16.遠交近攻
マンチカンは何もできずに宰相たちと帰って行った。帰る前に一度宰相と面会を求めて来たが、立ち上がることは勿論、顔を上げることもできず、
『帰れ。』
の私の言葉に、背後に立つ騎士に抱えられて立ち去った。威圧の制御が上達したよ。
私の威圧を”威厳”と勘違いしてくれたおかげで、他の貴族たちには威圧を掛けなかったのに跪いて挨拶してくれたのは望外の効果だ。まあ国の序列から言っても上位にはなっているが、何せ新参者である。嫉妬や疑いの目が薄れたことはありがたい。
「遠交近攻の切っ掛けになるかもね。」
「何それ。」
「兵法三十六計のひとつだよ。三十六計逃げるにしかずって聞いたことないかな。遠交近攻は遠くの相手と同盟を組んで、近くの相手を攻めると言う意味だよ。」
「近くを攻めるって、ブラントンを攻めるの?」
「まさか。ブラントンはもう同盟みたいなものだから、その隣さ。」
その隣って言うのは国王の領地だね。サイベリアン国王を攻める?戦争は嫌だよ。今のままでも良いんだけど。
そう思ったことを慎二くんに言うと、
「戦争じゃなくて、政治的に潰そうと考えているよ。小競り合いは起きるかもしれないけれど、時間を掛ければ戦争無しで潰せる。ただ、潰される前にサイベリアンからこちらを攻めるって言う可能性は否定できないから、そうならないように遠交が大切になると思っている。」
ほぇー。潰すってことは国王を引きずり落そうってことだよね。私としてはマンチカンや宰相を痛めつけたことでもうどうでも良くなっているんだけど、慎二くんはまだ怒っているんだね。意外と粘着質だ、知らない一面が見られたよ。
私がニヤニヤしていると、
「笑っているけど、それが出来ればどうなるか分かっている?」
と問われた。
当然分かっていない。
「そうなれば新しい王が誕生するわけだ。君が女王として君臨することになるんだよ。噓から出た実ってやつさ。」
マジか。




