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元気出していこおぉー


 電車での移動一時間半。

 やっと着いた。


 「あ~あ、疲れた」


 二人の攻撃を回避しながらの移動で遊ぶ前から疲れてしまった。


 「はい。疲れましたね」


 白河は手で自分をあおりながら近づいてきた。


 「俺はおまえらの二倍疲れたけどな」


 車内での熱とこいつらによる精神的攻撃。

 正直、かなりキツかった。


 「でもこれから本番だよ元気出していこおぉー」


 小鳥があれほどの温度でも疲れた様子はなく元気に右手を振り上げた。


 「お、おー」


 白河は何に圧倒されたのか控えめに小鳥と同じことをし出した。

 俺はそんな恥ずかしいことさらさらする気はない。


 「ほら、さっさと行くぞ」


 俺は一人だけ歩き出した。


 「あ、待ってください」

 「もう、のりが悪いんだから」


 文句を言いながらもすぐに俺の隣にくる。

 

 遊園地は駅からさほど遠くはない。せいぜい徒歩で十数分くらいだ。

 そのテーマパークの名前は・・・・・


 「絶叫アイランド」


 ネーミングはあれだがその名前どおりアトラクションのほとんどがジェットコースターやお化け屋敷なんかのアトラクションでできている。


 「ここに来るの何年ぶりだろうな」

 「さあ、私たちが小三、四くらいのころだったから」


 数年前、ここに小鳥達と一回だけ遊びに来た。あのときは絶叫マシンは大丈夫だったけどお化け屋敷なんかには入らなかったけなぁおもに小鳥が。


 「今回はお化け屋敷は大丈夫だよな?」

 「だ、大丈夫!だと・・・・・思う」


 全然大丈夫じゃねえじゃんか。


 「優花ちゃんは怖くない?」


 少しでも恐怖心を和らげたいのか白河に矛先を変えた。


 「ん~、こういうところに来るのははじめてなのですけどそんなに怖いのですか?」


 さすがお嬢様。知らなくて当然だな。


 「うん。私は機械だったら平気なんだけどどうしてもお化け屋敷だけは・・・・・」


 小鳥は何を思いだしたのか肩を震わせている。


 「でも、なんか楽しそうですよ?」


 小鳥と一緒に絶叫アイランドに耳を澄ませる。


 聞こえてくる客の声は「きゃああああぁぁぁぁ」など「止めてぇぇぇええぇ」「もう帰るうぅぅぅ」など。


 どこが!?


 「行きましょうか」

 「ああ」


 ここまで来たら行くしかないよな。

 3人にで一緒に出入り口のゲートに向かっていく。


 「へぇー、結構広いんですね」

 「まあ、一応テーマパークだし」


 この遊園地と同じぐらいの家持ってるだろうに。


 「まずは軽めのやつから乗っていくか」

 「はい!」


 元気いっぱいの声で白河は返事をした。


 「ねぇ、ただ回るのもなんかつまんなくない?」


 小鳥が不意打ち気味に言う。


 「なにがだ?」

 「だってただ回ってるのもいいけどそれだけじゃない?」

 「まぁ、そうかもな」


 たしかにただ適当なアトラクションに乗るのもいいがなんもひねりがないな。


 「じゃあ、どうするんだ?」


 どっちにしろなんにも案がないんだったらしょうがない。普通に回るしかできない。


 「たとえば今日中に、さらにこの遊園地の中で」


 俺と白河はそろって小鳥の言葉に耳を傾ける。


 「一回だけリュウくんが優花ちゃんを下の名前で呼ぶとか」

 「・・・・・は?」


 ここで結構前のことを蒸し返すなよ。


 「それはもう終わったことだろ?いまさらそんなことしなくても」

 「いいですね!!」 


 俺の台詞を遮って白河が言う。


 「は!?なんでいまさら!」


 白河は一瞬なにかを考える素振りした。


 「ほら、いい加減私達もただのクラスメイトじゃなくて友達と呼べるくらい仲良くなったんじゃないですか!だからここらへんで一回私の名前を呼んでもらってより親密になりたなぁと思っただけですよ!」


