助けてくださぁーーーーい!
学校が終わり放課後また白河に呼ばれた。
場所はおもに特別授業のときぐらいにしかいかないらしい旧校舎の旧美術室でと言われた。
なんか、嫌な予感しかしないんだけど・・・・・
数分後、旧美術室についた。
「お邪魔しま~す」
念のため一声かけてから教室に入った。
そしていきなり黒くて四角いものが顔面に襲い掛かってきた。
「うおっ、あっぶね~」
「ちっ!」
よく見ると黒い四角いものはバチバチと電流が流れていた。
それスタンガンじゃね!?
そしてなぜそれを白河が持っている!
「白河!そのスタンガンを床に置いて手を頭の後ろに組むんだ!」
そう言うと白河は言われた通りにスタンガンを床に置いて手を後ろで組んだ。
白河にしては素直な気がするんだが・・・・・
「よし、白河、おまえがなんでスタンガンを持っていて俺を襲ったのか理由を聞かせてもらおうか?」
「はい・・・・・」
そう言うと白河は段々俺に寄ってきた。
・・・・・まだ嫌な予感が治まらない。
「・・・・・おまえ、なんか狙ってないか?」
聞くのには少し気が引けたのだがなぜか聞かないといけないような気がする。
というかこういうときの俺の予感はよく当たる。
できればあたってほしくないんだがこれも小鳥のせいだろうか・・・・・できれば考えたくない。
「いえ、そんなことないですよ?」
それならなぜ疑問形なのだろうか。
「そうか」
それに白河はそれを言う前からずっと言葉とは裏腹に邪悪な笑みを浮かべている。
これは何かあるな。
「それならポケットの中を調べさせてもらうぞ?」
何かあるんだったらその何かが起きるまえに終わらせればいい。
「いいですよ」
そうは言ったが白河はいまだ邪悪な笑みだった。
まあ、これで奥の手もなくなるだろう。
と白河の制服のポケットに手を近づけていく。
すると、白河は一回転して俺の手が調べるはずだったポケットからなにかを出して俺の首に押し当てた。
「うっ」
すると突如、身体が痺れて言う事を聞かなくなった。
白河、おまえ、スタンガン二個も持ってたのかよ・・・・・。
そのあと俺は気を失った。
「う、ううぅぅん」
「あっ、起きました?」
目が覚めると白河の顔があった。
「うおぅ!」
驚きのはずみで落ちた。
てか、前にもこんなことがあったような気がするんですが?
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。でここは何処だ?」
「私の家に向かう車の中ですよ?」
「は?」
なるほどな、通りでところどころ揺れていて天井が低いわけだ・・・・・
「って、なんで俺がおまえの家に行かないといけないの!?」
「はい?」
なんでおまえ、俺がおかしいみたいにしてるの?
「愛し合う二人が互いの家に行くなど決まっているではありませんか?」
「よし!おまえが行くのは自分の家じゃなくて病院だな!」
そして、いつも制服のポケットに入れているケータイに手を伸ばした・・・・・あれ?
「ああ、危険物はすべて預かってますよ」
「え!」
なんか今日はよく驚くな・・・・・。いや、いつもか。
「流星くんの私物はすべて私が預かっていますから家に帰らえるときにお返しします」
「はは・・・・・」
白河、おまえ絶対、一部を私物にするだろ!
しかし今はこの車から脱出することを一番に考えないと・・・・・
今の状況は・・・・・
一、黒くてやけに広い車の中に閉じ込められている。
二、今、ストーカー撃退グッズは没収されていて持っていない。
三、今、車の中にいる人物は、俺、白河、車を運転しているこれまた黒いスーツを着ている六十くらいのおじさん、この三人・・・・・
だめだ!全然使えるようなものがない!見たところ車の中にも使えそうなものはない。
唯一、この車から脱出する方法は・・・・・
「すまん白河、少し落ち着きたいから窓を開けてくれるか?」
「はい、いいですよ」
そう言うと白河が人差し指をクイッと立てた。すると車を運転しているおじいさんが窓を開けてくれた。
「・・・・・ふうぅーーーー」
一端、大きく息を吸う。そして・・・・・
「だれかーーーーー!助けてくださぁーーーーい!」
これが、俺の考えた唯一助かる方法だ!
