2.港
今日は久しぶりに港に向かう。本来名など無かったが、タウンゼントの港と呼ばれるようになり、そのままタウンゼント港となった。
港までの道を整備して以来だから1年以上ぶりになる。以前はとてもしょぼい漁港という場所だったが、造船所が併設された港になった話を聞いて視察することにしたのだ。
私の視察には、警護長のトマスほか50人ほどが同行している。なんか段々増えているのよね、同行者。権威を示す目的なんだそうだけれど、これがあるから気軽に移動できなくなってきている。
『港には泊まれる宿舎はあるのかしら。』
トマスに聞くと、
『庁舎がございますので、そちらでお休み頂くことになります。』
と教えてくれた。各集落には庁舎があることは知っていたけれど、港にも作ってあったのね。
港までは馬車で半日ほどだ。馬車は時速10km強位だけど、同行する兵士の多くはその間すっとジョギング状態だから大変だね。庁舎に着いたら休ませてあげよう。港でのお付は騎士たちだけで良いと思うんだよ。
港に着くと、知っている風景じゃあなかった。1隻だけだけれど大きな船が少し沖に浮いていた。全長100m近くはありそうだ。まるで黒船だよ。そんな船が3隻とまれる桟橋があった。そちらの方には15m位の船が5艘。これは漁船だよね。前はボートみたいなのしか無かったから、漁業を専門に携わる人ができたのだろう。
あの船は蒸気船だな、煙突がある。帆船を飛び越えて蒸気船ができたのか。これで大砲でも乗っていたら本当に黒船だね。
慎二くんに一緒に来て貰えばよかったな、あの船の説明は多分慎二くんしかできないだろうから。帰ってから聞くしかないな。
『もうすぐ庁舎に着きます。そこで一旦休息を取って頂いた後、改めて港と造船所に向かいます。』
トマスが言うので聞いてみた。
『あの大きな船には乗れませんか?』
『あれに乗るには小舟で渡る必要があります。サユリ様の今の服装では無理かと存じます。』
『桟橋からは行けないのですか?』
『今日は少し波がありますので。』
ほう。だから少し沖にいるのか。
よくよく聞いてみると、岸に近づきすぎると、波の影響で岸とぶつかって船に損傷が出る恐れがあるから、仮に波が無くても桟橋からある程度離れて停泊するらしい。
なんだ、波が無くても小舟で渡るんだ。結局乗れないんじゃないか。残念。
トマス・ベラム :警護長




