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復讐者シャルと聖女イリス  作者: 大桜乱
第1章 シャルの記憶
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第5話 ギルドの仕事

 昼食まで時間があるからギルドで依頼のチェックでもするか。

 装備品の出費が大きかったから、いい仕事があればいいな。


「こんにちは、シャル。今日はお仕事?」

 ギルドに入るなりシャリーさんから声を掛けてもらった。

「こんにちは、シャリーさん。実は昼まで時間ができたので何か仕事ないかと思いまして」

「そうねー、いま募集されている仕事はそこに張ってあるから見てみて」

 そう言って依頼が張られたボードを指す。ボードにはたくさんの依頼が張ってあった。


 その内容は大きく三つに分けられることが分かる。一つめはシャリーさんの言っているモンスターの討伐。二つめは魔科学の材料や魔石の収集。そして三つめが町の人たちからの依頼だ。

 実際のところ、ギルドの仕事は今やその業務のほとんどが魔科学関係といってもいいだろう。それだけ魔科学が今の世の中を支えているってことか。

 ギルドにはモンスター退治以外にも、町の人からの依頼が少なからず持ち込まれる。ギルドは元々、困っている人の仲介をするために作られた背景があるからだ。

 実は俺がやっていた町の案内もギルドに持ち込まれる仕事の1一つだ。アーロンさんが引き受けて俺が案内するってパターンだったけど……。

 多分、アーロンさんには俺が早く町に溶け込めるようにっていう意図があったんだと思う。おかげで町の人達からも気さくに声を掛けてもらえるようになった。

 依頼書の中には他の町への護衛なんかも張られていた。

 外の世界か。町の外に出れば、ひょっとしたら自分の記憶を取り戻すきっかけがあるかもしれないんだよな……。いつかは町の外へ行きたいな。


 そんなことを考えてたら、「緊急、ゴーレムの魔力補充!」と書かれた依頼書が目に入った。

「シャリーさん、ゴーレムの魔力補給なんて珍しいですね?」

 通常の魔科学機器は空気中に存在している魔力を自動的に吸収する。例外としてゴーレムなど大掛かりな機器が活発に動くときは魔力を定期的に補充する場合がある。

 でも平和なこの町では大気中の魔力と、町の守備隊にいる魔導士だけで十分なはずだ。

「最近、モンスターがでる頻度が上がっているせいだと思うわ。ついこの前も町の近くでモンスターが出たらしいの。少しでも魔力のある人は協力して欲しいそうよ」

 昨日の森でのこともそれと関係してるのか?

 でもゴーレムの魔力補充か。それなら俺に向いている仕事かもしれない。戦闘面では経験不足を魔力でゴリ押しにしている部分もあるくらいだし。

「シャリーさん、もしよければこの依頼俺が受けますよ。今すぐ行けますし」

「本当!? 助かるわ。じゃあ、この紙を持って守備隊のダニエルのところに行ってくれるかしら?」

 そういってシャリーさんは紹介状を俺に渡してくれた。

「わかりました。さっそく行ってきます」

「頑張ってね!」



 町の守備隊の詰所は北側にある。昨日入った森に面したところだ。逆方面にも小さな詰所はあるんだけど、そっちは街道から来る人をチェックをしていることが多い。

「こんにちはー。ギルドの仕事でゴーレムの魔力補充に来ました」

 すると大柄な人がこっちにやってきた。ダニエルさんだ。

「おう、待ってたぞ。こんなに早く来てもらえるとは、感謝する!」

 ダニエルさんはこの町の守備隊の隊長をやっている。頼れる兄貴って感じがする。しかも剣の腕も相当って噂だ。実際に見てても隙がない。


 紹介状を見せるとさっそくゴーレムのところに案内された。

「来て早々悪いが、頼む」

 普段森へ出かけるときに見かけるが、改めて見るとゴーレムは大きい! 四メートルはある。これなら大抵のモンスターは全く問題にならないだろう。

 今は整備中なのかしゃがんでいて、背中の部分から大きな透明な球体、コアが露出していた。コアはわずかに光を発している。

「早速だがコアに触れて魔力を流してくれるか?」

 言われるまま球体に魔力を流し込んでいく。そうしていくと少しずつ球体が光っていくのがわかった。

「本来ならうちの魔道士たちがやるんだがな。最近魔力補充が追い付かないんだ……」

 ダニエルさんは申し訳なさそうに言った。でもそんなにモンスターが増えているのか、一体何があったんだろう。

「いえ、町を守っている守備隊を手伝うのは当然ですよ」

 そういうと幾分か気が楽になったのだろうか、ダニエルさんは砕けた調子で話してくれた。

「つっても慌ただしいのは今だけだ。聖女様が今度うちの町にきていただけるそうだからな!」

「聖女様、ですか? そういう人がいるってことは聞いたことがあるんですが、実際にはどんなことをしている人なんですか?」

「聖女様を知らないのか? でもそうか、お前は状況が特殊だからな」


 ダニエルさんの説明はこうだった。

 聖女はこの星の加護をうけた女性に与えられる称号で、世界にも数えるくらいしか存在しないらしい。非常に高い魔力を持ち、また大気中の魔素を中和することができるそうだ。

 しかも、今度来る聖女は若く、美人らしい。……それでさっきからダニエルさんのテンションが上がっているのか。

 とにかくその聖女様がくればこの騒動もひと段落するってことかな?

 

 そんなことを話していると、いつの間にかゴーレムのコアがまばゆい光を発していた。

「おいおい、すごいな! 普通、数人の魔道士が交代制で補充していくんだが」

「いや、最初からある程度球体が光っていたからだと思いますよ? それにかなり魔力使っちゃったんでお腹ペコペコです」

 かなり魔力は使ったが、そんなにすごいことなんだろうか? でもさすがに結構疲れた。

「いや、本当に助かったよ。そろそろ昼食の時間だろ? 一緒にどうだ?」

 ダニエルさんに昼を誘われた! 剣のこととか聞きたい。運が良ければ手合わせできるかも。

 はい、ぜひ! と答えそうになって、何か忘れていることに気づいた。

 そうだ、リタと約束があるんだった。リタの誘いをすっぽかすと後が怖い……、ここは我慢だ!

「すみません。ご一緒したいのはやまやまなんですが、約束があるのでこれで失礼します。次機会があれはぜひお願いします」

「おう、わかった! シャリーにはこっちから連絡しとくよ。本当に助かった。報酬も色をつけとくからな!」

 ダニエルさんに剣のこととか聞きたかったな、と後ろ髪を強くひかれながら詰所を後にした。

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