15.交代
領地案内ツアーで皆がお出かけしているが、領都の門外には数百人の騎士、兵士が野営をしている。ツアーは2泊3日コースなので、この光景があと3日は続くわけだ。周りは麦畑なので、野営のために一部畑が潰されることが残念だけれど仕方ない。刈取り後に来てくれれば良かったのにと考えるのは私だけではないだろう。
そんな中、ブラントンからレオナルドがやって来た。
『相当兵士を連れて来ていますね。大丈夫でしたか?』
『ええ、皆さま紳士でしたよ。今は領地案内でお出かけです。兵士の方々はお留守番ですね。』
と嘘をつく。挨拶をしようとしたマンチカンに軽く威圧を掛けて土下座させたのを見せてやり、宰相が取り繕おうとしたところに追加で土下座させれば、みんな紳士の対応だ。
『レオナルド様はどんな要件でおいでですの?』
私が尋ねると、
『いえ、教皇派の侯爵様たちがこちらにいらっしゃるので、心配でしたので参りました。』
と見え透いた嘘をつく。自分たちが知らない技術が流出していないかの確認だろうに。
貴族の会話をしているわと思わずフフッと笑ってしまった。
そんなレオナルドとの話の中で、
『あの方々は恐らくこちらに来ている文官の入れ替えを申し出ると思います。』
と言う内容があった。来て間がないのにもう入れ替え?
侯爵たちが揃って私に面会を求めてきた。レオナルドの予想を事前に聞いていなければ何の用かと構えていただろう。
先日やって来たばかりとは言え、領地案内ツアーで知り得た内容よりは詳しく知っているはずの文官を連れて帰り、自領に反映させたいと思うのは自然な話だろう。
こちらは頼んで来て貰っている以上、断ることは難しい。
それに、身内だからと言うことで部下用の屋敷に泊まった者たちは、その環境(特にトイレ)に驚き、自分が代わりに残りたいと言っていることがわかっている。水洗トイレなんて多分ここにしかないものね。これに慣れた後に悪臭漂うトイレは辛いことでしょう。
もし私の携帯用おしり洗浄機まで使えたとしたら、取り合いになるでしょうね。
しかも屋内にトイレが設置されているのは侯爵たちにも驚かれている。貴族の用足しは離れ、平民は草むらでというのが常識の世界なのに、屋敷の中にある。天候によってはトイレに行くのも大変だからね。
そんな訳で、要件がわかっている会合は何事もなく進み、交代の人たちと慎二くんが面接して問題がないかを確認する段取りとなった。
人物としては然程の問題はなかった様だけれど、6人帰って16人が交代で来ることになったのは計算外だね。しかも一人は男爵家当主だよ。妻子はどうするつもりなんだろう。よそで男爵でもここでいきなり男爵扱いにはしないよ。
結局交代の人たちも一旦は帰ることになりました。そりゃそうだよね。急に決まったことでお互い何の準備もないんだから。
ただ6人も一緒に帰るので、仕事の計画を変更しないといけなくなった。全員担当がばらばらだったから、メンバー構成も含めて再検討ね、慎二くんが。
レオナルド・ブラントン :ブラントン家長男




