第四話【戦慄!?】
第四話【戦慄!?】
―神奈side―
朝日が上り、小鳥の声が響き渡る。そんな少し早めな朝、私は目を覚ました。
両隣には、私の守護者である凌駕と龍也がすやすやと寝息をたてて眠っている。
「………やばッ……」
気付けば、昨日は………。
脳内モニターで昨日の事が映し出される。
………しかも…
キス、までされた。
……そして…、
私のリミッターが崩れた。
…思いっきり、二人に甘えてしまった…。
……………///////
あーッもうッ!!!
何で、泣いたのよ!!
“あの時”から泣かないッて決めたのに!!!
「………ッ…」
………思い出しちゃうじゃん。
郁斗兄さんの事……。
泣く時、泣きそうになる時、
いつも、思い出すのは………郁斗兄さんの事。
だから………
泣きたく無かった。
でも…、涙腺がぶち壊された。
………ヤダッ!!思い出したくない!!嫌だょ………、嫌だよ……。
「………神奈?」
「………ッ…」
調度起きた龍也は泣きそうな私に声を掛ける。
龍也ぁ……。
やばい…、何だか泣きそうになって来た……。
ぽたっ…、ぽたっ…、
もう既に涙ぐみ……。
私は泣き顔を見られないように、龍也に背を向けた。
「……神奈」
龍也はそんな私を何の突拍子も無く、そっと抱きしめて。
………
兄さんの面影と重なる龍也。
………うぅん、兄さんは死んだんだから。
………重ねたら駄目。
でも、龍也に抱きしめられると、兄さんに抱きしめられた感覚に陥る。
………正しく言えば、兄さんに抱きしめられたような安心感を得られる。
―――何で?
本当に不思議。
「……ふぇッ……ぐずッ…」
「大丈夫だから。安心して?」
優しく繰り返される龍也の言葉。次第に落ち着く呼吸。
それと共に、今度は違う不安が私の心に満ちていく。
………いつかは、龍也と凌駕から離れなければいけない。
自立して月遶カンパニーのボスになる時が来る。
出来れば、ボスになった後も従者で居てほしい。
ずっと傍に…傍らに居て欲しい。
でも近い将来、それは現実となるんでしょうね。
………彼等の仕事は、次期ボスとなる私の護衛者、守護者であり………契約期間は、私が18歳になるまで。
だから、私が18になったその時……。嫌だよ。そんなの……。
……でも、仕方無いよね。
だって、彼等だって一人の男性なんだし…。
何れ、結婚して一つの家庭を作り、子供も作り……。
若しくは、今、彼等には想い人がいたりするかもしれない。
………私は、彼等が恋をするのに邪魔な存在なのかな?
「………ぅぅ……ねぇ、龍也……私って邪魔でしょ…?」
―龍也side―
「………ぅぅ……ねぇ、龍也……私って邪魔でしょ…?」
泣き止んだと思った矢先、又泣き出す神奈。
………邪魔?
何で……?
俺は訳が判らなくてどうすれば良いのか判らなくなった。
「ねぇ、どうしたの?」
一先ず、聞いてみる。
すると、神奈は泣きながら言った。
「……だって…、ひっく……私のせいで……ぐずッ……、大変な目に合ったり、するし………好きな人がいたと、したら…私は邪魔、ひっく……でしょぉ…」
………えーと…。
その好きな人ってのは神奈なんだけど………。
それに、俺は神奈の為ならどうなっても良い。
俺は神奈の肩をもう一度優しく抱いた。
「―――邪魔なんかじゃない…」「………うぅッ……でも…、好きな人とか……、居るんじゃないの………いゃ…、居るでしょ?……なら、邪魔じゃん……ッ」
小さく搾り出すような声は、凄く悲しげでいて。
不安げな神奈の声は、静寂な部屋に響いて余計に虚しさを感じられる。
「………邪魔じゃない。だって、俺は―――」
口が滑りかけたその時、タイミング悪く、凌駕が目を覚ました。
いや、これはタイミングが良かったのかもしれない。
もし、このまま凌駕が起きなかったとしたら絶対に自分の想いを神奈に知られる羽目になるから。
神奈はいきなり目を覚ました凌駕により、自我を取り戻して。
頬に乾いていない涙の後があったけれど、その目はいつもの神奈に戻っていた。
それは俺しか知らない涙。
「………おはよう…」
怠そうに朝の挨拶をする凌駕。
俺等も「…おはよ…」と怠いそうに返した。
―――それから朝飯を済ませたりして。
朝から相変わらずハイテンションの凌駕は通学中、月遶家特製のリムジンに乗りながら、鼻歌を歌っていた。
神奈は少し五月蝿そうにしていたけど少し笑っていた。
―――――で、学校。
キーン、コーン、カーン、コーン………
俺等はギリギリ…
「黒埼、遅刻」
担任の先生に言われて………見事に遅刻。
そして神奈と凌駕も
“すみません”
と今頃、先生に頭を下げている所だろう。
俺も小さく“すみません”と言って、自分の席に行った。
学校の鞄から今日の授業の用意物を取り出して、鞄をロッカーにしまう。
ちなみに奴等―――…今、俺が一番ぶん殴りたい奴……夜嵜兄弟は兄弟仲良く、席が隣同士で俺の前。目の前だ。
黒板見ようとすると必ず視界に入る。
――――……。
俺の殺したい欲望が…。
どうも抑え切る事が出来ない。
………俺らしくないな。
と俺は鼻で笑った。
………まぁ、そりゃそうだ。
俺等の姫を汚されたのだから。
………ヤバイ、
今、制服の裏ポケットには拳銃が…………。
まぁ、………事件だけは起こさないようにしなければ。せめて、人前ではよそう。
そっと、心の中で決心?した俺だった。