閑話 ライアン
その日はマーサとふたりで街へ買い物に出掛けようとしていた。ふたりが家から出たと同時に雷鳴が轟き光に包まれ、被雷したと思った次の瞬間、別世界に立っていた。
一瞬、被雷で死んで、天国前の裁きの間にいるかと思ったが、マーサが僕の腕を握りしめる痛みで、それは違うと気が付いた。
目の前には5人、その奥には兵士が帯剣して10人ほど並んでいた。前の男がなにやら話していたが、自分たちの言葉とは違い、何を言っているのかわからない。他の男たちも口々に何やら言っている。マーサを背後に隠し、攻撃されるようなら戦う覚悟を決める。
前の5人も後ろの兵士もどうやら猿人のようだ。猿人ならば僕たちより力が劣る。剣さえ無ければこの人数でも互角に戦えるのだが、武器が無い状態では流石に厳しい。少し後退りしていると、男の言葉が何故か理解できた。
『お前たちは召喚された。』
召喚?どう言うことだ。何が起きている?
僕たちが呆然としていると、男は同じ言葉を何度も繰り返した。少なくともいきなり戦いにはならなさそうだ。ふいに今思っていることが口についた。
『ここは何処だ。』
何故か自分たちの言葉ではなく、相手の言葉が言えてしまった。
『ここはサイベリアン国、王都の大教会だ。』
召喚されたと言っていた男ではなく、奥の兵士の中で一人高そうな服を着た男が答えた。続けて、
『これから王城へ連れて行く。』
そう言うと、兵士たちが僕たちの前で並んだ。構えてはいないが、抜刀状態だ。
マーサが不安そうな顔をして口にする。
「どうしよう。」
「とりあえず直ぐに危険はなさそうだし、今は従うしかないね。どうするにせよ、機会を待とう。」
さっきザワザワと言っていた言葉が『今度は成功したのか?』ということだと分かったのは、兵士に囲まれて移動している最中だった。
ライアン・ケリー :召喚された獣人(男)
マーサ・バード :召喚された獣人(女)




