16.言語理解
『私たちがお二人を信頼しているのは、お二人が内緒話のつもりで自国の言葉で話している内容を聞いていたからです。私たちに対して悪意がないことがわかっていましたから。』
マーサがそう言うと、ライアンも頷いている。
なんだ、私たちはお互い自分の国の言語を話しても意思疎通できていたんだ。
言われてみれば、アーロンたちも最近はニャーニャー言っているだけの気がしてきた。それでも何を言っているかはわかったから気にしていなかったけれど、そう言うことか。
だって猫の言うことはお腹が空いたとか、遊ぼうとか、ブラッシングしてとかじゃないの。気付かなくても仕方がないと思うわ。
慎二くんは気が付いていたんだろうか。付いていたんだろうね。多分私だけが判っていなかった。
もしかすると、私たちはこの世のありとあらゆる言語を理解できるようになったかもしれない。そう思うと、急に元の世界に帰りたくなった。世界旅行で言葉の心配がないなんてなんて素敵なことでしょう。
そんな風に現実逃避していると、慎二くんが
『じゃあ二人にお願いしたい。河岸から30mほど先までの川の深さを調べて欲しい。』
『了解だ。』
ライアンはそう言うと、マーサに向かって
【先に行く。一度向かって調べるから少し待っていてくれ。】
と獣人語で伝えた。
言っている意味が分かったよ。本当に理解できた。感動的ね。
今の私はバイリンガル、トリリンガルを超越した存在になったんだ。
慎二くんが私に話し掛けた。
「これで他国との交渉がこの国の誰よりも有利になっていることは分かった?」
「そうね。その上あなたには鑑定まであって、裏までわかるんだものね。」
ライアンが戻ると、マーサが交代してまた調べに行った。ふたりの調査結果がほぼ同じで、河岸を沖まで20mほどの間浚渫してやれば港として使えそうなことはわかった。
この間、4人は獣人語で会話した。とても楽しい。
しばらく話を進めていると、会話の内容がわからないテック伯爵一行がしびれを切らし、
『それで、港として使えそうでしょうか。』
と、家令と思しき男が尋ねてきた。
慎二くんが
『このままでは無理です。工事をすれば港にできるとは思いますが。』
と、多分言われなくてもわかっていそうな話をした。
『では、工事に協力頂けないでしょうか。』
『どの程度の船が使う港を造りたいかで工事の内容、難易度が変わります。それを教えて頂かないとお答えできません。』
『タウンゼント港の沖に浮かんでいた船が使える…』
『無理です。ここにどんな工事を施してもあの船は入港できません。』
そりゃそうだよ。相当深く浚渫しないと座礁する未来が私でも見えるよ。




