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10/19

これからも災難なんだろうな・・・・・

 

 結局、小鳥と白河に押し切られまた俺の家に行くことになった。

 今は白河が俺の家まで車で送ってもらっている道中だ。


 「最近、俺の周りがすごいことになってる気がする」

 「ん?なにか言った?リュウくん」


 すっかり元気を取り戻した小鳥が聞いてきた。


 「おまえらがすごいって言った」


 一部は伏せてたがウソはついていない。


 「え?え!?」


 小鳥が顔を赤くして動揺し始めた。

 どうやら、「すごい」の意味を勘違いしたらしい。


 「あ、ありがとう・・・・・」


 小鳥が顔を赤くしたままお礼を言ってきた。

 まあ、勘違いしたままでもいいか、そのほうが面倒なことは避けられそうだし。


 「ねぇねぇ、何処が?」


 はぁ~、どうして話の矢先が俺になるんだか。今までずっと話してた白河はほったらかしだけどいいのか?

 白河の方を見てみると白河はニッコリと笑っていた。

 こいつ楽しんでやがる。


 「あ~、え~っと・・・・・」


 なんか、こっちの方が面倒なことになりそうだな。

 小鳥、そんなキラキラした目はやめてくれ・・・・・俺は、なんであんなこと言ったんだろうか・・・・・


 「し、信念を曲げないところ、とか・・・・・?」


 今言ったことはウソじゃない、何年も俺のストーカーをし続けてきたことはストーカーのことを別のことに置き換えたらすごいことだ。

 問題がそのことかマイナスに出てしまったことなんだけど。


 「それは、私もですか?」


 白河が横やりを入れてきた。


 「ま、まぁ一応・・・・・白河も入ってはいるかな・・・・・?」

 「それはどうも・・・・・」


 白河は満足したように笑った。


 「そういえば、リュウくんってなんで優花ちゃんを名字で呼ぶの?」

 「え?」


 急に話を変えられたから少し驚いた。それだけじゃなく少し間抜けな声が出たし・・・・・


 「ああ、そういえば」


 白河が今気づいたように驚いた。


 「なんでなんで?」


 どうやら小鳥の好奇心を刺激したらしいな・・・・・

 こうなったら納得のいく答えが返ってくるまで止まらないんだよな。


 「それは・・・ほら・・・あんまり小鳥より仲良くないから・・・」

 「・・・・・そうなんですか・・・・・」


 白河が落ち込みだした。

 いや、実際そうじゃん!小鳥とはもう何年も一緒にいるけど白河とは会ってまだ二ヶ月くらいだ。


 「でも、今まで会った奴の中では白河は小鳥の次に仲がいいけど・・・・・」


 これですこしでも白河の気休めになればい

いけど・・・・・


 「ありがとうございます・・・・・」


 全然ならなかったか・・・・・


 「この際、リュウくん、優花ちゃんのことも呼び捨てでいいんじゃない?」

 「は?」


 いったい、なにを言い出すんだこの娘は・・・・・


 「ねぇ?優花ちゃんもそれでいいよね?」

 「はい!かまいません!」


 おいおい、それでいいのか?白河!


 「じゃあ決定ね。それじゃあ試しに名前を呼んでみようよ!」


 小鳥が全く意見を聞こうとせず強制的に決めた。いつものことだけど。


 「俺が、か?」


 一応、小鳥に聞いてみる。


 「あたりまえ!」


 即答かよ!俺がこの質問をするのが分かってたのか?


 「お願いします!」


 白河、できれば急かさないでくれ・・・・・・


 「はぁ~・・・・・わかった・・・・・」


 「「おお~」」


 白河と小鳥が同時に声を上げる。

 ホント息ピッタリだな・・・・・


 「ゆ・・・ゆう・・・・・」

 

