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水の国の交流譚  作者:
一杯目・五芒家編
4/10

水術大会

『さあさあさあ、漸くでございます!!五芒家、ひいては王族までも観に来る水術大会!!今回は始まって以来初めての「人間」の出場ということで、大盛りあがりすることになりそうです!!みなさん、準備はいいでしょうかーー!?』


わっ、と歓声が上がる。……わけもなく。会場──その観客席は静まり返っていた。


『っと…そうですね、今回の優勝候補を見ていきましょう!!今回は”紅き血”イグニ・ファワリス!!そして変幻自在のパズルマン、メラク・スクリボ!!さらには近衛のフリーダム・プリンセス!フォリア・アルフィルクまでも出場!!さて、今年の優勝は誰の手に入るのか!?』


すぐさま、歓声。というより、振動が伝わる。男女分けられた控室にはあまり情報が入ってこない。防音もしっかりしているため、この震えが唯一の情報源というわけだ。


『そして、今年観覧に来た五芒家は……ファルカダイン伯爵家!!その若き当主、アリファ・アル・ファルカダイン伯爵がいらっしゃいました!!』


─────


「ファルカダイン…!?生きてる中で初めてよ、ファルカダイン伯爵家は」

「……うん、わたしも。ねえイグニ、お母さんから連絡来たんだけどさ…わたしたち優勝候補らしいよ」

「え、ほんと?まあ私達は同世代、ひいてはマーレでも練度高いからね。そりゃ入るか。……で、ルミナは?」

「事前情報が無いから、見世物って感覚。お母さんも本当に大丈夫なの?って心配してたよ」

「そう…ていうか貴女勘当されてるんじゃなかった?」

「う…今回は無理を言ってると言いますか、陛下の護衛といいますか」

「そんなことだろうと思ったわ。……ん?」

「どうしたの?」

「いえ、あの女性……」


2人が見たのは、手を組み祈るように…いや、祈っている人魚。美しい黒色の髪に、白い肌。傍目に見ても美しいとわかるその絵に描いたような見目(みめ)は終わりを告げ、その双眸を開いた。


「……神よ。視ていてください。愚かな隷者に、獄の(いかづち)よりも生き難い引導を渡して差し上げましょう…」

「…信者か」

「そうだね。邪魔しないでおこうか」


この国…いや惑星では、宗教というものは強大な力を持っている。一万年前の戦争が未だに尾を引くほどに、神……聖典の影響力は強かった。故に、邪魔をしようものなら直ぐに魔法で制圧される。


「……決勝に行けるといいね」

「ええ、そのためにも……まずは一回戦を突破しましょう」

「うん!」


─────


男子控室にて。


「……大丈夫なのかい、人間くん」


…先程祈祷をしていた人魚か…。絵に描いたような赤と紫のグラデーションだな……異彩を放つ真っ白な目がとても綺麗だ。


「…貴方は」

「俺はメラク・スクリボだ。いやまさか、隷者が出るなんて思いもしなくてなぁ、よろしく頼むよ」

「よろしく。握手でもするか?」

「……ああ、丁度緊張していたところだしな。よろしく、ルミナ・エライよ」

「…?名乗った覚えはないぞ」

「有史以来初めてなんだよ。水術大会に人間が出場するのは。大抵のやつが君の名前を知ってるさ」

「そうか…」


確かに唯一の人間だ。有名な家の出なら知っていても疑問はないか。


「お、君次じゃん。行ってきな」

「ああ。俺は強いぞ、メラク」

「ははっ!決勝で会えることを祈るよ」

「ふふ、俺もだ」


……メラク、か。会場に立てば、俺と相手は敵同士…。あまり話すべきじゃ無かったかな?


「ま、なんとかなるか」


─────


『……し、勝者、ルミナ・エライ!!』


先程よりも静かな空間。観客の歓声が俺を包むわけもなく、その誰もが食い入るように、いや時が止まったように俺を…正確にはその相手である男の人魚を見つめていた。

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