さあ、ここからが本番だ!
「それじゃ、明日な」
「はい、それじゃ明日」
いままで白河との『ウキウキ!白河 優花の小鳥ちゃんと流星くんの仲直り大作戦!』という昭和のバラエティのような作戦名 (白河命名)の作戦の内容を考えていたのだが日も暮れてきたので玄関まで送ってもらった。
途中、例の落とし穴に落ちかけたがなんとか助かったりしたのだが・・・・・
「おまえ、あの作戦、本当に成功できるのか?」
何度も作戦内容は聞いたがどうも信用できない。
「さあ?私は、やれるだけのことをするだけですから・・・・・」
「だよな・・・・・」
「はい、元の関係に戻るのも元の関係以上の関係になるのも今以上に仲が悪くなるのも流星くん次第ですから・・・・・」
たく、白河は頼りになるのかならないのかよくわからないな・・・・・
「はぁーー、了解・・・・・」
さて、明日は大忙しだな・・・・・。
「ふあぁーーー」
学校の通学路、大きなあくびをしながら歩いていった。
小鳥と話さなくなってからちょうど一ヶ月ほどになる。
最近は小鳥と一緒に学校に通わないようになったことにも少し慣れてきた。
まあ、今日の結果によってはもう一人で学校に登校することもなくなるのだろうがな・・・・・
そういう小鳥は今、一緒に道通学路で登校することがないだけで週一ぐらいのペースでストーキングをしている。
どうやら、今日がその日らしい・・・・・
今は、電柱の後ろに隠れながら追いかけている。
一度、小鳥の方見たがすぐに電柱の陰に隠れた。
「はあぁーーーー」
今度はあくびじゃなくて溜息が出た。
「おはようございます。流星くん」
と、そこへ白河が話しかけてきた。
あれ?さきほど言ったように白河の家は俺と小鳥の家の真逆方向にあるはずだ。
「おい、どうしたんだよ?」
小鳥に聞こえないように小さく囁くように言った。
「こんなふうに、仲良く二人で話して小鳥ちゃんを嫉妬させれば話しかけてくるんじゃないかと思いましてね」
ああ、なるほど・・・・・昨日そんな作戦はなかったからな少し驚いた。
白河には最近、迷惑かけてるな。
「いやー、いい天気ですね?」
おいおい、近所のおばちゃんの世間話じゃないんだから・・・・・実際いい天気なんだけど。
だぶん、これに乗らないとなんだろうな・・・・・
「ああ、いい天気だなー」
やべ!棒読みになった!
「な、なんか、天気予報によると今週はずっと晴れらしいぞ?」
なんとか、棒読みを小鳥にばれないように早口に言ったのだが逆に不自然なった。
そして今朝、テレビで見た天気予報をそのまま言った。
「へえーそうですか・・・・・」
・・・・・会話終了!
そういう作戦を思いついたんだったら話をもっと考えておけよ!しかたない、俺が話をふるか・・・・・
「そういえば、おまえ、来週のテストの勉強、もうやってる?」
「え?あ、は、はい!」
急に話をふったから少し慌てていたがこちらの意図を察したのか白河はすぐに平常心に戻った。
「俺って数学と英語が苦手でさあ、なんか覚えるコツとかないか?」
これは実際そうなのだが・・・・・赤点は取ったことはないにしてもギリギリのラインなのでこれを機にどうにか平均点でも・・・・・
「ううーん、そうですね・・・・・」
白河は顎に手を当てて考えた。
その間に少し小鳥の様子を見ようと後ろを振り向いた。
振り向いたのだが小鳥はまるで般若かそれとも阿修羅のような顔をしてこちらを見ていた。
怖い怖い怖い恐い恐い恐いコワイコワイコワイ!なんか小鳥の後ろにどす黒いオーラみたいなのも見えそうだぞ!
「数学の場合は・・・・・」
そして、さっきの質問の答えを返そうとしている白河の方を見ようとしたが壊れたおもちゃのようにギギギィーーという音が聞こえそうなほどガチガチに振り返った。
「ど、どうしたんですか?流星くん!」
「な、なななんでもない・・・・・です」
やばいやばいやばい・・・・・いまだ背中に突き刺さる殺気立った視線が嫌な予感を感じさせている。
はあぁーー、俺、無事に明日を迎えられるかな・・・・・
それから、小鳥が話しかけてくる代わりにじっとりとした視線を感じ、さらに登校中に他の生徒からの、主に男子。殺気、まだ高校生生活は始まったばかりでなんなのだがなのだが無事、卒業できることを祈ろう・・・・・
学校についてからも小鳥の視線は続いた。
いや、席は俺より小鳥が前なので殺気は感じないが小鳥の意識は完全に俺のほうに来ていた。なぜかそれはわかった。
そのせいで授業には集中できないし脇汗も半端じゃなかった・・・・・
作戦を実行する前に気分を悪くしたら成功する確率って低くならないか?
