ぼくの原っぱ
初めまして、こんにちは。
高瀬結衣 と申します。
『家族』をテーマに、涙と笑いと恋のお話を。
読んでココロがあったかくなれる、そんな物語を目指してます。
お付き合いいただけたら幸せです。
広い、広い空間に、小さな男の子が、ひとり。
(あれは、俺だ……)
薄暗いその空間で、小さな男の子の大きな瞳から、涙が溢れだす。
キラキラと輝く仔犬のような瞳から、とめることの出来ない大粒の涙が、溢れては地面にこぼれ落ち、やがてそれは海となった。
それでも男の子は、泣き続ける。
その小さな身体ではとても受け止める事の出来ない、深い、深い悲しみに、涙を流すことで必死に抵抗するかのように。
(あの時、俺は……)
海はいつしか大きな波を作り、それは大きくうねりを上げ、気付けば俺は真っ黒な海の中で必死にもがいていた。
言うことを聞かない手足はどんどん重くなり、深く暗い海の底へと引きずりこまれていく。
(苦しいよ……お母さん)
(お母さん……どこ)
記憶が途切れかけたその時、あたたかい何かに触れた。
大きな、手。
ゴツゴツしていて温かなその手は、俺の身体を優しく、しっかりと包み込む。
涙でぐしょぐしょになった顔をあげると、柔らかな髪を額に落とし、目尻を下げて優しく微笑む顔があった。
唇が、微かに動く。
低いがとても心地好い声。
それは優しく、耳に響く。
俺は目をつぶり、そして温かで大きなその手に、身体を預けた。
(こうちゃん……)
そこで、目が醒めた。