 おまえら顔近い!すっごいプレッシャーが・・・・・

 ううっ、顔が熱くなってきた。


 「ゆう・・・・・」

 「あの~・・・・・」


 と、そこへ野太い声が聞こえてきた。

 言った人物は・・・・・車の運転手さんだった。


 「どうかしましたか?」


 運転手さんを鋭い視線で見ている白河アンド小鳥を無視してオドオドしている運転手さんに聞いた。


 「赤羽様のご自宅にご到着しました・・・・・」


 運転手さんは半泣きで教えてくれた。

 そろそろ止めてやれよおまえら。


 「あ!そうですか」


 これは今の俺にとって助け舟だ。


 「じゃ、じゃあこれで!」


 俺は運転手さんに手短にあいさつして車を後にした。心でお礼も付けて。


 「リュウくん!」

 「流星くん!」


 車の中にまだ残っている白河と小鳥が呼んでいるがかまわずに家に戻った。


 ただ、このちょっとした罰ゲームをする時間が伸びただけだがせめて心を準備する時間がほしかった・・・・・


 その後すぐに追いかけて俺の家に何の躊躇もなく入った。

 そしていつの間にかこの二人と一緒に座ることが多くなったリビングのソファーに座った。


 「それじゃあ改めて名前で呼んでみよーーう」


 やっぱりまた始まったよ・・・・・


 「なんだそのミニコーナーみたいな言い方は?」


 もう逃げられないのかな・・・・・


 「あの~・・・・・」


 白河が恐る恐るといった雰囲気で入ってきた。


 「ん?なに?優花ちゃん」

 「私は別に名前で呼ばれなくてもいいので夕飯はどうします?」

 「「あ!」」


 そういえばまだなにも食べてないっけな・・・・・

 グウゥーっと腹が鳴った・・・・・しかし鳴ったのは俺じゃない。


 「小鳥?」

 「小鳥ちゃん?」


 俺と白河が同時に小鳥を見る。


 「え?いやいやいやいや、私・・・・・です」

 「はぁ~、しょうがなねぇまずなんか食うか?」

 「うん!」

 「はい!お願いしいます」

 「よし、じゃあこと・・・・・」


 ん?今なんか引っかかったな。


 「お願いします?」


 いや待て・・・・・それって・・・・・


 「俺が作るのか?夕飯を?」

 「はい」

 「あ、私を久々に食べたい」


 確かに一応一人暮らしだから料理くらい作れるけど小鳥の腕と比べたら遠く及ばない。


 「でも俺、あんまり・・・・・」

 「大丈夫!流星くんが作る料理がおいしくないはずがないです」


 うわ~、なにそのプレッシャー。


 「うう~ん、リュウくんの料理は私より得意じゃないけどおいしいよ」


 小鳥・・・・・褒めてくれるのはうれしいけどそれもプレッシャーになる・・・・・


 「わかった・・・・・でもあんまりハードルを上げないでくれ」


 そう言ってキッチンに向かう。

 ん~、この前小鳥が作ったのは結構いろいろ料理あったからな・・・・・

 お!カレーとシチューのルーがあるな。


 「おーい、カレーとシチューどっちがいい?」


 俺はどっちでもいいので二人に聞く。


 「私、カレーがいい」

 「じゃあ私も」


 よし。よかったこれで「両方嫌だ」なんてて言われたらもうメニューがない。

 それじゃ始めるか・・・・・




 

 「ほら、できたぞ」


 大きい鍋に三人分のカレーを入れてリビングに持って行った。


 「も~、遅いよ。お腹減った」

 「私もです」


 白河も小鳥もテーブルにうなだれていた。


 「じゃあ早く食べろ」


 そしてテーブルの中央にカレーの入った鍋を置く。

 そのあと全員がカレーを皿に入れたの見計って・・・・・


 「それじゃあ・・・・・」


 俺の合図で全員、手を合わせた。


 「「「いただきます」」」


 同時にカレーに手を伸ばす。


 「ん~、おいしい。リュウくん足を上げたね」

 「ああ、でも足じゃなくて腕、な?」

 「え?そうだっけ?まあいいじゃん」


 俺は小鳥の勉強不足に落胆しながらカレーを食べる。

 よく入学できたな・・・・・


 「小鳥、おまえ来週テストだろ?勉強してんのか?」


 今朝白河とも会話した来週のテストのことを今度は小鳥にふった。


 「え?テストなんてあるっけ?」


 そこからか!?


 「小鳥、先々週連絡あっただろ?」

 「そうだったの?今月、リュウくんのことで頭いっぱいだったから・・・・・」

 「一週間!どんだけ悩んでたんだ!てか何を考えてたんだ!?」

 「え!あの~その~・・・・・」


 小鳥はなぜか考え込んだ。

 いやいや何を考えてんだ?別に言えばいいだろ。


 「今言わないともうおまえに飯は食わさない」


 いつまでたっても言う気配がないので強行手段に出ることにした。


 「え~!」


 あんまり声を上げるな近所迷惑だしなにより俺に迷惑だ。


 「それはあんまりだよ!こんなにおいしいの私に食べさせないなんて!」


 うるせぇ。日本語もうまくつかえないのにおまえに食レポなんてできるか!

