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水の国の交流譚  作者:
一杯目・五芒家編
7/12

ルミナ・エライの固有魔法

「イグニがやられたか……」


優勝候補と呼ばれていたイグニの敗北は、ルミナの頭に少し重りを乗せていた。実際、あの2人が水術大会に出るメリットは実はほとんどない。

優勝候補と呼ばれる程度には実力があり、尚且つ職も安定している。五芒家に見初められるメリットはあっても、それは既に達成されていると言っていた。


『私はコカブ男爵家のボディガードよ』


そう言っていたイグニの表情は、誇りに満ちたものだった。それほどにこの国において五芒家が圧倒的な影響力を持っている証拠であり、彼女が強者だという裏付けにもなるのだ。


「お会いするのは初めてですね、隷者」

「……蛸?」


海に住むという、蛸。似たような生物であるイカと同じく、墨を吐いて、敵から逃げるための煙幕として機能する。


「蛸の人魚か…」

「アリオト・アンパーと申します。では参りましょう。《氷の箱(エスケ)》」

「閉じ込められたか…」


氷の魔法。基本的に海から出ない人魚は、氷や水、温度といった水に関する魔法を汎用魔法として進化させてきた。


「いや…魔力の流れが少し違うな。それがあんたの固有魔法か?」

「さあ、どうでしょう?」

「……硬いな。本来〈氷室(ひむろ)〉は汎用魔法のはず…」


そう言いつつも、ルミナは依然として焦りの表情を見せない。まるで予定調和であるかのように、問題ない些事だとでも言うかのように。


「……《逆流(レトログラード)》」


人間は、一言こぼした。


「……何故?」

「どうした、そんなに目を見開いて。何か想定していないことでもあったか?」

「…何故、《氷の箱(エスケ)》が消えている?魔法を発動すれば、そこには使った痕跡が残るはずです…何故それが無いのですか…!?」

「時を戻した。もう少し時間が進めば痕跡が現れるよ」

「時を戻す固有魔法……!?そんなものあるはずが──」

「現に俺が使ってる」

「っ、痕跡まで現れては信じる他ありませんね…!」


咄嗟に退避して仕切り直そうとするアリオトに対し、再度《逆流(レトログラード)》を発動しアリオトの退避を戻すルミナ。


「なっ!?」

「魔法の時を戻せるんだ。人を戻せないわけがないだろ?流石に(自分)を対象にした場合とは効きの良さが異なるが……ま、それでも十分だな」

「出鱈目な力を……!」

「〈寒鳴肌(さめはだ)〉──《加速(アクセラレイト)》」

「!?」


ルミナの固有魔法、《時間(モーメント)》。手に触れた対象の時間を、文字通り操作する魔法だ。操作とは、加速や減速、反転から停止までなんでもござれだ。対象も人物、魔法、無機物…多岐に渡る。

寒鳴肌(さめはだ)〉に加速の魔法をかけて、魔法陣の組まれる速度や魔力を流す速度、果てには射出速度すらも上向かせる。


「ぐっ……!」

「速度……力に必要な重さと速さのうちの1つだ。それ(速度)を上げれば、自然と攻撃力は上がる」


最も、彼が汎用魔法に固有魔法をかけ合わせるのは得策ではない。長い目で見ての話ではあるが。


「俺の勝ちだな。お疲れ様」

「……はぁ、悔しいですね。私もまた力をつけ、貴方の前に立ち塞がります。私の名を、どうか覚えていてくださいね」

「……ああ、勿論」

人間は基本、海へ行きません。なので、海の生き物は基本的に遡上する生物を除いて、海の生物は本の中でしか見たことがありません。逆に人魚は川に住む魚を見たことがありません。そもそも地上に行かないので。

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