12.教育
「学校を作るよ。」
慎二くんが唐突なのはいつものことだけれど、何を考えているのだろう。
「孤児院を拡張して、それぞれの集落にいる孤児も集めて教育をしようと思う。領都のここでも虐待があるのだから、集落でも多かれ少なかれあるだろう。その子供たちに優先して教育を施して将来の俺たちの力になって貰う。」
拡張って、すぐにはできないだろうから、まだ先の話だね。計画の話だったのね、珍しく予定を教えてくれるとは。なんて考えていたら、
「教室の空間は今でも十分あるから、寝る場所確保だけで済むよ。今でも集落では馬小屋みたいなところで住んでいるから、それよりはましな建屋なんて一月もあればできる。まずは今いる子たちからだね。1か月後には集落の子供も集めて開校するよ。」
という、すぐの話だった。いやいや、ちょっと待ってよ、問題があるよ。
「学校の器はできたとしても、先生はどうするの?それに集落の子供は農作業要員でしょう。集められるの?」
「先生はふたり決めている。農作業は刈取機があれば人手も少なく済むから問題ない。」
もしかして、あの時から考えていたのかな。その時に教えてくれれば良かったのに。
ふたりの先生って、誰のことだろう。
「先生は誰?」
「シンプソン男爵家の兄弟だよ。ふたりの人柄で選んだんだ。将来ルイスを男爵にしたら、その配下にするつもりのふたりさ。」
そう言えば学校ができる前提で話を進めたけれど、そもそも何でそんなことになるのかを聞いていなかったな。
「どうして学校を作るの?そもそもこの国に学校なんてあったっけ。」
「うん、ないね。だから作るんだよ。まあそうは言っても、学校と言うよりは塾だけれどね。」
塾?何が違うんだろう。違いを聞いてみると、入学はいつでも良い事、学習するのは読み書きと加算減算、剣術であること、一定の基準を満たせばいつやめてもいいこと、卒業資格は設けないことなどを並べられた。
確かに卒業資格がないなら学校とは言えないかも。
「剣術って、ポールもタリックも文官でしょ?教えられるの?」
「貴族の子息がまったく剣術をやらないわけがない。子供相手なら十分できるよ。」
そりゃそうか。
「四則演算までやらないの?」
「それはやりたい子供だけがやれば良い。基準を満たしたら、集落の子は帰っていいと伝えるつもりだよ。残りたい子に教えようと思っている。どれだけ帰るか、どこの集落へ帰らないかでそれぞれの状況がわかる。本当に親代わりをしているなら帰りたがるはずだから、リトマス試験紙としても使おうと思っている。」
うーん、それはどうかな。多分ほとんど誰も帰らないと思うな。まだ小さいから親の恩より親しくなった友達を優先するよ。わたしならきっとそうする。
ルイス・テック :テック伯爵家3男
ポール・シンプソン :テック伯爵家配下シンプソン男爵家次男
タリック・シンプソン :テック伯爵家配下シンプソン男爵家3男




