8.国王 その1
今日の午後に国王がやって来るとの前触れがあった。召喚の翌日なので、これは早い方なんだろう。ドレスはウエディングドレスしかない。矯正下着を付けてまた着るしかないのかぁ。
ウエディングドレスはひとりじゃ着られないから困ったな。
「そのままでいいよ。国の民族衣装ということにしよう。誰もわからないからね。」
「え、いいの?」
と、言うか、考えていることわかったの?鑑定効果か?まあいいや。
楽になった。じゃあ待つだけだね。
「私は置物でいいんだよね?」
「ああ、威圧を頼むかもしれないけど。宰相と話しているときは基本置物で。国王と話すときも俺が話すけど、俺に声を掛け、それを受けて俺が国王と対話の形式を取りたい。」
「私の言葉を慎二君くんが伝えるって感じにするのね、わかった。」
部屋の隅に控えていたメイド2人が私の方に近づいてきた。
『国王陛下がみえますので、今から湯浴み・・・』
『必要ない。下がれ』
慎二くんが最後まで言わせずに却下した。
『我らは迷惑を被っているのだ。本来昨日のうちに来て謝罪するのが当然であろう。無礼者に礼を尽くす必要などない。』
ほえー、このスタンスで行くんですね。これは威圧くんの出番がありそうな予感。
3人のメイドを引き連れ、円卓の間に向かった。円卓なので、上座下座は無いのだが、奥の方が上位っぽいので奥の席に進む。今回はメイドが椅子を引いてくれた。慎二くんは私の隣に座る。
ちらりと慎二くんの方を見ると、軽く頷かれた。置物開始ですね、わかっています。
20分ほど待っていると、騎士2名が扉を開け、両脇に立った。
続いて王と、宰相、その後ろに騎士2名がついてきている。王は無言で対面の椅子の前に立ち、騎士が椅子を引いた。
王が座ると斜め後ろに宰相が立ち、騎士2名がその背後に立つ。
『ソマリ殿、何故帯剣した兵士がここにいるのだ?即刻部屋から追い出せ。』
始まったね。騎士を兵士扱いするなんてなかなか酷い。流石に背後にいる騎士は表情を変えないけれど、扉の騎士は怒ってるよ。命を狙われるかもって言っておきながら、敵を増やす発言は良いのかな。
『申し訳ございません。が、これは我が国の規則で・・・』
『そんなものは知らん。我らはふたりだ。そちらも同じくするのが当然であろう。追い出せ。』
王が背後の騎士に、部屋から出るように指示したようで、2人は出て行った。だが、扉のふたりはそのままだ。
『我らを守る騎士2名は部屋から出しました。残り2名は部屋を守る者たちです。これでご理解頂きたくお願い致します。』
ソマリ猫さん、粘るね。慎二くん、どうするの?
「あいつらにやれ。」
ラジャー。"控えよ"
ガシャンと大きな音を立てて扉の2人が土下座状態になった。結構距離あったけどうまくコントロールできてるね。
王は音がした方を見やり、土下座の騎士に驚いている。昨日の集団土下座を見てないから驚くよね。ソマリ猫さんは昨日のことを知っているし、自分も土下座したから驚かない…ことはなく驚いている。距離に驚いたのかな。私も少しだけ驚いた。
『仕方ない。これで良い。面倒を掛けるな。』
つかみはOK?