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俺の周りには友達よりもストーカーが多いのは気のせいでしょうか?


 俺が目を覚ましたら目の前に紙が落ちていた。


 「ん?」


 床に落ちた一枚の紙を拾った。しかし、これは紙じゃなくて・・・・・


 「写真じゃねえか!しかも俺の!」


 よく見ると全部が俺の写真だった。


 「なにこれ地獄!?俺死んだ?死んだのか!」


 あまりの衝撃に起き上がり周りを見渡す。

 全体的に白い部屋であるのは小さいテレビと俺の寝ていたベッド、窓と花が入ってある花瓶。まちがいなく病院だ。


 今頃になって起き上がったときの痛みが・・・・・

 痛み始めた肩を抑えているとコンコンと扉をノックする音が聞こえて落ちている写真をすべて拾ってとりあえず枕の裏に隠す。


 「どうぞ」


 反射的にそういうと扉はガラガラと開いた。


 「お目覚めかね?」


 開いた扉から現れたのは薄茶色のスーツを着た四十後半くらいの男の人だった。


 「はい。あなたは?」


 自分の記憶をいくらまさぐってもこんな人にあった記憶はなかった。病室を間違えてないかの確認も含めて聞いてみた。


 「まあ、知らなくてもあたりまえかね。うちの娘が世話になっている」

 「娘?」


 台詞から言うに誰かの父親なのか?だったら小鳥の親じゃないな。


 「ああ、優花の親だ」


 なるほどな。だったら知るわけないか。


 「そうだったんですか。白河の」


 できればもう少しきちんと会いたかったなぁ。病室のベッドの上でなんて・・・・・


 「今回は赤羽くんのおかげで娘が無事だった、礼を言わせてくれ」


 白河のお父さんは小さく腰を折った。

 この人、なんか優しい雰囲気の人だな。ここまで話してて警戒心や嫌悪感がない。


 「いいですよ。俺もああいうの大っ嫌いですから」


 初対面の人には砕けすぎたか?でも、そんなのは必要ない感じがするんだよな。


 「そうか、そういってくれるとありがたいな」

 「はい」

 「それで、君は・・・・・」


 白河の父さんは急に真剣な顔をした。


 「うちの娘とはどういう関係なんだ?」


 ですよねー。いつ、その質問が来るのかずっと気になってたんだよなー。


 「どういう関係と言われてもただのクラスメイトですよ」


 あらかじめ用意していた答えだった。


 「本当かね?」


 この人用心深いな・・・・・じゃないと社長なんかなれないのか?


 「本当です」


 ここで「ウソです」なんて言える勇気のある人、いたら教えてくれないかな。


 「そうかい。安心したよ」


 お父さんは心の底から安心したように目を細めた。


 「もし、君が娘に手を出していると言ったらどうしようかと思ったよ」


 ただ、表情はだけど。


 「どうする気だったんですか?」


 俺は震える声でお父さんに聞いた。


 「君が生まれたことを後悔するようなことをするつもりだったよ」


 怖!なにするつもりこの人!だいたい俺、手を出されてる側なんだけど!


 「絶対に手を出しません!」


 心の底からそう思った。


 「ほぅ、それは私の娘に魅力がないということかな?」


 なんかさっきより目つきが怖いんだけど!どう答えればいいんだ!


 「い、いえ、そういうことじゃ」


 返答に困っているとまた扉からコンコンとノックされた。


 「どうぞ!」


 助け欲しさに強めに言ったけどどうでもいいや!

 入ってきたのは花束を持った白河だった。


 「失礼します」


 お辞儀をして行儀よく病室に入ってくる。


 「おお、優花。久しぶりだな」


 両腕を広げてだんだんと白河(父)は近づいて行った。

 ん?久しぶり?ああ、白河の父さんって忙しくって滅多に家に帰ってこないんだっけ。


 「はい。久しぶりです。お父様」


 笑顔で白河は父親にむかって行った。


 「久しぶりに会って早々、用事は済んでしまった。すぐに仕事に行かなければならないのだ。すまない」


 白河の父は娘に頭を下げる。

 俺に礼を言うのが用事だったのか。


 「いいえ。お仕事がんばってください」


 病室から出て行く自分の父親を笑顔で見送っていた。


 「よかったです。目が覚めて」


 父親が離れて行ったのを見計らって白河のが言った。


 「大げさだな。そんなに長いこと寝てないだろ」

 「丸一日です」

 「え!?」


 自分じゃそんなに長く寝ていた感覚がないのでその言葉の衝撃は半端ではなかった。


 「今日って何曜日だ?」


 俺は日時を確認しようとテレビの下にある自分のケータイを取ろうとした。


 「火曜日の午後三時です」


 しかし、確認しようとした瞬間、白河から答えは帰ってきて手を止めた。

 でも、なんで学校があるのに白河がここにいるんだ?


