決着
「《貫く大槍》」
「〈蕩流〉──《乱空》」
これまでよりもふたまわりほど大きい大槍を穿つメラクと、海流に様々な時空を絡めて予測のできない攻撃として放つルミナ。
「これじゃあ弱いか……!不意打ち専用だな」
「もっとだ、もっと来いよ!!」
その混沌の海は、内部に乱れた渦が想像を超えた密度で回転している。──乱れた状態が一番安定した海が。故に、外部からの干渉を受けると限りなく脆くなる。
「〈寒鳴肌〉!」
「無駄だよ」
「だあくそっ!」
〈寒鳴肌〉を放つも、痕跡ごと無に帰す魔法陣。
「チートだろ本当にさぁ……!」
「褒め言葉をありがとう!〈海取頭〉」
巨大な海坊主がメラクの頭を喰らわんとし、後ろや横への退避という選択肢を失う。
「はっ、俺がこの程度でやられるとでも!?」
「!?」
瞬間的に現れた無数の万年筆によって海坊主は貫かれ、海に溶けた。
「〈波動〉、《叫ぶ音塊》」
「がっ……!?」
ルミナの内臓……胃が捻れる。
「《逆流》……!」
「へぇ、擬似的な治癒もできるのか……面白い!!」
「……《遡行》」
メラクの好奇心に耳を貸さず、即座に魔法を発動する。
「なっ、んだ……?さっき消したはずの渦がなぜ……!!」
「痕跡の時間を巻き戻したんだよ……さながら逆再生した動画みたいに」
「っはは……化け物め……」
ふわりと低く宙に浮かび、眼の前を揺蕩う血肉を眺めるメラク。
「……治癒は使わないのか?」
「神からの祝福は、一日に一度までだ……恐らくはお前の固有魔法でも治せないだろう。水術で応急処置をしておく」
「……そうか」
戦闘終了と優勝者決定のアナウンスが響き、1つの熱狂が終わりを告げた。
─────
「……隷者が優勝するか」
「ええ、どうしますか?」
水術大会、実況席──兼、会議室。2人の人魚が頭を悩ませていた。その原因は勿論──。
「優勝は優勝だが……ふむ、数いる水者を差し置いて隷者風情が五芒家に仕えるなどあってはならないだろう」
「ですが……!」
隷者である。
「五芒家に泥を塗るのか!?」
「それはそうですが…!古来より五芒家の指針は”強き者の治める国こそが強き国”です!それに、数百年前の五芒家……特にイルドゥン公爵家は多く人間を雇っていたと聞きます!いいのではないでしょうか……!?」
「水術大会自体、歴史が浅いものではあるが……ううむ、どうするべきか……!」
そこへ、1つの影が揺らぎ泳いでくる。
「そこで何をしている」




