祝勝会
「そこで何をしている」
「……っはぁ!これはこれは、伯爵様……!何故このようなところに?」
「お前達こそ、実況席はもう少し先だろう?……ああ、会議室か?大方、あの人間を優勝にするかどうかの会議でもしていたのだろう」
藍色がかった黒髪の人魚──五芒家の一角、アリファ・アル・ファルカダイン伯爵。そこに居るだけでも一種の威圧感を覚えるような出で立ち。其の者がそこに立っている。
「は、はい!大会が始まって以来、隷者が出場することも優勝することも初めてでして……少し決めかねている状況です」
「私は別に構わない。人間だろうが人魚だろうが、守るものがある者は皆強い。そこに差などなにもない」
「で、ですが……その、威厳と言いますか……国内だけでなく、他国にまでこのことは知れ渡ります。それ故に、その……舐められてしまうといいますか……」
”舐められてしまう”。その言葉を耳にした瞬間、眉間が数段深くなった。
「ほう。お前は私が国民に小馬鹿にされると言いたいのか?」
「い、いえ!決してそのようなわけでは……!!」
五芒家。それは実力者の巣窟。それはマーレの軍隊よりも粒ぞろいな勢力。故に、「ナメられること」を何よりも嫌う。
「誰がなんと言おうと、優勝者はあの人間だ。変えることは私が許さない。わかったな?」
「はい……かしこまりました……!!」
─────
「優勝おめでとう、ルミナ!」
「ありがとう2人とも。職場も確保できて良かったよ」
「これで外も歩けるわね」
「逆に有名になりすぎて外を出歩けなくなったよ。水術大会を優勝したことがここまで影響が大きいとはな……」
翌日。ルミナたちはフォリアの家で打ち上げをしていた。
「まあ、仕方ないわよ。まだ水術大会は始まってから300年程度だけれど……それでも五芒家が出資していることもあって、影響力はかなりあるもの。需要と供給ってやつよ」
「俺は1人のほうが都合がいいんだけどな……縛られすぎるのは少し気分が悪い」
「……ふーん」
ほんの少しだけ不貞腐れるフォリアを横目に、ルミナは刺身をつまみつつ話しかける。
「フォリア?喉乾いた?」
「お茶汲んでくるわね。ルミナ、明日は伯爵家に行くんでしょ?程々にしておいたほうがいいんじゃないの?」
「そうだな。……て、俺ら全員未成年だろうが。酒は飲めねえって」
「ちょっとした言葉遊びよ。私はもう少ししたら帰るから」
「あ、そう」
「……ちょっと、冷たくないかしら?」
じとりと呆れた目で見つめるイグニ。
「なんだよ、俺はそんなに礼儀がなってないか?」
「いいえ、貴方は仮にもエライの人間だしそんなことないというのはわかるけれど……ふふ」
「?」
「なんでもないわ。……フォリアのこと、大切にしてね」
「……ああ、住処をくれた恩人だからな。感謝してるよ」
少し外れた答えを述べるルミナに目を丸くしながら、イグニはフォリアの家を後にした。
フォリアは可愛いんです