 「じゃあさっさと言え」

 「むぅ」


 小鳥は低くうなったあと諦めたように溜息をした。


 「いいや、あ、あのねどうやったら・・・・・」


 小鳥はだんだんと頬を赤くしてうつむいていった。


 「な、仲直りできるかな~と・・・・・」


 小鳥は言い終わる頃には耳まで真っ赤になっていた。


 「ぷっ」

 「フッ」


 俺と白河はそんな小鳥と小鳥のがこの一週間考えていたことを聞いて思わず噴き出した。


 「あははははははーーーー」

 「ふふふふふふふ・・・・・」


 白河は口に手をあてて笑いをこらえようとしたがだめだったようだ。

 俺の場合もう手で口を覆うことを忘れていた。

 それぐらい小鳥が可笑しかった。


 「ちょ、ちょっと!そんなに笑わなくていいじゃん!」


 バン!っと小鳥はテーブルを叩いて立ったが顔が赤いままなので説得力がない。

 それから数分間ずっと俺と白河は笑っていた。

 はあ~笑った。

 さすがにもうみんな、まあ三人しかいないけど、食べ終わったか。


 「さて、おまえら帰ったほうがいいんじゃないか?」

 「え!?まだ大丈夫でしょ?」

 「そうですよ。まだまだ話したいです」


 二人ともまだまだ元気なのか・・・・・俺はもう結構疲れたんだけどな。


 「そういわれても・・・・・」


 俺は二人に時計を見るように促す。

 もう九時を過ぎている。


 たしかに一般高校生からしたらまだまだ休むには早い。

 だがしかし、さっきも言った通りテストが近いこれから皿洗いや風呂なんかにも入らないといけない。そろそろ小鳥と白河に退散してもらわないと俺の成績が・・・・・


 「じゃあ泊まる!」


 俺が一人で悩んでいると小鳥がとんでもないことを言った。


 「はあ!?」

 「私や優花ちゃんの服とかは私の家から持て来ればいいし明日は休みだし!」

 「え?いいんですか?」

 「いいのいいの、ねえいいよね?」


 例のごとく全く俺の意見をきこうとしてないな。

 まあこの際もうどうにでもなればいい。だから小鳥そんな怖い顔でさらに低い声でいわなくてもいいんじゃないか?


 「勝手にしろ・・・・・」


 俺は思ったことをそのまま伝えた。


 「やった!」


 と声を上げて喜ぶ小鳥。

 声を出さずに手でガッツポーズを決める白河。

 喜び方は別々だけど喜んでくれたようだ。

 こっちはあんまり喜べないけど・・・・・


 「それじゃ、私、下着以外を家から持ってくるから」


 とドアのほうにむきながらとんでもないことを言いだした。



 「おい、待てなんで下着はもってこないつもりなんだ。ちゃんと持って来い!」


 俺は当然のことながらツッコミを決める。

 しかし、俺も動揺していたが小鳥は俺以上に動揺していた。

 なんで!?