 たしかに俺と白河はもうただのクラスメイトと呼ぶには距離が近いかもな。白河には俺も小鳥も助けてもらったしお互いの家にまで行ったんだし。


俺の家に来たのは三回だがのち二回は不法侵入。


 「そして、さらに親密になってよくよくは私だけのものに・・・・・」

 「それが最終目標か!」


 白河の心の声を聞いたものの白河の理屈には一理あるしなぁ。


 「まあ、それくらいだったらいいか・・・・・」


 小さい声で了承した。


 「オッケー。これで伏線もできたことだし楽しもうか!」

 「伏線って言うな!ったく」

 「ふふふ」


 俺たちはとりあえず入り口から近い乗り物から乗っていくことにした。


 最初のアトラクション『レーザーフォール』このアトラクションはジェットコースターほど動かないが高さ六十メートルを上下にすごい速さで動く乗り物だ。


 「たしか最高時速九十キロらしいぞ」

 「へぇー、結構速いですね」

 「これ、前は身長が足りなくて乗れなかったんだよね」


 こんな会話をしながら順番を待つ。

 午前ということもあってか割と早く乗ることができた。


 「こちらに順番でお乗りください」


 男性の係員に言われて右から順に小鳥、俺、白河、そして大学生ほどのカップルという並びで乗った。

 そして席に座ってすぐ安全レバーが降りてくる。


 「それでは出発します」


 先ほどの男性係員が言った。

 それを聞いた小鳥、白河はとても表情がわくわくしていた。


 「白河、そんなに楽しいものじゃないぃぃぃぃいいぃぃ」


 言ってる間に起動するか!?普通!まあ、「出発します」っていってるのにしゃべってる俺が悪いんだけどさ!

 てか速い!上るのでもこんなに速いのに落ちるときはどんななんだ。

 たった数秒でタワーのてっぺんにたどり着く。


 ははは・・・・・結構高いな。でもいい景色だな。


 ここでも小鳥は笑顔、白河は興味がありそうな顔で景色を見渡す。

 二人の顔を見てすぐに高速で落下した。


 「おおおぉぉぉおおおお」


 周りに座るお客さんと同じく俺は声を出した。


 「「きゃあぁぁぁああああ」」


 小鳥、白河はとても楽しそうな声音で叫んでたけど。

 

 「な、長かったな」


 三分間、ずっと上下に動いていた。

 うぅっ、気持ち悪い・・・・・


 「うん。でも楽しかったよ」

 「はい。楽しかったです」


 小鳥と白河は満足そうな顔だった。


「ははは・・・・・そうですか」                     

 俺はカラ笑いで返した。

 

 「次、何行く?」

 

 小鳥はスキップで先頭を歩く。


 「てっとり早くあれでいいだろ?」


 俺は適当に目の前のアトラクションを指さした。   


 「え?あれって・・・・・」

 「なんですか?」


 二人は同時に指差したほうを見る。


 「お化け屋敷」


 俺が指差したアトラクションは廃ビルを模様した薄暗いお化け屋敷のアトラクションだった。


 「ああ、あれをお化け屋敷っていうんですか」


 白河は興味津々に近づいて行く。

 小鳥といえば・・・・・


 「お、おば・・・お化け・・・おば」


 とさっきまでの元気が薄れて小刻みに震えている。


 「そんなに!」


 思わず俺は声を上げた。


 「やめるか?」


 こんなに震えてる小鳥を見ていたら可哀そうになってきた。


 「だ、だだ大丈夫」


 どこが!?心なしかさっきよりも震えてるんですけど!


 「もう、何年も経ってるんだからそろそろ克服しないとだし」

 「そ、そうか・・・・・」


 小鳥の意見と白河の主張で次はお化け屋敷に決定した。


 「ん?」


 入り口に向かう時に一瞬、サイレンのような音が遠くで聞こえた気がした。


 「ど、どどどうしたの?リュウくん」

 「あ?ああ、なんでもない」


 小鳥達には何も聞こえていたような様子はなかった。

 気のせいか?

 そう思ったもののまだ心はモヤモヤしていた。


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