表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水の国の交流譚  作者:
一杯目・五芒家編
5/10

その少女ら

水術大会。16人の男女が集い競う、一種の見世物でありオークション。優勝者は五芒家のうち1つの護衛(ボディガード)として起用される。この国の王族はあまり表に出てこないことを考慮すると、あるいは王族の警護…近衛兵となるよりも名誉なことかもしれない。

盛り上がる客席とは遠く、闘技場にて2人の人魚が向かい合っていた。


「……ねえ、イグニ」

「なあに?」

「…一緒だね」

「ええ、そうね。……貴女と一緒に居ることが…ほんの少しだけ(さみ)しく感じるわ」

「そう?わたしは嬉しいけどな」

「あら、珍しいわね。貴女が私の元を離れたくせに」

「あはは。…こうしてさ、戦えるんだもん。ねえイグニ」


改めてフォリアがイグニに向き直る。

彼女らの目は見開かれ、静寂の中で構えをとる。


このとき2人に共通していたものは1つ。


「……勝たせてもらうわよ、フォリア」

「こっちの台詞だよ…イグニ!!」


金の鐘が開始を告げる。相応しい実力を見せてみろと、観客の鼓動の高鳴りを後押しするように。


「水術──〈蕩流(とうりゅう)〉」


イグニの掌から優しい流れが放たれ、フォリアの放った()()ごと、ぎゅるりと巻き取られる。汎用魔法の中でも相手を拘束する魔法として便利とはいえ、この精度と練度はイグニ自身の努力の結晶そのものだ。


「この程度で止めたつもり?水術、〈寒鳴肌(さめはだ)〉!!」


頭上の水が氷り、鮫が象られる。創られた氷の牙は、そのままイグニへと突き進んでゆく。

けれどその氷は、紅き血にあてがわれ蒸発し、消え去った。


「おいおい、レベルが高いな…」

「そりゃそうだろ、2人とも優勝候補だぞ?そこらの人魚よりも腕が立つってもんだ」

「でも、最初で当たってほしくは無かったかも。もっと後に見たかったわ」

「確かになー。まあでもこれはこれでいいかもな!」


目を皿にして見守る観客と、闘技場(ステージ)を悠々と泳ぎ回り魔法を次々と放つ2人の人魚。

イグニの動きが若干鈍ったのを見逃さずに、拘束をしようとハエトリグサを放つ。


「やられた!!あの時よりも精度が高まってるわね…!」

「当たり前じゃん、成長するのはイグニだけじゃないんだよ?」

「それもそうね。……《熱解(シュメルツェ)》」

「あっ!?」

「お返しするわ。水術〈蕩流(とうりゅう)〉」

「あっっっっっつ!?!?」


ドロリと融けたハエトリグサ(拘束具)は魔法に乗せられ、フォリアのもとに帰って行く。指先に火傷を負うもすぐさま避けたフォリアも負けじと〈蕩流(とうりゅう)〉を放ち、とろけた熱は拮抗する。


「あら、汎用魔法の威力上がった?押し返しづらいのだけど」

「そりゃあ鍛えてましたよ…!イグニこそ、固有魔法どうなってるのさ。昔はそんなに熱くなかったよ?」

「私を舐めないでほしいわね、フォリア。”紅き血”なのだから当然でしょう?お転婆な姫様とは違うのよ」

「それもそっか。イグニは強いもんね。昔からわたしとずっと一緒で、お転婆なわたしの手を引いて一緒に遊んでくれたっけ。……ふふ、懐かしいなあ」

「……」


思いを馳せる彼女とは真逆に、その目に未来を宿らせるイグニ。酷く固く結ばれた1つのつながりは、真逆に向かうお互いを引き合い、現実へと引き戻す。


「…あ、試合だったね。ごめんごめん」

「まったく、貴女何してるのよほんと…でも、ちょっとだけ頭がすっきりしたかも」

「え?」

「なんでもないわ」


彼女(イグニ)の胸中で何があったのか、それを知る術はない。今あるのは試合をしているという事実で、お互いが向かい合うべきものということだけ。


「……《燃え盛る血の玉(フォイアバール)》」

「《穿雷(ボーレン・ブリクセム)》」


(ほむら)(いかづち)のぶつかり合い。観客の大声すら届かぬ轟音の中、彼女たちは笑っていた。


「ああああ〜〜〜っっらぁ!!」

「おおおああああああああああ!!!」


瞬間音が消え、粉塵が舞う。力と力の衝突が終わりその(カーテン)を開けば、そこにはより強かったほうが立っている。


『勝者、イグニ・ファワリス!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