14.法整備
今日からは法律を作るそうだ。大変だね。と思っていたら、私がサイベリアンの法を説明するんだって。マジか。
確かに法規関係の書籍は読んだから、あらましは説明できるけど、細かい部分は法律書を見て下さいとしか言えないよ。
と、言うことで、慎二くん、私、エドワードの3人が集まった。
『サイベリアンの法の特徴を教えてくれ。』
エドワードもいるからこちらの言葉ね、了解。
『そうね、やっぱり一番気になるのは身分制度ね。身分によって刑罰の重さが全然違うのが気になったわ。』
その時、エドワードが私に問いかけた。
『女王陛下の国の身分制度では、身分による刑罰の違いは無いのですか?』
少し言葉に詰まる。政治家や金持ちと私たち庶民が全く一緒とは思えないもんな。
すると慎二くんが答えてくれた。
『原則は身分による差はない。こちらのように法規で身分差を明記していない。』
エドワードは微妙な表情をしていたので、次は私が答えよう。
『例えば、こちらでは貴族が庶民を殺したとしたら見舞金を払えばそれでおしまい、逆なら一家全員死罪、伯爵以上なら一族全員死罪でしたよね。私の国では誰が誰を殺そうとも、見舞金だけで済むことはありません。』
微妙な表情だが、少なくとも違いがあることは分かってくれたようなので、話を進めた。
『今すぐに身分制度を無くすのは早急すぎると思うけど、刑罰の部分は変えたいわね。』
『そうだね、幸いにも、この領地にはこの建物関係者以外に貴族籍の者はいない。ここの役人が税を取る以外に何もしていない領地で、今のところそれでも成立しているから、変えるなら今のうちだろうね。』
『今のうち、ですか。』
エドワードが呟くように言うと、慎二くんはそれに答えた。
『そう、今のうち。外から人が流入する前までにだよ。これから私たちは様々な産業を興すつもりだ。そうすれば、人が入って来る。まずは商人。そしてここに居るメイドの関係者も来るだろう。』
『メイドの関係者…』
『ここにいるメイドは侯爵家、伯爵家の関係者だよ。手押しポンプの情報は口止めしていないからもう伝わっているだろうね。この領地には職人が少ないから外に売るほど作れない。
それを求めて来るならばブラントン伯爵領で買い求めるだろうけど、いずれ図面を欲しがってやって来る。あまり時間はないね。あと3か月ってところだろう。』
今まで鎖国していた訳じゃあないけれど、特に魅力がある場所ではないので外部からの流入者は殆どいないか、王の領地だったので、大っぴらにではなく、どこかの集落がそういう人が集まっている程度だと思う。
土地は余っているので、そこに新しい村を作れば揉め事が起こりにくいんじゃないかな。
『今のところはそれぞれの集落は物理的な距離があって、皆同じ程度の貧しさだから、問題が起こっていないだけだと考えているけれど、揉めるネタとしては土地、水、そして貧富の差になるからね。
産業を興せば今より貧富の差が出てしまう。何も手を打たずに放って置くと、富を得るのは外部から入って来る人の方が多い可能性が高い。入って来る貴族関係者の方が教育されているだろうから新産業に入りやすいだろうからね。』
慎二くんが言っていることは分かる。文字が分かる人や、計算ができる人はこの屋敷関係者以外では多分稀にしかいなさそう。
『だから、まずは外部からの入植者には足枷を法で作る。サイベリアンでは貴族の土地の所有は領主の承認があればできるが、ここタウンゼントでは平民同様貴族であろうが一切認めない。例外はない。土地は全て領主のものとする。』
『今と違い、豊かな土地になれば、攻め込んで奪いたい人は増えるだろうな。』
嫌なことを言うね。でもそれは私もそう思う。
結局、サイベリアンの法をベースに、私たちが受け入れられない貴族優位な部分を見直し、土地の権利はすべて領主にありと明記した法案を策定した。限られた時間で、私たちだけで法を作るのは無理がある。まずはこれで、5年後見直しを実施する旨も付け加えて施行することとした。
5年で見直しは“バッテリー限界次第で何をどう変えるかが違う可能性が高いから”が裏の理由だ。




