春日家の朝
(なんだか懐かしくなるような夢だったな)
瞬きを数回繰り返し、ふぁぁと大きなあくびをひとつしてからのっそりとベッドを降りる。
壁にかかった鏡に目を向けると、寝ぼけた顔の自分と目があった。
寝癖であちこち跳ねている髪を軽く撫でつけ、むくんだほっぺたを軽く引き延ばし、なんとか眠気を追い払う。
まだ眠い目をこすりながらパジャマ姿のまま階段を降り、リビングに続くドアを開けると、チーズとトーストの香りがふわりと広がった。
とたんにグウゥ、とお腹がなる。
「お、起きたかナオ」
読んでいた新聞から目を離し、顔をあげて振り向いたのは、
春日孝一郎。
俺の父親。
「おはよう、孝ちゃん」
食パンの端に沿ってマヨネーズで囲いを作り、その中に生卵を割って落とす。
さらにその上にピザ用チーズをかけて、トースターへいれ待つこと数分。
我が家の朝食の定番、エッグトーストの出来上がり。
孝一郎は冷蔵庫から牛乳を取り出し、俺のグラスに並々とついでくれた。
これも定番。牛乳を飲んで大きくなれ、という事らしい。
「今日も帰りは遅いの?」
新聞に目を通す孝一郎に声をかける。
「そうだな、今日も終電になると思う。飯、待ってなくていいからな」
俺は牛乳をゴクンと飲んで頷いた。
孝一郎はメーカー企業の営業マン。
この春から所長に就任、神奈川から埼玉へ転勤してきた。
仕事は忙しいらしく、毎日遅くまで働いている。
(最近、少し老けたよなぁ……)
「老けたなと思ってるだろ」
ハッと気付くと、新聞から顔をあげた孝一郎が目を細めて俺に視線を向けていた。
(な、なんでばれたんだ?)
ごまかすようにパンを頬張り、慌てて牛乳で流し込む。
「ところでナオ」
孝一郎は読んでいた新聞を畳み、正面から俺を見つめた。
「お前、俺にかくしてることないか?」
何となく、ドキ。
何か隠してる事あったかな?
「な、何にもないけど?」
ほ~、とさらに目を細めた孝一郎は、何やらくしゃくしゃの紙を机に広げた。
「これ、何だ?」
問い掛けられ、ハテと思いながら紙を手に取り顔を近付ける。
「げ」