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泣いて泣いて泣き止んだら

作者: alto

昔話です、専門知識のない僕がこんなことを書くことはおこがましい行為だとわかっています。

ですが読んでもらいたいそう思い書きました。

僕のことを誰も知らない。

僕が生まれたのは12月24日、世間的にはクリスマスイヴで僕個人としては誕生日。

誰もが祝福する日。






泣いて泣いて泣き止んだら





いつから泣くのをやめたんだろう・・・・。

いつから人と距離を置くようになったんだろう・・・・・。

答えを知るのは僕だけで、答えを求めること事態が不毛なことだとも知っている。


1998年の冬の終わりで春の訪れちょうど学年の変わるころ、僕は出会った。

兄と慕う人に、姉と慕う人に・・・・。それが始まり、それが終わり。


「なーに泣いてんだ。一人か、親は?」

公園で一人泣いていた僕を見つけたのはユウジだった。

近所のおばちゃんとかならまだわかるが高校生が普通泣いている子供に声をかけるものなのか、と泣いているくせに僕はそう思った。

「あんた、誰だ」

今思えば心配してくれている相手に対してこのセリフ、どれだけ失礼だったのだろう。今でも悔やまれる。

そんな失礼な奴に対して殴るわけでも怒るわけでもなく笑って、お前おもしろい奴だな、と言い放ったユウジはきっと大物だったのだと思う。


ユウジは高校生といってももう卒業らしいのだがすでに車を持っていた。何て生意気、とか思ったのは忘れてしまいたい。

僕の頭は狂っていたのだろうそのとき見ず知らずの高校生の車に乗り込みついていくだなんて、でも僕はあの時思ったんだ。

この人についていけばこのくだらない世界もきっと楽しくなるんじゃないかって。だから差し伸べられた手をためらい無くとったんだ。


「その子は誰かな、ユウジ」

目的地について最初に投げかけられた一言はこれだった。

「さっき公園で拾ったんだ」

さもそれは捨て猫のようでした、といった感じで語るユウジに少しの反感を持ちながらもとりあえずは自己紹介。

「セイヤです、12月24日生まれだからセイヤ。よろしく」

「へえ珍しいねってみんな誕生日はそれぞれだから珍しいも何もないね、僕はコウイチもう卒業だけど高校生だよ」

第一印象はネコみたい、笑顔での自己紹介を見てそう思った。

「歳はいくつなのかな、セイヤ君?」

「11歳、今年で6年生」

「そっかぁ、私はフユミ。よろしくね」

優しそうな可愛い人だった。当時11歳の僕から見ても可愛い小動物を思わせるようなそんな人だった。

「私はアケミ」

つっけんどんな感じの自己紹介をしたのはキレイ系の人だった。

「ここにいるみんなは同い年みんなもう卒業するんだ」

連れられた部屋にいたのは3人の男女みんな付き合っているわけでもなくただ一緒にいる、そんな関係らしい。


僕が拾われてからは週に一回以上はユウジたちと遊ぶようになった。彼らはいつも車で迎えに来てくれて僕を知らない街まで連れて行った。

ある日僕はユウジに聞いた、何で僕を拾ったのかって。

「泣いていたからだ」

即答された僕はあっけにとられそして笑った。

「バカだなそれじゃ泣いている奴がいたらみんな拾っていくのかユウジは」

「そんなことはない」

じゃあ何で拾ったんだよ、と訊こうと思ったがそれはやめた。訊いても無駄な気がするし、何より訊いておいてあんまり興味が無かったからだ。

「俺も訊こうかな、何で泣いていたんだ」

「それは、絶望したからかな。世界に、自分に・・・・学校ってさ行っても意味は無いし面倒だし、何より周りと違う自分が嫌いだったからかな」

そう自分が嫌いだった。周りと違う自分に気がついた。何故違うかを知りたくて、でもわからなくてそれで泣いていた。

「そうか、まぁ俺たちには関係の無いことだ。お前はお前だろう?他の何者でもないセイヤだ。俺はそれでいい」

この一言にまた僕は涙した。泣いて泣いて泣き止んだらそこにはみんながいた。

でも確かにユウジも少しおかしいと思ったらしい、11歳にしてこの口ぶり歳相応とはいえないらしく試しにと言われIQテストを受けることになった。

「これはまた」

「すごいもんだね」

口をそろえての賞賛は少し照れた。

「この段階で129あるってことはユウジと同じぐらいだね」

コウイチはそう言いったがユウジはあまりうれしそうな顔はしなかった。

「セイヤ、これから先このことで悩む日はきっと来る。このまま行けばお前はきっと天才と呼ばれる人たちの仲間入りだ。

でもこれを失うすべはいくらでもある、今じゃなくてもいい自分で選ぶんだぞ」

ユウジは僕を心配してくれているようだった。


ユウジとコウイチとアケミは格闘技をやっているらしく一緒にやらないかと僕は誘われた。

誘われたといっても道場のほうにじゃなくユウジの自宅の地下室でユウジに習うといったものだった。道場に入るとなれば月謝もかかるし親にこのことを

言っていない僕にしてみれば遠慮したかったからだ。

空手でも、柔道でもないそれは僕の知らないものだった。なぜか名前は教えてくれず僕は淡々とそれでいて内心揚々とそれに打ち込んでいった。

知り合って半年はそんな日々が続いた。遊んだり鍛錬をしたり夏にはキャンプに行ったりそんな日々が。

運命の日は近づいていた。それはフユミにとっての絶望だった。


次に会うときは無菌室の中だった。

「白血病」それが彼女に与えられた病名で絶望の中身だった。