 「学校はどうした?」

 「今日は来月の全校学力向上合宿のミーティングだけだったので」


 ああ、なるほどテストが終わったらだっけなぁ。

 それから俺たちはあの遊園地の出来事、俺が気絶後のことを聞かせてもらった。


 まず、あの男は銀行強盗だったらしい。午前十時ぐらいに近くの銀行を襲撃。もともと三人組だったが全員ばらばらに行動して警察をかく乱させたかったらしい。

 しかし失敗。一人だけになった男はたまたまたどり着いた俺たちのいる遊園地で人質を取って警察にヘリなんかをよんで逃走をしたかったらしい。

で俺がそれを撃退。俺と男は気絶してエンドってことらしい。

 

 「なるほど、俺がお化け屋敷で聞いた音は銀行のサイレンだったのか」


 しかし、よく数時間も逃げてられたな。もっとそれを別のことに使えばよかったのに。


 「はい。そのことで感謝したいので警察署に来てくださいと刑事さんから」

 「あいよ」


 でも、何もしてないのに警察署に行くって変な感じだな。


 「それにしてもすごかったですね流星くんの体当たり」

 「やめろ。今になって恥ずかしくなる」


 自分でもよくあんな力がでたと思ったよ。怒りに身を任せててあんまり覚えてないけどさ。


 「まるでヒーローみたいでした」


 うっとりとした顔でこっちを見ないでくれないか?


 「そいつはどうも」


 そのことを心の奥にしまって窓のほうに向いた。


 「でも、一つ心残りがあります」

 「なにがだ?」


 俺はたくさんあるけどな心残り。なんだよ最後の最後で強盗と一緒に気絶って!悲惨すぎるだろ!


 「遊園地で約束したのに私の名前を呼んでもらってないことです」

 「ああ、そんなのあったな」


 たしか、まだ遊園地に入って間もないくらい小鳥が言ってたっけ。


 「だから私の言う事を一つ聞いてくださいね」

 「は?」


 何言ってるのこの人。


 「そんなの聞いてないぞ」

 「はい。小鳥ちゃんと勝手に決めましたからそうでしょうね」

 「そういうの俺に言え!」


 そんな条件があったらすぐに呼んでやったよ!


 「でも、約束破りました」

 「うっ」


 それを言われたら何も言い返せない。


 「それじゃあ私の願いは」

 「身体を使ったことは絶対にやらねえぞ」


 いかにもこいつが言いそうなことだ。だから先に塞いでおく。


 「今、私を友達にしてください」

 「はい?」


 予想外のことで反応が遅れた。


 「今、私を友達にしてください」


 聞こえてないと思ったのか白河はもう一度言った。


 「今、私を彼女にしてください」

 「願い変わってるじゃねえか!」


 どさくさに紛れてなにねつ造してんだ!


 「聞こえてるじゃないですか」

 「うるせえ・・・・・」


 白河が俺の顔をニコニコしながら覗き込んだ。


 「大体、もう普通のクラスメイトとはいえる言える関係か?」


 俺は白河に悩みを解決してもらった。白河は俺に助けられた。ギブアンドテイクだ。


 「それって」


 白河はオーバーに口を手で覆っていた。

 「ああ、もう」

 「彼氏彼女の関係ですか!?」

 「んなわけあるか!」

 

 ここでボケる度胸すげえよ!そして俺も病院でどんだけ大声出してるんだ!


 「冗談です」


 白河はまたニコニコと笑った。


 「からかうな」

 「はい」


 そう言いながらもまだ笑っていた。 


 「もう友達じゃねえか?」


 話の流れはおかしいけど伝わっただろうか?


 「そうですよね。じゃあ、友達なんですから下の名前で呼んでください」

「目的はそれか!」


 だよな。なんの下心もなしにそんなこと言うわけないよな。


 「そんなことないですけど?」

 「たく・・・・・」


 もう俺は呆れていた。


 「・・・・・わかったよ。優花」


 不意打ち気味に言った。これで、少しは動揺しただろう。


 「・・・・・はい」


 落ち着いてかみしめながら小さく白河は言った。

 バンッ!っとノックもなしに扉が開いた。


 「リュウくうぅぅぅううん!」


 で立っていたのは泣いていてさらになぜかナース服の小鳥。

 異様な光景だな。

 そんなことを思っているとダッシュで俺のいるベッドに突っ込んできた。


 「ごはっ!」


 そして俺はそれをもろにくらった。


 「リュウくん!大丈夫?痛い所はない?」


 心配そうに小鳥は俺の顔をのぞぎこむ。


 「大丈夫じゃねえ!」

 「え!?どこか痛いの?」

 「痛いわ!どこの世界に病人の身体にタックルしてくる奴がいるんだ!」


 ううっ、まだ痛い。とくに直撃した腹が・・・・・


 「よかった。元気そう」


 今、俺の元気はおまえに奪われたんだけどな。でも、小鳥が本気で心配してくれてたのはわかったけど。


 「おかげさまでな」


 安心した顔でベッドの縁に顔を埋めている小鳥に向かって言った。


 「一応、尿瓶だけ持ってきたんだけどな」

 「なんでそれだけだ!どうせなら薬とか持って来い!」


 大体、出ねえよ!女子のいる前で!それが顔見知りでさっき友達になった奴と幼馴染みだったらなおさらだ!


