第五話【俺等の姫様?】
第五話【俺等の姫様?】
―神奈side―
あぁ、今日は何て最悪な日なのだろうか………。
生徒会長であり委員長でもある私が遅刻するなんて……
―――前代未聞の失態―……。
はぁ―――……
誰にも聞こえる事の無い深い溜息を心の中で漏らす。
まぁ、本業スパイなんだけど………
自分に課せられた仕事を遂行する事はとても大切だから……
この失態に関しては…後で自分にお仕置きをするしか無い。
ちなみに、今の時間は11時59分。
所謂、4時間目。
体育の時間。
男子VS女子…バスケットボールの試合中…。
「………委員長、パス!!!」
チームの井上さんが、私にパスを回す。
「…了解−」
飛んできたボールをキャッチして相手チームのゴールへとドリブルをしながら走る。
「―――そうはさせねぇ!!」
ゴールに近付いた所で、相手チームの主将―――凌駕が私に飛び掛かってくる。
「邪魔」
私は走るスピードを上げて、凌駕を振り払った。
そして………
ダンクシュートを入れた。
―――ダンッ、
「………委員長はやっぱり凄いね〜♪」
いつもよりも私の席に集まって来る生徒達。
そんな事は無いよ。
と、言って愛想笑い。
―――これくらい出来なかったら、スパイやってらんないし。
そこに凌駕も来る。
「―――神奈強過ぎだって〜」
――お前は言わんで宜しい!!。
「………凌駕もね。
―――じゃあ、そろそろ行く?」
「…あ、うん」
「……じゃ」
私はクラスな人達小さく
“行ってきます”
と言って教室を後にした。
廊下に出て向かったのは勿論、龍也の教室。
「………失礼します」
「……君、授業中だ―――あ、月遶君か。何か…用かな?」
まだ授業の終わっていない教室に入った生徒を叱ろうとした教師は私の顔を見て態度を変えた。
「……もう、授業は終わりです。
長引かせるつもりですか?」
私はあくまでも笑顔で言った。
教師はそんな私に怯えながら
「……すみません…、
じゃあこれで授業を終わりにする…」
と言って、逃げるように教室を出て行った。
途端、生徒達は喜びの声を上げる。
あの教師は、何故か授業範囲が終わっているのにも関わらず、授業を長引かせようとする…。
一応、私は生徒会長だから………それを中断させるのも仕事なのよねー……。
まぁ、この教室に来たのは違う目的だけど………
「………龍也、ちょっと」
龍也の席に行く。
………少し夜嵜兄弟と目が合った………
「………龍也君なら寝てるよ」
柊が私に忠告する。
本当だ…。
「……そのようですね(棒読み)」
………馴れ馴れしい…
全く………
相手するのも嫌だし
「……龍也、起きなさい…」
早くこの教室を出たい。
―――その一心で龍也を起こそうと龍也の体を揺する。
「………ん…、神奈……?」
―凌駕side―
龍也の教室に入るとやっぱり視線があいつ等に行く。
………しかも神奈に馴れ馴れしく話掛けている。
―――そして明らかに神奈の顔が笑っていない。
「………ほら、龍也…起きたならとっとと来なさい」
神奈が早くこの教室を出たそうに言う。まぁ、それはそうだ。
「……龍〜也、ほら……」
龍也の耳元で俺が何かを囁くと、龍也は直ぐに身体を起こした。
―――…早ッ!!(笑)
ちなみに………何て言ったのかって………
神奈に嫌な思いさせるのか?
って事。
「………うん。じゃあ行く」
――――――
―――屋上…。
今回は沢山…不良共が居た。
しかし神奈はお構い無しに屋上に上がる。
………度胸あるな…
まぁ、ボスの娘さんだからな。
唯の不良なんかには負ける筈は無い。
ほら、また不良さんが寄って来た………
「………おい、お嬢ちゃん。此処は俺等の敷地だぜぇ?
わかったならとっとと行けよ!!?」
「………はぁ…五月蝿いよ?
そっちこそ退いたら?」
神奈が突っ掛かって来た不良を睨む。殺気篭るその顔、表情はまだ神奈の本気の殺気では無い。
で、そのまだまだ本気じゃない殺気に身をぶるッと震わせる不良。
………情けねぇ……
でも馬鹿な不良はもう一度突っ掛かっていく。
「………調子のんじゃねえ!!」
今度は殴り掛かる。
「………馬鹿なの?」
神奈はそう言って不良の拳を片手で受け止める。そして、もう片方の手で不良の腹を殴った。
勿論、不良は気を失い地に身体を落とした。
で、残りの不良等も神奈に殴り掛かる。
何人居たって雑魚は雑魚だ、とでも言いたげに不良等を軽く遇う。
………Timeは0.6秒。
―――早ッ!!!!
「………あ〜…弱い。つまらない。でも、奴は嫌」
………あ〜…
奴=(イコール)夜嵜兄弟か。
まぁ、そうだな。
あいつ等は一応、雑魚のレベルじゃない。
…―――が、しかし…
神奈にとっては
最悪。
顔なんて見たくない。
消えちまえ。
的な奴だからな………
俺もあいつ等とはなるべく接触を避けたい。
あいつ等見てるとなんかむかついてくるんだよな………あの、笑い方とかなんかいけ好かねぇ…
まぁ、これは俺等三人同じ事考えてるようだけどな……。
―――あ、そう言えば…
「………、今更だけどさぁ……こいつ等の処分どうする?」
こいつ等って言うのは勿論、神奈にボコボコにされた情けない不良共の事……。
俺がそう言うと、神奈はニコッと微笑んで呟いた。
「………放っておく事は無い。
唯、実験させてもらいますよ?」
丁寧な言葉でさらりと問題発言………。
俺等の姫様は
やっぱり凄かった。
とくに何もありませんが…………もうすぐ年が終わります。新しい年が来ても宜しくお願いしますね。