全ての始まりの記憶
もう何年前になることだろうか。
初めてこの国を訪れて人の温かみというのを感じた。
そして出会ったあの人が書いていた日記を見て自分も興味を持った。
そんな些細なきっかけだったが、自分の過去を見つめ直すには良い機会だと思って、あの人の真似をするように日記をつけ始めた。
どうせなら思い出せる限りを尽くして書こうと思った。
そうして作り始めた日記は当時、膨大な量になって笑われたことは覚えている。
今となってはネットやパソコンが普及して、紙面としてかさばることは無いが、それはそれで少し寂しくも感じる。
今では過去の日記をパソコンのデータとして書き写すことは、私の数少ない趣味となっている。
私がいつもパソコンばかりいじるものだから、部下は私の体調を心配してくれるが、むしろこの数少ない趣味を奪われた方が私は体調を崩してしまうかもしれない。
そんなことを思いながら私は今日もパソコンに向かって、空き時間には古くなった日記の一部を取り出しては、それをデータ化する作業に没頭する。
当時のことを。
出来る限り思い出しながら。
あの時こうすれば、あの時にこうしていれば、私があの時にこうしなければ……。
そんな後悔と共に日記を二次元の世界へと、0と1の世界へと移行させる。
あの人がこの日記を見て、こう言ったから、私もそれ以来そう呼ぶようにしている。
創成日記、と。