10.通信確認
慎二くんがブラントンに向けて旅立った。私は留守番だ。屋敷に残る私の役割はただ一つ。慎二くんからの通信を受信したら、それに反応して通信を返すことだけ。
ブラントンまで成功したら追加でもう一つ役割があるんだけど、面倒なのでやりたくないのが本音だ。でもこれは私か慎二くんしかできないから、やるしかない。
この世界には時計が無い。屋敷には慎二くんが作らせた振り子時計があるから、こちらでは時間がわかるけど、そんな技術レベルだから持ち運べる時計など存在しない。だから定時連絡が不可能だ。いつ来るかわからない通信をひたすら待つことしかできない。
最初頼まれたとき、そんなの簡単!と思って安請け合いしたが、ただ待つことがこんなに辛いとは知らなかった。ひとりで監視は無理だ。
マティルダとサラを呼び、
『そこの機械がカチカチと音がしたら私に知らせなさい。交代で良いので、必ずひとりは注意を向けるようにしなさい。』
と巻き込んだ。
誰も触らず機械がカチカチと音がする、なんて、彼女たちには意味不明だろう。魔法を使える人なんて、私たちと召喚者以外に見ていないので、魔法使いはレアな気がする。これは魔法じゃないんだけどね。
でも、彼女たちは表情を変えずに承諾した。まあ、断られる訳がないんだけど。どんな奇妙な命令でも疑問の表情も浮かべず従うって言うのは、命令する側から見れば楽だけど、言われたことしかできない子になっちゃうんじゃないかしら。追々教育が必要ね。
サラが、
『鳴りました。』
と、私に伝えに来た。気付かなかったよ。やっぱり私一人じゃ無理だった。
最初のカチカチ音は、午後4時前だった。そりゃそうだよね、線を引きながら移動してるんだから。切りの良い場所、多分ここから一番近い集落まではその位時間が掛かってもおかしくはない。
返事しなくちゃ。
私が適当にトントントンと送ったら、
“トンツートントン ツートンツー ツーツートン”
と返ってきた。
信号早見表で調べたら、“オ ワ リ”。今日は終了ね。これがあと5日続くのか。
ブラントン到着予定日の昼、またカチカチ音がしたので、適当にトントントンと返す。すると、
“ツーツートントン トントン トントントン トンツートンツートン・・・”
長いな。信号早見表で調べたら、“ブ ラ ン ト ン”
ブラントンまで通信できちゃったのね、追加の仕事をしなくちゃ。
追加の仕事。それはこの国の文字に対応したモールス信号を作ること。知らない人から見れば、暗号制作だから私がやるしかないんだよね。やっぱり面倒。
マティルダ・ヨーク :メイド
サラ・ブーン :メイド