なにもない空間で誰かに助かる方法はこれしかない!
あれ?誰も気にしているような素振りをしている人がいない。
「すみませーーーん!だれか助けてくださーーーーーい!」
おかしいと思いもう一度助けをもとめてみるが・・・・・だれも見ても聞いてもしてくれない。いや、人がいないわけではない。むしろ多い。さっきからスーツを着た若い会社員やイヌを連れたおばさんとか遊んでいる小学生くらいの子供たちが遊んでいたりしているのに・・・・・ちなみに今いる場所は多くのビルや会社がある都会っぽい雰囲気の場所である
「あれ?」
「ああ、言い忘れてましたけど外の人には私たちの会話は聞こえませんよ?」
「え!」
今日、何度目分からない驚きの声だがそれよりも白河の言葉が気になった。
「ど、どういうことだ?」
「窓が二重になっていますし・・・・・」
「な!」
白河の言葉が終わる前に窓を触ってみた・・・・・あっ、ホントにあった。ほとんど透明で全然気付かなかった。
「それに窓は全て防音になっていて二枚目の窓はマジックミラーで外からは車内は見えません」
「マジか・・・・・」
今度は「え!」と言うことすらも忘れて驚いた。
それにこんなにクリアなのにいろいろと加工されてるのにもビックリしたし・・・・・
「それで、流星くん?」
「はい、なんでしょうか白河さん?」
すごい嫌な空気でとても白河が怖く見えるので無意識に敬語になってしまった。
「私の家に着くまで大人しくしててくださいね?」
「・・・・・はい」
それから白河の家に着くまでの数分のあいだ本当に大人しくして車の中で正座までした・・・・・
おそらくこの車の中での出来事は一生忘れることはないだろう・・・・・
てか、忘れられないし・・・・・
車で一時間ちょっとで白河の(おそらく)家に到着した。
到着したのだが・・・・・。
洋式と和式を組み合わしたような家だった。家の大きさは俺の家の三倍くらいあって庭があるし・・・・・さらに、その庭には池らしきものまでもある。
一言で言ったら、豪邸だ。
白河は慣れているようで(自分の家だからあたりまえなのだが)進んでいく。
そして、家の扉を開いた。
「おかえりなさいませ、お嬢様。いらしゃいませ、お客様」
出迎えてくれたのは白と黒色でスカートで短い服を着たメイドさんと全身、黒のスーツに胸ポケットからナフキンを入れていて白の手袋をした執事だった。
へぇー、本当に執事とかメイドさんっているんだ・・・・・
「さあ、どうぞ入ってください」
いや、白河、入ってくださいって言われても入りづらいんだけど・・・・・
「ああ、ど、どうも・・・・・」
一応、執事さんとメイドさんに挨拶して白河の家あらため豪邸に入っていった。
「それでは、改めて、流星くん、私の家のようこそ」
と白河は満面の笑みで歓迎してくれた。
「ああ、お邪魔します」
なんか改めて言われると少し恥ずかしいな。
「それでは、私の部屋にご案内しますね?」
「え?」
「はい?」
いや、疑問を疑問で返すなよ。
「なんでおまえの部屋なんだ?」
「その方が話しやすいかな?と思いまして」
「リビングとかじゃだめなのか?」
本当は小鳥以外で女子の部屋に入ったことがないから少し抵抗がある。だからできればほかの場所にしてほしいからなんだけど・・・・・
「ダメです!」
正面から否定されてしまった・・・・・。
なんでそんなに強く否定するんだろうか・・・・・。
「な、なんで?」
あまりにも強く言われたから少し怯んでしまった・・・・・。
「そ、それは・・・・・」
「それは?」
今度は白河が怯みだした。
だからおまえは情緒不安定か!
「と、とにかくダメです!」
そして、白河は無理やり俺の手を握った。
「おい!手を引っ張るな!」
そう言ったのだが白河は聞く耳もたなかった。
その後、三階に白河の部屋があるらしいので少し時間がかかった。
白河の家は四階建ての家って結構少ないと思うんですが・・・・・
「階段だと時間がかかりますからエレベーターを使いましょう?」
「は?エレベーターあるの?」
「はい、ありますよ」
こいつ、どんだけ金持ちなんだ?