 「え!貸してくれないの!?」


 ととんでもないことを言ってきた。


 「貸すか!ちゃんと自分のをもってこい!」


 たく、油断も隙もないな。

 そして、ふと白河のほうを見ると白河が誰よりも動揺した顔になっていた。


 「なんでおまえが一番驚いてるんだよ!」

 「だ、だって・・・・・」

 「何がだってだ!」


 そういってすぐにドアが「バタンッ」という音をたててしまった。

 小鳥、逃げたな・・・・・


 「ほら、白河も行ってこい」

 「え!」

 「小鳥とおまえとじゃ下着のサイズに違いがあるかもしれないだろ?」

 「ああそうですね。それじゃ、またあとで・・・・・」


 そう言い残して白河は小鳥の家にむかっていった。

 そしてしばらくしてリビングのほうに置きっぱなしにしていたケータイが鳴り始めた。

 そういえば、このケータイ何年使ってたっけ、親父の形見なんだけど結構重いんだよ。

 そんなことを渋々考えながらケータイを開く。

 まさか、小鳥やさっき出て行ったばかりの白河からじゃないだろ。

 ケータイの待ち受けには一通のメールが届いていた。

 よかった。小鳥でも白河でもなかった。

 メールの送り主は・・・・・


 「ん?おばさんから?」


 おばさんとは俺が高校に入学するまで面倒を見ていてくれた母さんの妹のことだ。今でも俺に仕送りなどをしてくれている両親のかわりのような人だ。


 「いったい、なんの用だろう?」 


 そのメールには、『今月の仕送り、忙しくて少し遅れるかもしてない』と書いてあった。そういえば、おばさん。なんとかって会社の重役なんだっけ?そりゃ忙しいだろうな。


 まあ、しかたない。もし遅れたら節約でもすればいい。最悪、小鳥にも頼もう。そのかわりになにをされるかわからないから最後の手段だけど。

 俺の中で結論がついたので『大丈夫』とだけのメールを送った。


 「誰からですか?」

 「うぉう!」


 よくわからない悲鳴と同時に後ろを振り返るとそこに立っていたのはさっき出て行ったばかりの白河だった。


 さすがに早すぎるだろ。


 よく見ると白河の背後にパジャマらしき服を二着持った小鳥もいた。


 「小鳥ちゃん、私が家に入る前からもう服を用意してくれていて、下着のサイズも同じだったんです」


 なに!小鳥はこうなることを予測していたのか?俺のプランじゃ小鳥たちが帰ってくる前にシャワーを浴びて少しでも危険を減らそうと思っていたのに!


 白河は無駄なことまでしゃべっていたことはスルーしよう。


 「それで、だれからの電話ですか?」

 「なんで教えないといけない」


 俺はすかさず正論を言う。

 実際、小鳥ならまだしも白河に言う必要がない。


 「逆になんで教えられないんですか?」


 正論を正論で返された!

 そういわれると何も言えない・・・・

 俺は、心の中で溜息をついた。


 「俺が高校に入るまで面倒見ていてくれたおばさんからだ」


 考えてみれば別に答えてもなんの問題もおきない。むしろ答えないと二人して俺のケータイを勝手にいじることは容易に想像できるんだよ!


 ここは教えておいたほうがデメリットは少ない・・・・・と思う。 


 「千鶴おばさんから!」


 千鶴というのがおばさんの下の名前だ。

 過去になんどかおばさんに会っている小鳥は妙にテンションが上がった。

 ピョンピョン跳ねているから持っているパジャマや下着なんかも跳ねている。


 「へぇー、そんな人いたんですか」

 「そりゃそうだろ、両親がいないんだ。誰かの世話になるしかないだろ」

 一度、白河に話した両親の話のちょっとした続きだ。

 「え!千鶴おばさんなんて!」


 テンションが高いまま質問をしてきた小鳥。

 高すぎて唾が飛んでいる。

 女子力低いなぁ・・・・・


 「ああ、『今月の仕送りが少し遅くなるかも』って」 


 なんとか苦笑いをこらえながら言った。


 「あ、そうなんだ。今度こっち来るようなこと言ってた?」


 なるほど、滅多に会えないから久しぶりに会えると思ってテンションが高いのか。


 「いや、仕送りのことだけだった」


 小鳥に事実を言う。


 「そっか、ざんねん」


 小鳥はあまりざんねんそうな顔を出さなかったが本当に悔しそうに言った。 


 「まあ、しかたないね。なんかの会社の重役なんでしょ?」

 「ああ、たしかな・・・・・」


 なんの会社なのかは知らないがさっきも言ったが結構重要な役委員らしいからな。

 何度か聞いたこともあったがスルーされてばかりだったんだよな。


 「さて・・・・・」


 おばさんの会話が終わったのを見計らっていたかのように二人の目が鋭く光ったように見えた。

 おそらく、この後の入浴タイム、おもに俺の、を楽しみにしているのだろう。

 だがそうにはいかない!


