違う!
あの日以来、俺は小鳥と話していないし近寄ってこない。
というか、俺が話しかけても避けているような行動をしている。
そんな日々が一週間続いた。もう目も合わさせてくれないくらいになってしまった。
こうなったのも全部白河のせいだ。
「今日こそあいつを取っちめてやる」
「あいつって誰のことですか?」
「そんなの白河に決まって・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
隣を向いてみたらいつの間にか白河がいて一緒に歩いていた。ついでに言えば少し顔が赤い。
「・・・・・あの、できればそういう事は夜になってから・・・・・」
自分で言ってて恥ずかしくなったのかますます顔が赤くなっていく。
ストーカーのくせになんでこういうことは恥ずかしがるんだ?ってそうじゃなくて!
「・・・・・お前なんか勘違いしてないか?」
「・・・・・え!」
さっきまで赤かった顔がみるみる引いていき今度は青くなっていく。
なに?こいつ情緒不安定か!
「あれ?そういうプレイなんじゃなんですか?」
青くなった顔が驚きに満ちている。
「全然!」
てか、俺、そんな特殊性癖もってないからな!
「私にそういうことを求めているんじゃないんですか?」
「まったく!」
そんなに、質問変わってなくないか?
「流星くんは私に・・・・・」
「これっぽっちも!」
これ以上無駄話をしたくない。それに、次の台詞が予想つくし。
「白河!」
「・・・・・はい」
お前いつまで落ち込んでんの!?
「昼、少しいいか?」
さっきまでの落ち込みがウソのような真面目な顔になってこちらを向いた。
「わかりました」
それから、なぜか一緒に学校にむかった。
はあ、また変な噂が広まってしまうな・・・・・
昼休みになるのがいつもよりも早く感じたそんなことあるはずないのに・・・・・
「それでは、いきましょう」
と授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いてすぐに白河が来た。
それはもちろん教室と言う意味なのだが白河はまったく気にしたようすもない。
「ああ」
白河が気にしてないのに俺が気にするのもなんなので気にしてない風を装った。
「・・・・・・・・・・」
さきほど言った通り教室なのでもちろん小鳥もいる。
小鳥がこちらを黙ってまばたきもせず見ている。すごく不気味なんだけど・・・・・
小鳥の視線が辛いので白河の背中を押して廊下に出て行った。
廊下に出てまず質問をした。
「おまえ、どこへ行くんだ?」
白河が向かっているのは学食とは逆方向の廊下だ。
「屋上です」
「屋上?」
たしかに、この方向には屋上くらいしかないけど。
「なんで?」
別に屋上がいやということではなく。なぜ、学食じゃないのかと言うを疑問に思って質問した。
「学食だと人も多いですし、小鳥ちゃんがいる可能性もありますから」
なるほど・・・・・。白河は白河なりに気を使ってくれているんだな・・・・・。
屋上には予想通り誰もいなかった。
「誰もいませんね・・・・・」
と教室ほどの広さの屋上を見て白河がつぶやいた。
「とりあえず座るか?」
レジャーシートは持ってきてないので―あたりまえだが―直接座ることになるが贅沢を言ってもしかたがない。
「それで、お話というのは小鳥ちゃんのことですよね?」
「・・・・・ああ」
どうやら最初から気が付いていたようだ。
まあ、その話をする原因なんだが・・・・・
「おまえ、どうしてくれるんだ?」
「どうしてくれる、とは?」
なに、この無駄な会話?
「普通、あそこであんな暴露をするか?」
「・・・・・そんな怒った言い方しなくても・・・・・」
俺は、無意識に言ったのだが少し力が入っていたようだ。
「だいたい、あんな分かりやすくアプローチしてる小鳥ちゃんの気持ちをわかっていなかった流星くんにも問題があるんじゃないんですか?」
「うっ」
たしかに考えてみれば恋愛感情がないのにストーカーなんかするのか?いや、しない!多分・・・・・
「そんな鈍感な流星くんのことも思って私はあんなところで暴露したんです!」
「暴露したって自覚はあるんだな」
「ええ、まあ」
そんなところだけしっかりしてんなよ・・・・・
「でもそのせいで俺と小鳥の今までの関係が崩れてるんだ!これはおまえのせいだろ?!」
もしかしたら、一部はあるかもしれないが大半は白河のせいだとおもいます!
なんか敬語なっちゃったけど!