「こちらです」
白河は階段の隣にある銀色の扉のエレベーターをさした。
「ああ」
まず、俺が白河よりも先にエレベーターに入った。
そして、そのあとすぐに白河が入ってくる。
お?やっと手を離してくれたな。
そして白河のあとに一緒に付いていてくれた執事さん一人とメイドさん二人が乗ってきて・・・・・あれ?乗ってこない?
「「「それでは、行ってらっしゃいませお嬢様」」」
と執事とメイド、合計三名がピッタリと息をそろえて言った。
え?なにが?それに「行ってらっしゃい」ってここ白河の家 (豪邸)でしょ?何処に行くの?
「はい、行ってきます」
そして、白河はそう言うとエレベーターの扉を閉じた。
だから、白河の部屋に行くのに「行ってらっしゃい」はおかしいんじゃないか?
「白河?」
「はい?」
「なんで家の中で『行ってらっしゃい』なんだ?」
さすがに、ずっと聞かないのは気分が悪いので聞くことにした。
「ああ、それはですね・・・・・」
「おう?」
「実は、私の部屋って使用人は入れないんです」
「はあ!なんで?」
「父の要望でして・・・・・」
どんな父親だよ!
「それで、入れるのは私だけでして・・・・・」
へぇーー、だからああ言ったのか・・・・・ん?
「・・・・・俺って入れるの?」
「さ、さぁーー?」
「おい!」っと言ったのだが白河の部屋の階に着いた「チーン」っと言う音にかき消された。
「さ、さあ、そのこともかねて部屋に行きましょう!」
かねてもなにも真っ先に突き当たる壁だろうが!?
「白河?もし、無理やり入ったらどうなるんだ?」
白河は、少し言い難そうな仕草をした。
「言った方がいいですか?」
「そ、それはそうだろう?」
そう言うと白河は足を止めた。
「昔、一人の執事さんが私に夕食ができた事を伝えようとして私の部屋まで来た事があったらしいんですけど・・・・・」
ゴクッっといつの間にか口の中に溜まっていたツバを飲んだ。
む、無駄にホラーっぽい口調にするなよ、怪談の季節にはまだ早いぞ?
「そ、それで?」
聞くのに少し躊躇いがあったが結局、聞くことにした。
「・・・・・その執事さん私の部屋のドアノブ手をかけた瞬間に行方不明になったそうです」
「ひっ!」
思わず悲鳴が出た。なにこれ?コワッ!
「ま、まあ、『らしい』ってことはうわさ程度なんだろ?」
裏返りそうな声をなんとか元に戻した。
「・・・・・・・・・・」
そう聞いたのだが白河は沈黙したままだった。
そういうのやめて!すっごい不安になるから!
「わ、私が一緒にいればおそらくなにもないでしょう」
「はは、そうだよな・・・・・」
そうは言ったがやはりまだ恐れはあった・・・・・
そして、白河の部屋の前まできた。
これは余談なのだが歩いている途中で聞いたらこの階すべてが白河のものらしい。
こいつの金の量が計れ知れない・・・・・ しかし、そんなことより今は命を危険にさらしていることの方が重要なのだが・・・・・
「ホ、ホントに大丈夫なんだよな?」
道中、白河に何度も聞いてきた質問をまた聞く。
「はい、おそらく・・・・・」
白河も何度も言った答えを返してくる。
そして、白河はドアを背にして俺の方を向いてきた。
「それでは、手順をおさらいしましょう」
「ああ」
これまた、道中で話していた『俺が生きて白河の部屋に入る』作戦をおさらいを始め。
といってもいたってシンプルな作戦 (作戦と呼べるのかも分からないが・・・・・) なのだが・・・・・
「まず、私がドアを開けますからそのあとに流星くんが入ってきてください」
何度も言う必要がまったくないし作戦というほどの作戦じゃないだろ?
「ああ」
そして、白河は作戦(?)を伝え終えるとドアに向き直った。
まさか、こんな作戦とも言えないような作戦に命をかける日がくるとは・・・・・
「それでは、行きます」
「お、おう!」
そして、白河は自分の部屋のドアを勢いよく開けた。
今はまだ何も起きていない。
「流星くん!早く!」
そんなに、急がなくても大丈夫だろ?