 「風呂溜めてくる」


 そう言い残して小鳥、白河と距離をとる。


 「うん。わかった」

 「待っていますね」


 それぞれ、言い方は別だが了承した。


 それから数分・・・・・


 「すまん、探し物を探してて少し手間取った」


 俺は、待ちくたびれてリビングのテレビを見ている二人に言った。


 「もう、遅いよぉ、いったい何を・・・探して・・・・・」


 小鳥は言葉の途中で意識が消えたように動かなくなった。

 白河がその異変に気づいた。


 「どうしたんですか?小鳥・・・ちゃん・・・」


 そして白河も言い切ったが小鳥と同じように動かなくなった。


 それはそうかもな・・・・・俺が持っているのは先日、小鳥とのひともんちゃくある前に一度二人とも見たことのあるものだからな・・・・・実際は見ただけじゃなかったが。



 そう、「親父の形見その一、何に使っていたのかわからない荒縄!」


 これで、俺が風呂から出てくるまでじっとしててもらうことにしよう。


 「あの、リュウくん・・・・・それだけはなんとか・・・・・」


 小鳥は前回にも同じようなセリフで俺を止めようとした。


 「そうですよ。別にそんなことしなくても流星くんの入浴シーンなんて見ませんから・・・・・」


 白河も小鳥に合わせるように肯定した。


 「そうか、じゃあ別に縛られても何の問題もないよな?」


 しかし、俺は二人の息の合った合わせ技を冷血な笑いで返した。


 「いや、リュウくんそれとこれとは話が別じゃ・・・・・」

 「ん?なにが違うんだ?」


 最近になって気づいたけど何年もストーカーと付き合っていくと精神が壊れるというよりもむしろ強くなって小鳥みたいな人に問答無用で手が出せるようになったことに気づきました。


 俺の場合、ストーカー被害にあったのが早すぎたってのもあると思うけど。

 

その後、抵抗する二人を無理やりリビングのソファーに縄で括り付けた。


 暇だろうと思ってテレビは点けっぱなしにした。まあ、ただ、手足を縛られているからリモコンに触れられないけど。


 小鳥と白河をソファーに縛ったあとゆっくりと湯船に浸かった。


 「ふぅぅーーー」


 いままで溜まっていた疲れがいっきにきえたようで気持ちよかった。

 それにしても今日一日で何日分疲労しただろう。

 寿命が縮まったようなとはこのことなのだろうと今わかった。

 まあ、それと引き換えに小鳥とも仲直りできたんだけど・・・・・


 そのことに関してだけは白河に感謝しないとだな。


 あとでちゃんとお礼を言っておこう。でも感謝するからといってストーカーを許すわけじゃないけど。

 そういえば、車で小鳥に言われて気づいた

 

 けど俺、白河を一度も名前で呼んだことないんだよな。


 「優花、だっけな・・・・・」


 小鳥がちゃん付けで呼んでたけどさすがにそこまでしなくていいよな・・・・・


 でも、なんで車で言おうとしたときあんな緊張したんだろう。


 「ここだとすんなり言えるんだけどなあ・・・・・」


 小鳥は小学生の時から一緒だからもうなれたけどどうやって名前で呼んだんだっけ。

 あんまり覚えてないな。

 昔の俺のことだ名字で呼ぶのは他人行儀で嫌だったとかそんな感じだろう。


 「ようするに慣れなんだな」


 そう自分の中で結論付けると湯船から上がって頭を洗いはじめた。

 次に身体を洗ったあと立ち上がった時に鏡に風呂場の角の方になにかが光るのが見えた。

 まさかと思い光ったほうに向くと防水用のカメラが二台もつるされてあった。

 しまった!考え事しながら入って来たから点検し忘れた!

 そして、そのカメラを勢いよく引きはがしすぐに着替えてリビングにむかった。


 「おいゴラァァァあぁぁーーーーー!」



 自分でもビックリするくらいの怒声が家中に広がっていった。


 「わわ、ど、どどどうしたのリュウくん!そんな悪魔みたいな顔して」

 「と、とりあえず落ち着いてください!流星くん」


 例のごとく息の合ったかけあいを無視して風呂場のカメラの話を続ける。


 「おまえら、これはいったいなんだ!」


 二人の前に俺が手に持つカメラを出す。


 「「あ!」」


 そしてそれを見た二人が声を合わせて驚く。

 やっぱりこいつらのかよ!


