8.農業指導
季節は秋になり、これから寒くなるので山間のダム作りは一旦終了でみんな帰ってきた。と、思っていたらまた皆さんお出かけ。どこに行くかと思えば各農家に指導だそうだ。何の指導かを慎二くんに聞くと、
「麦播種機の説明だよ。」
「なにそれ。何に使うの?」
「この世界では麦は手捲きで、適当なんだ。手捲きが上手い人の収穫量が多い世界さ。等間隔に播いただけで適当に播くより生産が上がるんだよ。で、等間隔に麦を播く機械を作ったから、その説明をしに行くんだ。」
「機械を使うより適当に播く方が楽なんじゃない?言うこと聞くの?」
「聞くさ。平民は貴族の言うことには逆らわないよ。」
そりゃそうか。でも、何か嫌だな。まだ慣れない。
「来年になればその収穫量に驚くはずだよ。5割増し、倍の可能性さえあるから、来年の税収が楽しみだよ。収穫比率で納税だから農家も余裕が出るようになって、その時に感謝するだろうね。手捲きの達人は増え方が少なくてがっかりするかも知れないけれど。」
なるほど。無理強いしても後で良い結果が出れば良いわけね。悪い印象から良い印象になった方が好感度は上がりやすいものね。領主の評判が上がるかな。
「ポンプで水汲みが劇的に楽になっているから、無理強いしなくても言うことは聞くと思うよ。それに麦を抱えて播く作業の辛さを思えば、機械で播く作業の方が遥かに楽なのはすぐに気が付くよ。」
最初のうちは手播きの方が楽だけど、それを続けるのは大変ってことね。
「夏までに刈り取りの機械を作ってまた説明に回るから、さらに楽になって感謝されるさ。刈取機は麦播種機よりも効果が分かりやすいから、この二つはセットだね。」
麦播種機や刈取機も、またブラントン伯爵に売るのかな。そう考えていると
「ごめん、鑑定しちゃった。まだ売らないよ。結果が出るまではね。」
と慎二くん。続けて、
「伯爵は多分農業に詳しくない。ブラントン伯爵に限らず、貴族連中は細かい事は知らないはずだと思っている。去年この位だから今年もこの位、程度の考えだと思うから、結果を出さないと農機具の効果なんて興味はないさ。」
「結果が出れば高く売れるはずだから、どこまで吹っ掛けられるかを考えないといけないな。」
慎二くんは独り言のように呟いた。聞こえちゃったけどね!