「分かってる!」
俺とドアまでの距離は一メートル以下しかないので一歩踏み出せばすぐに入れる。
「よっ!」
そして、一歩踏み出した。
「ん?」
あれ?踏み出した先が妙にスカスカしてるような?
「うお!」
床がない!踏み出した場所が落とし穴みたいになっている!
てか、深い!奈落の底という言葉が超似合うほど超深い!というか底が見えない。
やばい!バランスがとれない!
「流星くん!」
白河が叫んでだがそのせいで余計にバランスがとれにくくなった。
ああ、そろそろやばい!
だけど、白河が手を取ってくれた。
「ありがと・・・・・」
「いえいえ、流星くんが小鳥ちゃんと仲直りしてくれれば私は・・・・・」
『かまいません』と言いたかったのだろうがしかし、白河の額から出る脂汗から見て余裕はまったくないようだ。
「うおぉぉーーー!」
白河の力も借りてなんとか、力を振り絞って上がった。
「はぁ、はぁ、し、死ぬかと思った」
「はい、私もです」
ここまでしてまで話すこと事ってなんだろうか?
「それでは、入って下さい」
「ああ」
入ってみると白河の部屋は、予想している以上に綺麗だった。
部屋はカーペットからカーテンまで全てが白く棚などは水色やレモン色などが多い。
一応言うが、俺の写真は意外にも、無かった。
てっきり、壁一面、俺の写真が大量にあるのかと思ったけど・・・・・
過去に、小鳥は一時期そんなことをしていたし。もちろん、すぐにやめさせたが・・・・。
「とりあえず、ベットにでも座ってください」
「ああ」
さっきの落とし穴で結構体力を使ったので少し休みたかったから有難い。
「それで?おまえは、俺をなんで連れてきた?」
いまだ聞いていない誘拐の理由を聞いた。
「小鳥ちゃんとの復縁方法についてです」
まあ、予想はついていたのだが・・・・・
「それは、ここじゃなくてもよくないか?」
「それは・・・・・」
「気付いてたんかい!だったら途中でやめろよ!」
「それは~ほら~その~」
完全に考えてるな、これ。
「すみません!」
白河は、土下座をした。
ただ、白河がお嬢様だと知ってから土下座をされるとこっちが悪く感じる。
うう、胸が痛い。
「いや、俺と小鳥のことを思ってくれたんだろ?だったら許してやるから顔を上げてくれ!お願いだから!」
「・・・・・はい・・・・・」
白河は言うとおりに顔を上げてくれた。
「で?どうすれば小鳥ともとどうりになれる?」
こうなったのは、白河のせいなのだがそのことについてはもう話終わっているので言わない。
「とりあえず元通りには戻れないと思います」
「やっぱりか・・・・・」
できれば、元通りに戻りたかったのだが元々予想はついていた。が、こう、面と向かって言われると結構キツイけどな・・・・・
「ですが、もっと仲良くなれるかもしれませんよ?」
さすがにそれはないだろ?と思いながらなんとか苦笑いを堪えた。
「はは・・・・・、だけどまず、小鳥と話す機会を作らないと・・・・・」
そう、まず小鳥と話す機会がない。なにせ、あの発言のあと小鳥は近づかないし、俺が近づくこうとするともうダッシュで逃げていくほど近づくことができない。
これが、俺と小鳥がいまだ仲直りできない一番の理由だ。
「そのこともちゃんと考えてますよ」
おお、意外と白河って役に立ったな。
「それで?その方法は?」
「誘拐です」
前言撤回!てかまたかよ!
「あ、なんですか?その犯罪者を見るような目は?」
「『犯罪者を見るような』じゃなくて『犯罪者を見てる』んだよ!」
「失礼ですね!私のどこが犯罪者なんですか!」
自覚ないのか!毎度毎度!
「はあぁーーー、まず、俺を誘拐、ストーキング、小鳥を誘拐するという発言、これだけで犯罪者の証拠になるんじゃないか?」
「うぅ、そこまで言わなくても・・・・・」
あ、結構効いたかな?
「それより、なぜ『誘拐』なのかを言ってもらおう」
「はい・・・・・」
まだ落ち込んでる!メンタル弱!