仕事探し
マーレ……水国マーレは、人魚の住む国の中でもかなりの広さ…そして影響力を誇っている。
理由は、単純に広いから。
「ここがわたしの家。2人だとちょっと狭いけど、仕方ないや」
「いや、俺人間だぞ?いいのか?」
「うん、いいの。だって似てるし」
「え?」
「わたしの家はいいところのお家だし、それこそお見合いの話もあったんだけど……」
困り笑いをしながら、フォリアは恥ずかしそうに呟く。
「わたしも、その〜……自由奔放すぎて。ほぼほぼ勘当されてるといいますか……ハイ」
「……そうか」
「えそれだけ?酷くない?」
「酷くはないだろ…お互いに自業自得だ」
「たしかに。自業自得じゃん」
「今更かよ……てゆーか、マーレの近衛兵っていったらアルフィルク家か。めっちゃいいとこのお嬢様だなフォリアさん」
「あ、フォリアでいいよ。その代わりこっちもルミナって呼ぶね。……小さいころはパーティーにも出てたんだけどね。わたしがあまりにはしゃぎすぎて一回中止になっちゃって……」
「お前どんなことしてたんだ!?」
「魔法をばかすか撃って船内蔦まみれに…」
「馬鹿じゃん」
「返す言葉もございません……」
魔法。この世界にも魔法がある。ただし、人魚と人間で魔法形態が異なるのだ。そして、人魚は魔法のことを水術と呼ぶこともある。みな、人間と同じは嫌なのだ。
「あ、ねえねえ。固有魔法は何?わたしは──」
「そう簡単に言うものでもないだろ、固有魔法なんて。その括りで言ったら、人間の固有魔法と人魚の固有魔法とかあるだろ」
「わたしが訊いてるのはルミナの固有魔法だよ!」
「言うわけあるか。一族相伝でもないしな」
「そっかあ」
水中で話す彼らの間は、既に名前の無い穏やかな空気を纏いはじめていた。
─────
「それで、これからどうするの?」
「なにもない」
「考えときなよ何やってんの!?」
「いや、いずれテラ中に俺のことが知れ渡ったらもうテラで暮らせないし……」
「ええ…」
ドン引き。それ以外に形容できないしかめっ面を見せたフォリアは、ひとつため息をつく。
「わかった。わたしの家で居候してていいよ」
「本当か?助かるよ」
「仮にも施しを受ける側の姿勢じゃないんだけど?」
「うっ…ありがとうございますフォリアさん」
「よろしい。……じゃあ職場でも探そうよ」
「職場…?あのな、俺がマーレで仕事なんてできるわけないだろ。人間だぞ俺は」
「仕事…っていうかね、ちょっとした大会でもらえる賞金があるの。そこで優勝すると、五芒家のボディガードになれるんだ」
「……五芒家?」
「え、知らないの?……あ、そっか。人間だもんね、無理はないか…。五芒家っていうのはそっちでいう爵位みたいなものなの。簡単に言うと貴族だね」
「なるほどな…それで?」
「で、五芒家は実力主義が強いことで有名なの。数百年前は人間を雇っていた家もあるって言われてたから、おそらく彼らにとって人魚か人間かの違いはあまり気にしてない」
「ってことは……」
「そこで優勝すれば、職場が手に入る…ってこと」
ルミナの目が、ほんの少しだけ光が強まる。
「いいね。それじゃあ……その大会に出て優勝すればいいんだな」
「うん。五芒家のボディガードに入ることは近衛兵になるよりも名誉なことって言われてるからね。近衛兵はうちがあるし」
「そうか…ところでその大会とやらはエントリーが必要なんだろ?」
「うん。……あ」
「……なんか嫌な予感がするんだが」
「……期限、今日まで…」
「よ〜しすぐ行くぞー」
「ああっなんか出てるなんか出てる!?!?!?……てゆーかエントリーはエントリーシートに書かなきゃだし、私がもらってくるよ!人間が外に出ると、色々とまずい」
「あー……そっか。じゃあ頼んだ」
「うん!」
─────
「はぁ…はぁ…もらってきたよ……」
「ありがとうフォリア。これでお金が…!」
エントリーシートに必要な事項を書き連ね、またもやフォリアに頼んで役場まで飛んでいってもらった。
「人使いどーなってるのさ……」
「いやほんとすまん。本当にすまん」
「あんな全力で泳いだの久々だよ…あ、わたしも出るからね?」
「…へぇ」
「負けないよ、ルミナ!」
「ああ、こっちこそ負けないからなフォリア」
「……あ、そうそう。もうそろそろでわたしの友人がここに来るんだけど……」
「友人?」
「うん。イグニって言うんだけど、その子も大会に出るんだ。で、お願いなんだけど。……イグニすっっっごく怖がりだから!!できれば会わせたくないなーって!!」
「どんな人魚だ…俺が教科書で見た人魚は勝ち気な性格って言ってたぞ」
「そんなの嘘に決まってるじゃん…みんなそれぞれだよ。で、お願い。イグニが家を出るまで隠れててくれる?」
「……わかった。もう大会自体は出られるしな。好きにしてくれ」
「ありがとう……!」




