【凌駕の想い―…】
―凌駕side―
あの帰り道の事から数時間。
神奈はと言うと、会議室でなんか色々雑談している。
(雑談じゃねーよ、会議だ。by 作者)
そして龍也は真面目に学校の宿題に取り組んでいる。
………
龍也が取り組んでいる宿題を上から覗き込むと………
………信じられない数式が書き綴られていた…
…………………
………
なんだこりゃ?
つか、こんなのやってねぇよ?
まだ習いもしてねぇよ?
……ぁ…
そういや………
こいつ、学年トップの頭脳の持ち主だった。
運動神経だって抜群だし
顔も良い。
本人は自覚無しだけどな。
ったく、だからお前はモテるんだよ。
まぁ、俺だって一応モテるんだぜ?
つーか、んなのどうでもいい。
そこら辺の女にモテたって俺にとっては何の意味も無い。
世の中はやっぱ難しい
別に欲しくもないものは簡単に手に入る。
逆に欲しいものはなかなか手に入らない。
仮に手に入ったとしても………
大きな犠牲が伴うんだよ…
そう、とても大きな犠牲―――
食うか、食われるか。
弱肉強食………。
今の状態はまさにそれなのかもしれない。
まぁ、今の状態は
取るか、取られるか
みたいな感じだろうけど。
………もし、神奈が龍也の所へ行ったら…
俺はどうなるんだろうな
きっと……悲しいけど……
神奈への思いを忘れる事が出来るんだろうか?
………もし、神奈が俺の所に来たら………
龍也はどうなるのだろうか?
………なぁ、郁斗さん…
俺は神奈が欲しい。
でも親友を失うなんて嫌なんだ…
ずっとこの三人の形で居たいんだ………
なぁ、俺はどうすれば………
この恋は片方が諦めなければ
実らないんだ………
でも
俺はきっと諦める事なんて出来ない。
そんなに軽い気持ちじゃない……
それはきっと龍也も同じだろうけど………
………運命は何で
こんなに残酷なんだろうか?
どうして俺達三人が仲間なのだろうか?
俺達が敵とかだったら………
こんなに恋が辛いだなんて事
知らずにいられたのに………
どうして………
出会ってしまったんだ?
どちらかが犠牲になるしかない
なんて……………
残酷だ。
でも、もっと残酷な事は………
神奈は郁斗さんが好きって事だ。
だから最初から知っていた。
―――片方が犠牲になる必要性なんて
神奈がこちらに好意を寄せていないのだから
片方が犠牲になるってのは―……
もしもの話だ………
でも、本当に残酷だよな………
郁斗さんが逝ったなんて………
郁斗さんが逝って無かったら………
神奈は悲しい想いをする事も無いのに………
どうして貴方は逝ってしまったんですか―――?
貴方が生きていれば
この恋は楽だった筈なのに
神奈も幸せだった
俺達だって貴方なら諦める事が出来た。
生きてれば―――。
―――――違う、
生きてても………
きっと諦められなかった
今さっきのは
“もしも”と言う考えで逃げたかっただけだ。
―――はぁ…
絶対に諦められないってわかってるから悲しいな―――
まぁ、それは三人共同じだろう………
神奈だって必死に郁斗さんの事を忘れようと………
想いを封印して前に進もうとしている。
龍也だって、俺だって………
皆同じなんだ……
………どうすればいいんだろうな
何をすれば丸く収まるんだろうな
運命からは逃れる事は出来ない
誰かがそう言ってた気がするけど
…………全くその通りだ
唯………
最近思う事は……
俺にとっての幸せは
彼女の幸せだと言う事。
だから
彼女が幸せなら………
俺はそれで良いと思った。
それが俺にとっての幸せなのだから。
………まぁ、こんな取って付けた様な綺麗事を並べたって
そんなのは唯の
偽満足のようなもんかもしんねぇけど………
本気で俺はそう思ったんだ―――