5.石積みダム
「セメント工場ができたね。」
私が慎二くんに言うと、
「ガワだけね。建物ができただけだから、まだこれからだよ。でも、ダムは考えていたよりずっと順調だから、君の仕事が発生するよ。」
私の仕事は川の堤防を固めることだったっけ。川底を浚渫して出た土砂で堤防を作るって聞いた気がする。
「上流に作った簡易ダムのおかげで川の水流が減っているから、川底を深くする作業をもう始めているんだ。ライアンとマーサのパワーであっという間に石積みダムの第1弾ができたんだ。」
ライアンたちのパワーは人間離れしているそうだ。元々犬人は猿人よりも力が強い(ライアン談)そうだけれど、慎二くんにとっては、大型重機かいっ!と言うほどらしい。彼らも自分の力に驚いていて、だからこそガハハハッ、うふふっと大喜びで働いてくれる。
今は川底浚いをしているのだが、とてもそのようには見えず、水浴びをしているね、と言った感じで楽しそうだとの事。一度見てみたいな。
「川を浚って出た土砂を袋詰めしたやつ、いわゆる土嚢だね、これを絞って欲しい。ただでさえ重いのに、水気を取らないとさらに重いからね。川岸に置いてあるやつを一度絞って欲しいんだ。堤防予定の場所に積んだ後さらに固めて貰うけど、その前の仕込みみたいなものだね。」
「わかったわ。いつから始めれば良いの?」
「10日後位になると思う。」
ちょっと先だね。そう言えば上流の簡易ダム、見てみたいな。
「それだけ時間があるなら、ダム見に行きたい。遠いの?」
「遠いっちゃあ遠い。現地で1泊だね。上流で集落もない場所だから野宿になるし、途中から道が固めてないから揺れるけどそれでも行きたい?」
「うん、行きたい。ついでに道を固めるよ。」
「そう。じゃあそれもお願いするか。でも全部固める必要はないよ。いずれは本格ダムに沈むことになって無駄になるから。準備するから3日後出発しよう。あ、俺は行かないよ。」
慎二くんは川底の浚渫立ち合いで同行できないので、チャールズが同伴者だ。フレディも同行を立候補してきたので一緒に向かう。メイドはふたり。そのうちのひとりはバーバラにした。フレディとバーバラは同じ家だから連携がとりやすいんじゃないかな。
最後の集落を超え、ここからは道がちゃんと整備されていない場所に来た。私が威圧で道を固める作業をしていると、フレディとバーバラは初見だから固まっている。
怖いよね、やっている私が未だに慣れないんだから。
バーバラは今までも私の扱いは丁寧だったけど、これを見せてからは私の一言に恐れを抱くようになった気がする。なんか距離が広がったな。連れてこない方が良かったかな。
目的地までたどり着くと、そこには簡易と言って良いのかと思う大きさのダムがあった。そこでチャールズが説明してくれた。
『ここは一番下流にある簡易ダムです。ここより上流には同じようなダムが他に2か所作られています。』
まだダムには然程水が溜まっているわけではなく、石の隙間から少しずつ水がこぼれ落ちて細い川になっている感じだ。
『ここでは浚渫はしないのですか?』
『はい。先ほどまで道を造った場所に本格ダムを作るので、このダムを含めてダム湖に沈みます。ですから浚渫は行いません。ある程度周りの土砂は下流の堤防用に運ぶよう指示を受けています。』
見に来て良かった。堤防の話、軽く考えていたけどこれはとんでもない話だ。いざやるとなったら住民総出で対処しても人手が足りないのではないだろうか。道路舗装の規模じゃないな。ライアンとマーサの働き具合も見てみないとダメだ。
チャールズ・ブラントン:警護副長 ブラントン家次男
フレディ・ヴィアーズ :文官 ヴィアーズ家三男
バーバラ・ヴィアーズ:メイド ヴィアーズ家養女