「どうするんだよ!今日、これから作戦するんだろ?気を悪くしてどうするんだ!」
「はい・・・・・」
と小さく怒鳴った。
なぜあまり強く言わないのかと言うと、強く言えないのだ。
なにせ、今は授業中だからな。なら、なぜ俺が白河の席の近くいるのかというと朝も言ったが今はテスト期間でこの時間は自習だと担任の田中先生がいった。
ちなみに、最近、先生は一部の生徒からは下の名前で「景子ちゃん!」と言われてい。しかし、先生はそのあだ名はあまり気に入っていないらしく「次からはやめてください」と言っている。
しかし、あいかわらず、ぶりっ子は治ってないらしい。おそらく、景子ちゃんと言われる一つの原因なんだろう。
おっと、今はそれよりも・・・・・
「で、どうするよ?」
「どうするといいますと?」
白河はニッコリと微笑みながら言った。
こいつ、分かっているうえで聞いてるの?それとも、本当に分かってないの?・・・・・言うまでもなく前者なのだろうけど。
く、ダメだ!今怒ったら負けだ!
「小鳥に実行する作戦はどうするのかって聞いてんだ」
と、声と白河に対しての怒りを抑えて答えた。
「そのことですか。そんなの決まってるじゃないですか」
「というと?」
「実行しますよ」
俺の思った通りの回答が帰って来た。
「そうか・・・・・」
俺も最初からその気だったけどな・・・・・
「それは、俺も実行する気だったけどよ。さっきも言ったけど小鳥の気を悪くしたら難しくならないか?」
作戦成功の要である小鳥を連れ出すということが困難になるかもしれない。
これができないとなにも始まらない。
「大丈夫です。私がなんとかしますから」
なぜだろうか、こんなに心強いのに同時に不安も押し寄せてくる・・・・・
「・・・・・わかった。おまえに任せるよ・・・・・」
実際、俺ができるのは限られている。
だったら俺が、俺だけができることを全力でやるだけだ!
それ以外のことは白河にしかできない。なら、俺はそれを信じる!
「頼むぜ・・・・・」
「・・・・・はい」
短くて力のこもった返事だった。
あれ?なにこのバトル漫画のクライマックスみたいなの。
放課後、今日の授業はテスト勉強がほとんどだった。
そのせいか学校が早く感じた。
今、俺は小鳥よりも先に校門にいる。なぜ、先に出ているかと言うと小鳥に追われないためだ。もし、小鳥に追われていたら作戦が始まらないからな。
さあ、いつでもいいぞ!白河!
と、そこへ、小鳥がおそらく俺を追いかけてきたのだろう、校門に出てきた。
「小鳥ちゃん!」
作戦道理に白河が小鳥に話しかけた。
「あ!優花ちゃん!」
小鳥が驚いたように白河のほうを見る。
「ねぇねぇ、リュウくん見なかった?」
「さあ、私も探してまして・・・・・」
嘘だ。
「私の家に行きませんか?」
不自然!不自然だから!もう少し接続語をつけろよ!
「え?ど、どうしたの?優花ちゃん?」
うん。あたりまえの反応だろうね!
「え?いや、あの・・・・・」
全然そのあと考えてなかったのか!
「いや、どうやったら流星くんを捕まえられるかを話そうかと・・・・・」
なにが「いや、」だよ!本当にありそうだなそれ!
「ああ、でもそれ前やったよね?」
やったのか!
「それに今それよりも・・・・・」
そのあと、小鳥は沈黙し下を向いたままになった。
「はい。そのことも私の家でじっくりと話しましょう」
「うん・・・・・」
小鳥は小さく頷いた。
そのあと、白河と小鳥は二人して白河の家の方へと歩いて行った。
「さて・・・・・」
俺も白河の家に向かうか・・・・・。
白河が呼んでおいた黒い車に乗り込む・・・・・
さあ、ここからが本番だ!




