7/12
第七章 遺跡の心臓(コラソン)
第七章 遺跡の心臓
制御室へ戻ると、警報が鳴った。
エスコバルが立っていた。端末を掲げる。それがこの時代の武器。
「止めろ」
「何を」
綾が問う前に、装置が唸り始めた。光が強くなる。
酸素網の再配分が“計画”として走り出す。
「最適化だ」
エスコバルは言った。
「救える数を最大化する。適応できない者は、いずれ死ぬ」
ミラが静かに頷く。
「揺れる未来は、悲しい。固定すれば、悲しくない」
綾の背中を冷たい汗が伝う。
救いが、死を正当化する音がする。
ルカが端末を開き、制御コードを入力しようとして――手が止まった。
綾は見た。ルカの瞳の奥にある“恐れ”を。
「ルカ」
綾は言った。
「止められるでしょ。あなたが」
ルカは目を閉じた。
「止めるには“鍵”がいる」
視線が、綾の胸へ落ちる。
綾の胸の外の心音が、強く鳴った。
装置の光が、その拍と同じテンポで明滅する。
「あなたが鍵なの」
ミラが言う。
「だから、半分入ってるって言った」
綾の喉が詰まる。
鍵。
私は、鍵になりに来たのか。
(違う)
(違わない)
相反する声が、同時に胸の内側で鳴る。




