9. 通信線
あっそうそう、猫たちと一緒に文官ふたりもタウンゼントに来た。お世話係だそう。過去に大きな失敗をして、猫の世話くらいしかできないと思われていた人たちだったから、簡単に連れ出せたみたいだね。でも、お披露目会で猫たちと私たちが話しているのを聞いていたはずだ。猫が話せるってこと、他の人たちに伝えていないのかしら。
猫を膝の上に寝かせて、猫と会話する。至福のひと時を過ごしているうちに1日が過ぎていく。と言うのは言い過ぎだが、幸せなのは確かだ。猫と会話できるならば変わって欲しいと思う猫好きは少なくないだろう。
タウンゼントに戻り、こんな生活を続けていたとき、ブラントン伯爵から手紙が届いた。
「見つかったそうだよ。王宮に幽閉されているそうだ。」
最悪ケースじゃなかったのね。生きていて良かった。慎二くんの機転と私の威圧がなかったら、私たちが同じ目にあっていたかと思うと、ゾッとする。
「それでどうするの?」
「そうだね、なんとかこちらに引き込みたいね。現状は少なくとも王国は友好的とは言えない扱いをされていて、被害者なのに可哀想だ。それにちょっと会ってみたい。狼のような顔をしているらしいから。」
えっ、狼から進化した人?私も会いたい。せっかく異世界に来たんだから、異世界定番の獣人、ドワーフ、エルフに会いたいと思っていたのにいないんだもん。初めてのチャンスね。
猫たちでさえ言葉が通じたんだから、狼人ともきっと話せるよね。楽しみができたわ。
「作戦はあるの?」
「うーん、牢獄だったら小百合の協力があれば簡単だけど、王宮で同じことをやれば戦争になるからなあ。威圧で遮る兵士を押さえつけ、とかやりたくないでしょ?」
「うん、やだ。」
そんなことをしたら、私に対する狼人の印象が悪くなりそうだし、手加減を間違えてブチっとしちゃったらと思うと、やりたくない。
「まずはブラントン伯爵と相談だね。手紙の返事に6日後ハンフリーと伺うことを伝えるよ。」
6日はちょっと先だな。前日で良くないかな。なんなら、レオナルドがアポなしで来た実績があるし、いきなり行っても良い気がする。
「そんなに日にちの間を置く必要があるの?」
「いや、伺うだけなら一日二日で良いと思うけど、途中でちょっと実験するから。」
「何の実験?」
「電信。今できているやつで、どこまでの距離伝えられるかの実験をしてみる。うまくいけばブラントンとの通信線ができるし、直接伯爵とやりとりできるようになる。」
「電池できたの?」
「うん。距離が無ければ動くモールス信号の通信機はできたことは確認したから、どこまでの距離で動くかの実験さ。」