「ユウちゃんにみんな来てくれたんだ」

フユミは明るい顔でそう言ってのけた。

彼女は生まれがわからず、親もいないその日を暮らすので精一杯でとても闘病生活をすごすことなんて彼女ひとりでは出来なかった。だからみんなで助け合った。

ユウジたちはみんなでバイトしてそのお金を出し合って病気と闘うって決めた。

わりと元気な彼女をみて僕は安心していた。

そのときの僕が白血病の恐ろしさを知らずにいたこともあってすぐに良くなってまたみんなで一緒にいられるのだろうと信じて疑わなかった。

でも違った、気になった僕は調べた。発症する確立は10万人に1人完治は難しく再発の可能性も高い。

理解したそのとき僕は自分の理解の早さを呪いそれと同時に自分の無知を呪った。

それからもフユミの願いもあってわりといつも通りの生活が続いた。

しかし日に日に彼女が弱っていることもわかった。

抗がん剤の副作用は僕の想像をはるかに超えていて会いに行ったはいいがすぐに帰ることになることも少なくなくなっていた。

そのうち僕の好きだったキレイな長い髪も抜け落ち、髪をそったフユミを見たときみんな心の中で泣いた。みんな明日が来ることが恐くなっていた、

明日にはフユミはいなくなってしまうかもしれない。そんな気がしていたからだ。

ある日、僕は彼女と二人で話しをする日があった。

「あれ、みんなはどうしたの」

「先生と話しているよ、姉さん」

無菌室に入り僕は彼女にそう言った。フユミのことを姉さんと呼ぶようになったのは出会って間もないころからだった。

「私、そろそろ死ぬわ」

唐突に彼女はそう言った。

「姉さんは死なないよ。約束したじゃないかみんなでまたキャンプに行くって」

これは嘘だ。わかっているもう長くはないって。

「優しいね、セイヤは。あなたみたいな弟が出来て私はうれしかったわ」

「そんなこと、そんなこと言わないでよ・・・・姉さん」

明日には終わってしまいそうな命を抱えて彼女は穏やかな表情で泣きじゃくる僕の頭をなでた。

そのうちみんなそろってまた馬鹿みたいな話をしたりこれからのことを話し合ったりした。

未来の話をするとき当然のように彼女はそこにいて、彼女のいない未来なんて誰も語ろうとはしなかった。

ユウジをフユミのところに残して帰ることが多くなった。その中で一回だけ忘れ物をしてとりに戻ったことがあった。

ドアを少し開けたとき中からの話し声で僕は足を止めた。

「ユウちゃんごめんね、私のために」

「気にするな、好きでやっていることだ。俺もみんなも、それにセイヤだって」

「うん、ありがとう。でもごめんね私はもう長くないよ」

「そんなこというな」

「それ、セイヤにも言われた」

二人はどこか笑っているようだった。

「ユウちゃん」

「何だ?」

空気が一瞬とまった気がした。

「好きよ」

「俺もだ」

空気が動き出した言葉はこんな場所でなければ甘美な言葉だろうでも、二人の口から出た言葉に備わっていたのはロマンチックな哀愁だった。

「あーあ。私、生きていたいな。これから先もずっとユウちゃんやみんなと一緒にいられるんだって信じてたんだよ」

その声は涙声で扉越しに聞いている僕も涙してしまった。いつまで経っても戻ってこない僕を心配したのかいつの間にか隣にはコウイチとアケミがいた。

二人は声を殺して泣き悔しさに顔をゆがめていた。


そして運命の日が来た。

1999年4月4日その日フユミは突然姿を消した。

いつも通りお見舞いに行ったとき病室に居らず外出許可など出るわけもないみんなで探し回った。

その辺は一年間みんなで遊びまわったからなんとなく地理もわかる。だから僕も探しに出た。みんなが町や思い出の場所を探す中、僕は川に向かった。

病院から一番近くてそして僕らが夏に最後に花火をした場所でもあった。そこに彼女はいた。

「姉さん!?なにやってんだよ!!病院に戻らなきゃ」

「こないで!!」

慌ててかけよる僕を姉さんはとめた。よく見るとその手首からは大量の血が流れていた。

「姉さんそれ!!」

「ユウジに伝えてね、ごめんなさいもう私のために生きないでって。今、長くもそして短くもない私をささえることはみんなの人生を棒に振ることになるの」

言葉が理解できなくなった。

「あなたは強く生きて」

最後に彼女はそう言った。意識を失い冷たくなっていく姉さんの上半身を抱き起こし僕は泣いた。

何時間経ったかわからないそれともものの五分程度のことだったのかもしれない

ユウジが僕らを見つけて姉さんを抱き上げて僕も立ち上がり一緒に病院に向かった。

それからの記憶はもう覚えていない、呆然としている僕にコウイチが、ごめんね忘れて欲しいと、

いって僕を家まで送ったこと。最後の姉さんの言葉をコウイチに伝えて僕が家に入ったことそれしか覚えていない。

4月4日、それまでの僕がいなくなった。そこにいたのは涙を枯らし虚空を抱いた少年だった。

僕は結局失うことを選び思い出をなかったことにしようとした。僕の初恋は終わり、今までの僕が消え新しい僕が生まれた。


2007年、僕はまた涙することになった。枯れたはずの涙をわきあがらせたのは紛れもなく僕の大切な人だった。

また僕は大切な人を失いその大切さを知った。


自分の歳にもあまり関心がないせいかまぁ実際今が何年なのかも自信がありませんとりあえず学年と日付はあっていますこんなんですいません。

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