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はい。自重します


 約束の日。

 待ち合わせは俺の家の最寄りの駅となった。

 俺からしたらそれほど時間もかかんないしちょうどいい距離なんだけど。


 「早すぎたか?」


 集合の時間、十時より三十分早く着いた。


 「まあ、待たされるより待つ方が俺の性に合ってるけど」


 駅の中心にある大きな時計の下にあるベンチで待つことにした。

 今日の俺の服は黒のパンツに白で無地のTシャツの上に明るいブルーのトップスといった誰にでも合うような服装だ。


 「はやいね。リュウくん」


 声をかけられたほうをみるとチェック柄のシャツにデニムのミニスカートといったボーイッシュな服装をした小鳥だった。


 「もしかして、結構乗り気?」

 「んなわけあるか。今月の生活費が少しばかり減るんだから楽しまなかったら損だと思っただけだ」

 「そっか」


 これであとは白河だけか。


 「ねぇねぇリュウくん?」

 「ん?」


 小鳥は急に横一回転をして腰に手を当ててポーズを決めた。


 「どう?」


 どう?とは服のことだよな。


 「あ?ああ、言っただろ、おまえは何を着ても似合いそうだって」


 おそらく俺が「活発系な服がいいんじゃないか」って言ったからこれで来たんだろう。

 俺が言っといてなんだけど似合っていた。


 「ふふ、ありがと」

 「どういたしまして」


 こんな会話をしながら時間をつぶしていると。俺や小鳥を白河の家に連れて行ったのと同じ黒いリムジンが止まった。


 「遅れてすみません」


 そういって現れたのは白のワンピースにピンク色の丈の長いスカート姿の白河だった。


 「いや、それほど待ってない」

 「うん。わりと早かったほうだよ」

 「そういってくれるとありがたいです」


 白河はニッコリと笑って見せた。

 時間的には全員、集合時間より早い。

 一番遅い白河でも十分前に着いたくらいだ。


 「ちょっとばかり早いけど行くが?」

 「はい」

 「うん」


 全員が賛成ということでこれから電車で遊園地に行く。

 俺、小鳥、白河の順で切符を買っていく。

 俺と小鳥は問題なかったんだけど・・・・・


 「し、白河?」

 「は、はいなななんですか?」


 なんですか?じゃねえだろ切符売り場の前で硬直してるおまえはなんなんだよ。


 「もしかして、買い方わかんねえのか?」

 「・・・・・はい」


 やっぱりな、世間知らずのお嬢様なんだからありえないことじゃないよな。


 「この画面で行きたい場所をタッチしてその分のお金を入れるんだ」

 「そうなんですか。ありがとうございます」


 言われた通り白河は行動をした。

 動きはかなり機械的だったんだけどな。

 全員が切符をなんとか買って改札口に向かう。

 これも俺と小鳥は大丈夫だったんだけど・・・・・・

ビーッビーッビーッっと防犯音が鳴り響いた。


 「白河・・・・・」

 「優花ちゃん・・・・・」


 俺と小鳥は同時に白河を向く。

 そこには改札口の防犯バーに止められた涙目の白河が立っていた。


 「白河、おまえもう少し社会勉強が必要らしいな」


 防犯音の鳴り響く中、白河に言った。


 「はい。自重します・・・・・」


 静かに小さなわりにはよく聞こえる声だった。

 それが聞こえたころには小鳥が改札のくぐり方を説明しにいってた。


 「ここに切符を入れれば通れるから」

 「はい。ご迷惑かけます」


 小鳥の説明でようやく通れた白河。このまま無事に着くだろうか。

 

 白河は電車に乗ることは慣れているらしくこれは大丈夫だった。(切符を買うのは使用人がやってくれてたからわからなかったらしい)


 「あ~あ、しんど」

 「結構混んでるね」


 電車の中はほぼ満員だった。日曜日だからかみんな考えることは一緒なんだな。


 「どっか空いてるところないか?」


 他の車両を見てみるがあんまり変わらなかった。

 適当に入った車両に二人もついてくる。

 中に入ると外から見るより混雑していた。


 「うっわ熱ッ」

 「本当ですね」

 「とりあえず、出口のほうに行け」


 二人を目的側のドアに促す。


 「うん。ありがと」

 「ありがとうございます」


 二人をドアのほうで並ばせて俺が覆いかぶさるような形になる。

 まあ、一応女子だしこういう時って痴漢とかあるみたいだし。

 そのせいで俺はかなりひどい態勢なってるけど。

 ドアが閉まって動きだした。


 「痛ッ!」


 こんなに混雑してるのでしょうがないちゃしょがないけど・・・・・足、踏まれた。


 「だ、大丈夫?」

 「ああ、なんとかな」


 今も足は痺れてるけど我慢できる程度だ。

 すると電車がガタッと揺れた。


 「きゃ!」


 白河が急な揺れに反応が遅れてバランスを崩した。


 「おっと」


 ギリギリのところで俺は白河を支える。 


 「平気か?」

 「はい。ありがとうございます」


 振り向いた白河との顔の距離は鼻が付きそうなくらいだった。


 「ごめんなさい」


 白河はすぐに顔を離す。


 「ああ」


 なんでこんな時にだけ女子っぽさが出てくるんだ?

 そんな俺達を小鳥がジットリとしたまなざしで見ていた。


 「どうした?小鳥?」

 「なんでもない!」


 なんでもないんだったらなんで頬をふくらませるんだ?

 ガタッとまた電車が揺れた。

 白河は今回は耐えたが小鳥がバランスを崩した。


 「おっと」


 そして俺は白河と同じように支える。


 「ありがと」


 これも同じく鼻が付きそうな距離になる。

 それを小鳥は離れようとせずにだんだんと顔を近づけてきた。


 「きゃ!」


 俺は無意識に支えていた手を離した。


 「なにするの!?」

 「おまえが何してんだ。俺は身の危険を感じたから回避しただけだ」


 そう聞いた小鳥は「むぅ」とだけ唸って元に戻った。


 「なるほど、そういう手口もあったんですか」


 約一名、感心してる人がいたけど気にしない。

 それから何度も二人によるアクシデントのフリをして俺を誘惑するのが続いた。


 もちろん全部回避した。

 


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