「・・・・・たしかにそれは私のせいかもしれません」
お!はじめて認めた
。
「ですから、これからは私が小鳥ちゃんのかわりを・・・・・いえ、冗談です。ですからその手に持っている携帯とエアガンをしまってください」
俺は対ストーカー用隠しエアガンを白河に向けた。学校の先生にもばれないように常に持っている。
「次に、そういうことを言ったら命はないと思え!」
「は、はい!」
白河は、震えながら何回も頷いた。
もちろん、俺も半分、冗談なんだが・・・・・。
「だいたい、おまえに小鳥のかわりができるわけないし」
「・・・・・フッ、そんなに小鳥ちゃんを想っててなんでわからなかったんでしょうかね?」
「・・・・・ほんとは、わかってたんだ」
「えっ!?」
「普通わかるさ、あんなにべっとりとつきまとってて気が付かないほうがどうかしてるって」
「じゃあ、なんでそんなフリをしてたんですか!?」
白河は怒りや悲しみのこもった声で聴いてきた。
おそらく、最近なったといっても友達の気持ちをわかっててしらないフリをしてた俺に腹が立ったんだろう。
「怖かったんだ・・・・・」
「え!?」
さっきと同じ驚き方で白河は驚いた。
「もし小鳥の気持ちが本当でそれに俺が答えたら今までの関係が全部壊れるって思ってずっと小鳥の気持ちは『恋』じゃないって自分の気持ちにウソをついてたんだ」
まあ、そのせいで小鳥が傷ついたらもともこもないんだけどな。
「・・・・・もし」
白河は少し迷っているように一分ぐらい次の言葉が出てこなかった
。
「・・・・・もし、小鳥ちゃんが流星くんに告白していたら断るつもりだったんですか?」
「・・・・・そんなの・・・・・そんなのわかるかよ!」
実際、そんなことわからない。わかるわけがない。
俺は小鳥とは小学生のときから一緒だ。だから、一番仲のいい友達であり友達以上の関係だと思っている。
そのため、いままで続けていたその時間と関係を高校なんかで壊したくない。
それが、俺の本心であり、おそらく小鳥の本心でもあるのだと思う。
だからこそ白河のあの言葉を聞いてて動揺してたしあの後一度も会話をしていない理由なのだろう。
「俺は、壊したくない・・・・・今までの時間を、関係を壊したくないんだ・・・・」
そのあとすぐに頬のあたりが熱くなる感覚が襲ってきた。
「え?」
どうやら、白河が俺のことを殴ったみたいだ。
白河は少し目を腫らしてうっすらと涙が見えた。
「な、なにするんだよ!」
殴られたのに気付いてからどんどん痛みが強くなっていく気がする。
やべぇ、メチャクチャ痛い。
「流星くんは逃げてるだけじゃないんですか?」
白河はいままでの声とは違うとても低い声でつぶやくように言った。
しかし、いまはそれよりも白河の言った台詞の方が気になった。
「なに?」
「違うんですか?」
「違う!」
「なにが違うんですか?」
「違う!違う違う!違う違う違う違う違う違う違う違うんだああああああああああーーーーーー」
俺は、ただそれだけ、ただそれだけしか言えなかった。
認めたくなかった。
認めたら自分のなにかが変わってしまう。
そう思えてただただ『違う』としかいえなかった。
「いい加減認めてください!」
「いやだ!」
「認めてください!」
「いやだいやだいやだ!」
すると再び頬に鈍い痛みがきた。
「それでいいんですか?」
「は?」
白河はさっきと同じように低い声だった。
「流星くんは今まで通り逃げたままでいいんですか?」
「それは・・・・・」
いいわけない。
そのせいでいまみたいに戸惑って混乱して後悔している。
そんなの絶対にいいわけない!
「いいわけないだろ!」
そう言うと白河はその言葉を待っていたように微笑んだ。
「ですよね・・・・・」
そして、白河の言葉が言い終わると同時に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
「流星くん・・・・・」
「ん?」
白河は先ほどの微笑みとは打って変わって真面目な顔になっていた。
「たしかに流星くんと小鳥ちゃんが今みたいになってしまったのは私のせいです。ごめんなさい・・・・・」
「・・・・・それはもういい」
「え?」
俺の答えが意外だったのか少し驚いた。
「過去よりも今が大事だろ?それにおまえがあれを言ってくれなかったらもしかしてずっとあのままだったかもしれないからな・・・・・そういう意味ではおまえに感謝してるよ」
これは俺の本心だった実際あれがなかったらもしかして永遠に一番仲のいい友達のままだったろう。
ううっ、なんか真面目なこと言って逆に恥かしくなってきた。
顔がだんだん熱くなってきた・・・・・。
そのことが伝わったのか伝わってないのか―できれば後者であってほしい―白河はフッと笑っていた。
「そうですか・・・・・流星くん早く行かないと授業に遅れますよ?」
「あ?ああ」
白河は心なしかさっきよりも笑顔が輝いていた・・・・・ような気がした。
さてここからが本番だ。
小鳥と仲直りするにはどうすればいいんだか・・・・・