 「ああ、薬だったら塗り薬と座薬だったらあるよ」

 「結局全部脱ぐんじゃねえか!」


 ろくなことしねえな!そして残念そうな顔をするな!


 「こうなったら無理やりにでも!」

 「OKです!」

 「OKじゃない!」


 そういって見たものの二人はいとも返さずに飛びかかってきた。


 「ぶっ!」


 さすがに女子二人が乗ると重い。さらにさっきぶつかったところだし。


 「さあ、これからが本番だよ」


 俺の腹に馬乗りになりながら悪魔のような笑みをした。

 なにが本番だこんな状況他人に見られたら絶対に誤解される!


 「赤羽さーん。お薬の時間です」


 聞こえてきたのは女の人の声だった。おそらく看護師だろうけど。

 来ちゃったよ!ウソだろ!


 「はーい。ちょっと待ってください!」

 「あ!お目覚めになったんですね」

 「はい。さっき」


 今、こんな話してる場合じゃない!


 「そうですか。おはようございます」

 「おはようございます」


 だからそれどころじゃないんだって!

 そんな会話を小鳥と優花はむっとした表情で見ていた。

 いや、そんな顔するんだったら今すぐにどいてくれないか?


 「痛てててて!」


 小鳥と優花は同時に俺の頬を引っ張ってきた。


 「なにしやがる!」


 頬を引っ張られたままだったので「な」が「ふぁ」になった。


 「どうしたんですか!?」


 看護師さんはおそらく俺の容体が悪化したと思ったのだろうダンッ!と扉を開いた。


 あ、目があった。


 看護師さんは俺、俺の腹上にいる小鳥、優花の順に見ていく。


 「・・・・・ごゆっくり」


 入ってくるとは逆におっとりとした動作で出て行った。


 「何を!そして出て行かないで!」


 しばらくして再び扉が開いた。


 「やっぱりダメ!病院で何やってるのよぉ!」

 「戻ってくるんだったらなんで一回出ていったんですか!」


 で結局、説明することになった。

 

 「以上で診察を終わります」

 「ありがとうございました」


 説明で結構体力使ったぞ・・・・・


 「これで私は戻りますけど決していかがわしいことはしないでくださいね」

 「しませんしさっき説明しましたよね?」


 まだ納得してない表情のまま看護師さんは出て行った。


 「はぁ~、目覚めてすぐこれは正直きついぞ?」

 「でも、満更でもない顔でしたね」

 「そうか?」


 たしかに、薄々それは分かっていたけどな。だってこれで帰って来たみたいな感じがするんだよな。もしかしたら慣れちゃったのかもな。


 「そうか・・・・・これが効果的なんだ」


 小鳥がなんか勘違いしてるっぽいけど別にいいか。


 「でも、明後日から学校いけるようになってよかったですね」

 「ああ」


 さっきの看護師さんも驚いたけど回復が一般の人より早いらしい。さらに、特に異常は見当たらないということで明後日から学校に行っていいと言われた。明日は最終検査のあと自宅に帰る。

 まさか精神が鍛えられたせいでそれが肉体に!・・・・・ないな。


 「でも、結構ニュースとかになってるよ?大丈夫?」

 「なにが?」

 「学校で今、有名人になってるし他の女の子にうつつを抜かしたりしないでね」

 「するか。そんなことしたらおまえらがなんかするだろ?」

 「それはそうだけど」


 マジか!俺、冗談だったんだけど。


 「それに、まあ、その時はその時だ」

 「そうだね」


 こんな話をしていると優花が「そろそろ時間ですね」と言ったので時計を見た。


 「ああ、こんなか」

 午後四時五十分。 

 もう病院が閉まる時間だ。看護師さんへの説明が予想以上に時間を食ったらしい。


 「私達そろそろ帰りますね」

 「うん。明後日学校でね」

 「おう。明後日な」


 そういって小鳥と優花は帰って行った。


 「また、騒がしくなりそうだな」


 現在、友達一人、幼馴染み一人、ストーカー二人か・・・・・


 「俺の周りは友達よりもストーカーが多いのは気のせいでしょうか?」


 誰もいない病室で俺の独り言だけが木霊した。



一応、次回が最終回となります。

でも、お気に入り登録が10人以上になったら続編を投稿いたします

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