信者
「…アリオト、次の試合はお前だろう。準備しないのか?」
「もう完了していますよ、メラク。貴方こそかの”紅き血”が相手でしょう?英気を養う時にここまで来て激励など、余裕が過ぎますよ」
「誰にものを言ってるんだ、アリオト。俺だぞ?」
「……はぁ、貴方のその考えはいつまで経っても理解できませんね、戦闘狂」
「褒め言葉ありがとな」
「この……!」
この2人は、信者である。神に祈り、神と契りを交わし、神とともに歩み、自らの罪を洗い流す。そんな宗教の信者。
「ルミナ…あの隷者なんだけどさー」
「……」
男がルミナの名を口にすると、女は口を尖らせ、無言で不満をにじませる。
「あー…お前はそういう奴だったな。悪い悪い」
「…はぁ。貴方だから許すんですから」
「おっ、ありがとさん」
「メラク、だいたい貴方は──」
「げ、始まった……」
時折、メラクはアリオトを少々弄る。それに怒ったアリオトがよくメラクに注意し、それをメラクは聞き流す。その繰り返し。半ばアリオトも諦めているのだが、依然としてメラクがそれを辞める気配はない。いたちごっこのような児戯なのだ。
「なあアリオト。あの隷者はどうするんだ?」
「……そうですね。この場の貴方が総指揮ですので…少々複雑ではありますが、貴方に従います。指示を」
「おー…えらく従順だな、珍しい」
「あくまでも上の決定に過ぎませんから」
「ドライだなあ…」
「今更でしょう?数百年前からずうっとそうでしたもの」
「にしてもだろ。お前は俺をどう見てるんだ」
「昔も今もおんなじですよ、メラク。貴方は子供ですから」
「んだとこの…!」
とある任務のつかの間の、2人きりの談話。その休息は確実に彼らを癒やしていた。たとえ何があろうとも、任務を遂行する…、それでいいのだと。薄らと2人の心に、そんな決心が灯る。
「──どうです?ファルカダインは」
「順調。あとはウロデルスとイルドゥンの2つだ」
「そう。そのファルカダインもミザールの手を借りたクセに」
「五芒家を舐めるなよ。お前はそもそも出かけてねえだろうが」
「500回ほど聞きましたよ、それ」
「お前まじで…ほんと…」
「大丈夫ですか?ストレスにはこのお茶が……」
「お前のせいだ阿呆が」
「ふふっ、知ってます」
息を潜めて獲物を穿つ。ただそれだけのことなのだ。




