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37 アレクシスと国王の和解、そして盛大なる勘違い。

「う……ん……? ここは、いったい……?」


「ディラン陛下!」


 アレクシスが焦った声を上げ、こちらに振り向き私の耳へ唇を寄せた。


「カミラ、まずい。陛下が目を覚まされてしまった。姿を隠してくれ!」


「は、はい」


 彼の言葉に従い急いでカミラの体に戻る。すると国王は完全に我を取り戻したのか、私たちの姿を見て驚いた表情を浮かべた。そして床に落ちている二振りの剣に目を止めると、サッと顔色と青ざめさせた。


「アレクシスと斬り合う悪夢を見ていたが、まさか、現実だったのか……!? あぁ、私はなんて愚かなことを……!? お前の子どもに剣を向けるなんて、本当にすまない、アレクシス……!」


 うな垂れる国王へアレクシスが穏やかな声をかける。


「陛下は悪くありません。貴方様は魔王によって操られていたのです。……そして、この私も」


「魔王だって!? そういえば、悪夢の中で恐ろしいバケモノの姿を見た気がする。だが眩い光が現れ、その光に包まれた瞬間、突然頭の靄が晴れて……」


 恐ろしいバケモノの姿、と言う言葉に思わずギクリと身を固めてしまう。もしかしなくても、そのバケモノとは恐らく魔王ではなく私のことを指している。


 混乱している様子の国王を落ち着かせようと、アレクシスが彼の肩にそっと手を置いた。


「ですがもう心配いりません、陛下。魔王はすでに滅びました」


「あ、あぁ……。だが先ほど、黒い影がお前の奥方の中に入っていったような気がしたのだが……私の見間違いだったのだろうか」


「えっ」


 陛下の言葉に、私の心臓がドクリと跳ねる。


(しまった……?! 急いで戻ったつもりだったけど、ギリギリのところで見られてしまってた……!?)


「いえ、その、ええと。私は――」


 なんと誤魔化すべきか。冷や汗を流してしどろもどろになっていたその時である。隣に控えていたフォルンが、私の前へと躍り出たのだ。


 カッと強い光が彼の全身を包み、変化の魔法が解かれていく。


 光が収まったその場に現れたのは――銀色の毛並みを持つ、巨大な狼。突如として現れた神々しい狼の姿に、国王もアレクシスも、そしてルーナまでもが目を丸くして立ち尽くしている。


「な、なんと美しき狼……! まて、このお姿には見覚えがあるぞ。我がサンクティア聖王国の国旗にも描かれている神獣……! 古きよりこの地を守護されてきたという、あの伝説の神獣フェンリル様のお姿そのものだ!!」


 国王が興奮した様子で顔を赤く染め、フォルンの前に駆け寄り跪く。その傍で私は慌ててフォルンに念話を送った。


(フォ、フォルン!? どうして変身を解いたの!?)


(大丈夫、ここはボクにまかせて! ……神獣であるボクがカミラ様の従魔だってわかれば、カミラ様は疑われないはず!)


 するとフォルンはツンとすました様子で胸を張った。


「いかにも、我はかつてこの国の守護獣であったフェンリルである! 長きにわたり瘴気に身を侵されていたが、カミラ様が我が命を救ってくださったのだ。ゆえに我はカミラ様の従魔となった。我が主を愚弄することはたとえ何人であっても許さぬぞ」


 いつもの無邪気なフォルンとは到底思えないような威厳ある口調。国王はすっかり委縮した様子で更に頭を垂れる。


「は、ははっ! 大変失礼仕りました。カミラ夫人を一瞬でも疑ったこと、心よりお詫び申し上げます。神獣フェンリル様の主でいらっしゃるほどのお方が、悪であるわけがございません!」


「うむ、わかってもらえたようで何よりである! 良きにはからえ」


 フォルンが得意げに胸を張り、私にチラリと目くばせをしてきた。


 (どう!? うまくいったでしょう!? 褒めて褒めて!)と言いたげな目線である。その様子が可愛らしくて思わず頬を緩めてしまう。驚きはしたけれど、どうやらフォルンのお陰でこの場を切り抜けられたようだ。


(ありがとうフォルン。お陰で助かったわ!)


(どういたしまして!)


 伝わってくるフォルンの声色はご機嫌そのもの。すると国王が顔を上げた。


「ということは、魔王はフェンリル様が退けてくださったのですね! なんと感謝申し上げればよいのか……!」


 キラキラとした視線を送られるフォルン。だが彼は首を横に振った。


「いいや、違う。魔王を倒したのはこの三人だ。そこなる可憐な娘、ルーナが聖なる力で魔王の隙を作り、我が主カミラ様が瘴気を払い魔王を弱らせ、アレクシスがとどめをさしたことで魔王は倒れた。我は、この者たちの勇敢なる行いに少々手助けしたのみ。ゆえに礼ならば彼らに申すがよい」


「なんと……! アレクシスたちのお陰だったとは……!」


 国王はグッと胸元で握りこぶしを作ると、一目置いた後私たちの方へと向き直った。すると彼は、国王であるにもかかわらず深々と頭を下げた。


「ルーナ嬢。魔王に操られていたとはいえ、剣を向けてしまい本当にすまなかった。アレクシスもだ。今回の件のみならず、お前にはずっと冷たくあたってしまっていた。なぜそのようなことをしてしまっていたのか、今となれば自分でも不思議だが、そのことをここで謝りたい。私はずっとどうかしていた。――そして、カミラ夫人に感謝を。そなたたち一家の尽力で私とこの国は救われた。本当に、ありがとう」


 国王はアレクシスを冷遇し続けていた。だがそれは魔王によって操られ、負の感情を増幅させられてたためだったのだろう。頭を下げ続ける国王をじっと見つめながら、アレクシスは口を開いた。


「頭をお上げください、陛下。確かに私と貴方には長年、浅からぬ隔たりがございました。しかしそれは私の至らなさがあったがゆえのこと。つまり……この件はおあいこということにいたしましょう」


「アレクシス……! 感謝する」


 そうして、二人は微笑み合い固い握手を交わした。魔王が倒されたことで、二人の友情が再び結ばれようとしている――。そのことに私も喜びが隠せない。嬉しくて、ルーナの肩を抱きつつフォルンを思いっきりもふってしまう。


「しかし、我が国に()()も聖女が現れるとはなんたる僥倖なのか! こうしてはいられん、早速祝賀パーティーを催さねば!」


「えっ」


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