8.召喚された者
用意された私室で2匹の猫と世間話をしていた。
『あなたたち、名前はなんて言うの?』
『私はアーロン、妻はアミーズだ。』
『そう、これからそう呼ぶね。私はサユリ、夫はシンジよ。』
これから猫と話ができる毎日が始まるのね。召喚されて良かったことのひとつだわ。
2匹の猫は最初に召喚された者だった。召喚特典で言葉が話せるようになったのだが、私たちと違い、話せるようになるまでに半日ほど掛かったため、城の人々は話ができることに気付いていなかった様だ。
猫なので、城の中を結構自由に行き来していたようで、私たちが召喚されたことも知っていた。私たちがタウンゼントを貰ったとき見ていたんだって。
生活自体は召喚前の世界と然程変わらなかったらしい。猫の国では、猫の世話をする人間がいて、3食昼寝付きで自由に生活することができたそうだ。飼い猫なのか、それとも猫が支配している世界なのか。飼い猫ならば、いいところに飼われていた猫だったんだろうね。
あと、私たちの他に、もう一組召喚された者がいるらしい。召喚されたときに大騒ぎになったので知ってはいるが、見てはおらず、猫たちの活動範囲には居なくて、どこにいるのかわからないそうだ。
「ちょっといいか。」
私が猫たち、いえ、アーロンとアミーズたちと話しているのを遮り、慎二くんが話しかけてきた。
「なに?」
「明日帰る前に、ブラントン伯爵と情報を共有したい。この部屋に招きたいが良いか?」
「私は良いよ。あっ、ちょっと待って。」
『ねぇアーロン、アミーズ。お友達を紹介したいんだけど、良い?』
『『いいよ。』』
「いいって。」
程なくして、ブラントン伯爵が親子でやってきた。
『お手数をお掛けして申し訳ない。重要な情報が手に入ったので共有したいと考えお招きした。』
『いえ、構いません。重要な情報とはどういったものでしょうか。』
私がアミーズを抱き、アーロンが私の横を歩いてついて来る。
『紹介します。アミーズとアーロンです。』
『猫…』と呟いたのはレオナルドだ。そのとき、
『アミューズです。』
『アーロンです。』
とふたりが自己紹介。
『ヘンリー・ブラントンと申します。以後よろしく。』
さすが伯爵。年季が違うね、落ち着いている。父親を見て、やや慌てて
『レオナルド・ブラントンと申します。』
と挨拶した。
『これが重要な情報でしょうか。』
ブラントン伯爵が問うと、慎二くんが
『はい。そのひとつです。彼らは最初に召喚された者たちです。彼らから聞いた話によると、他にももう一組いるそうです。が、今どこにいるのかがわからないそうです。』
あれ?慎二くん、私たちの話を聞いていたの?
『神殿で騒ぎがあって鎮圧された話は聞いています。あれがやはり召喚だったのでしょう。そうなると今は良くて王宮の幽閉部屋、悪ければ牢獄にいるのではないかと。処刑があればわかりますので、それは…召喚含めてすべて無かったことにしていなければ、ですが。』
『調べられるだろうか。』
『場所が限られますので、1か月あれば確実にわかるでしょう。』
『頼めるか。』
『わかりました。私の伝手で、やってみましょう。』
アーロン :召喚された猫(♂)
アミーズ :召喚された猫(♀)
ヘンリー・ブラントン :ブラントン伯爵
レオナルド・ブラントン :ブラントン家長男、伯爵家