 「いや、その・・・・・」

 「それはですね・・・・・」


 縄に縛られたまま二人は言い訳を考え始めた。

 白河を見直した俺がバカだったよ!それにしても言おうとしないな・・・・・

 しゃあない。

 俺はおもむろに手に持っていたカメラからカメラのデータが入ったチップを取り出した。


 「リュウくん?なにしてるの?」

 「ん?言わないんだったらこのデータ全部消去しないとだなぁ形も残らないほど徹底的に、って思ってさ、もちろん二つとも」


 俺は笑顔で答えてやった。

 これも最近気づいたけど笑ってるけど心は笑ってないという特技を習得していたらしい。

 あんまり褒められた特技じゃないど。


 「「え!」」


 その顔を見て笑ってるけど笑ってないということに小鳥と白河もわかったようだ。


 「待って待って待ってえぇぇぇーー」


 小鳥はほぼ絶叫するように(というか絶叫?)止めた。


 「わかりました。私が言います」


 次も小鳥が言うと思ったが続きは白河が話すらしい。


 「それじゃあ、いつの間に仕掛けた?」


 昨日の風呂のときはなかったからさすがに昨日というのはありえないだろう。


 「さっき着替えもってくるときに・・・・・」


 着替えをもってくるあいだになにやってんだこいつら!普通にまっすぐ戻ってこいよ!


 「ほら、言ったよ!返してよ!」


 小鳥が足をバタつかせながら言った。


 「わかった」


 それを聞いた二人はパァーという効果音が聞こえそうなくらい輝かしい笑顔だった。


 「明日、バラバラに解体して返してやるよ」


 しかし、次に言った一言でその笑顔は割れたガラスのように崩れていった。


 「リュウくん約束と違わない?」


 混乱しているのか怒りを忘れて悲しみになった。

 ホント、感情性豊かだな。からかうのが楽しくなってくるよ。


 「約束?俺は『おまえらが言わないんだったら消去する』とは言ったが『言ったら返す』なんて言ってないだろ?」


 笑いそうになったのを必死に我慢しながら決め台詞っぽく言ってみた。

 二人は、さっきまでの沈んだ顔がさらに増して蒼白になっていた。

 今の俺って完全に悪役だな。


 「でもちゃんと返すよ。バラバラになったあとでだけど・・・・・」


 チップをポケットにしまって縛っていた縄をほどいた。

 この状態だったら縄なんていらなそうだからな。

 予想通り、白河と小鳥はぐったりと手をぶら下げて放心状態になっていた。


 まるで、幽霊だなこれ。朝までそっとしておくか俺のせいだけど。

 二人をリビングに放置したまま自分の部屋にむかった。

 そして、自分の部屋に入ってすぐにカギをかけた今日は二人が泊まることということあってカギも二つにして。


 次に部屋に置いてあるシュレッダーに向かう。


 「親父の形見その二、紙以外も切り刻むシュレッダー」


 このシュレッダーは親父がどこかの会社からもらった試作品らしい。結局、危険すぎるということもあって発売されなかったらしいけど。


 もちろん、この機械を置いているのはおもに紙じゃなくて勝手に撮った俺の写真を粉々にするためだ。


 それに操作も簡単だし。


 まず、機械の部品なんかの固いものはシュレッダーの側面部分にある『機械用の分解専用の入れ物』に粉々にしたい品を入れて占めるだけ。


 あとは『スタート』と書かれたボタンを押す。これだけで明日には砂のように粉々になる。


 でも、これ作動してる間うるさいんだよな・・・・・近所迷惑にならないにしろ近くにいる俺はたまったもんじゃない。でも、我慢するしかないよな。だってこれがないと俺の写真のデータは一生残ることになるし。


 他の場所に変えようとも思ったけどここしか安全な場所なんなないし親父や母さんの部屋に置こうとも思っただがここと風呂場、あとトイレくらいしかカギがある部屋はな。


 つまり、他の部屋にこれを置くと小鳥たちからせっかく取ったデータを粉々になる前に取り出されるかもしれない。


 それだけは回避しないと・・・・・


 とりあえず、処理成功だ。


 それにしても今日は疲れた。早く寝よう。


 にしても、シュレッダーうるせぇ。しかたない今日は音楽プレイヤーで音楽でも聞きながら寝るか・・・・・


 「なんか、これから先も災難なんだろうな・・・・・」


 そのあと、ベッドに横になった俺は俺ん額を聞きながら静かにねむ・・・・・れたらよかったなぁ・・・・・


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