12.幹線道路整備 その1
今日はタウンゼント-ブラントン間の道路を整備するための資材を準備すると言われてお出かけだ。タウンゼントに来るまでの馬車の旅が外出した最後だから、久々のお出かけである。
久々なんだけど、嬉しくはない。だってまた馬車移動でしょ、滅茶苦茶揺れるし、それも激しいからおしゃべりできない。道路整備も良いけれど、馬車のサスペンションを何とかするのが先だと思う。
同行者はチャールズとハンフリーのブラントン家兄弟だけで、チャールズが御者、ハンフリーは馬で少し前を先行している。従僕のエドワードも留守番で、馬車の中は私たちだけだ。揺れなきゃおしゃべりできるのに、舌を噛むリスクには勝てない。
行先は川沿いに北上して1時間ほどのところにある岩山だそうだ。1時間なので途中休憩なし。もっと距離を走ったタウンゼント道中では30分に1回は休憩していたので、連続1時間の馬車の旅は初体験、辛すぎる。
お尻の痛みが限界を超えたと感じているうちに、目的地に到着した。
「着いたよ。」
川に大きな岩があちこちむき出しになっている。
「なにこれ。岩がむき出しの場所だね。岩山って言ってたんじゃなかったっけ。」
「ごめん、岩のあるところに行きたいとセバスに言ったらこの場所を教えてくれたんだ。岩山は俺の思い込みだった。」
「まあいいや、で、何をするの?」
「道路に敷く石畳を切り出す。」
はぁ?…ナニイッテルノコノヒト。
これと言った道具もなく、どうやって切り出すのか。それに馬車がすれ違えるように6m幅で100㎞以上の道に敷く石畳なんて、途方もない量だ。おかしくなったのだろうか。
「ちょっと見ていて。」
そう言ったかと思うと、川の水が細い糸のように巻き上がり、岩を切り裂いた。
何が起きているの。私が呆然としていると、
「高圧の水は岩をも切り裂く。俺の魔法だよ。」
最近結果が目に見える威圧とか支配とか結界とか魔法らしいものを見ていなかったから忘れていた。彼は鑑定魔法を使っていたから、きっといつも鑑定していたな。
「なにそれずるい。慎二くんばかり新しい魔法を覚えて。手から水が出るなんて聞いて無かったよ。」
「水は川の水だよ。手から出ている訳じゃない。」
そういうことじゃなくて。
「君にも新しい能力が生えているよ。また使えるときに教えるから、許して。」
そうなんだ。じゃあ許す。慎二くんに甘いな私は。
ふと後ろを振り返ると、チャールズとハンフリーが呆然としていた。そりゃそうだよね。私はまだ水で鉄板が切られる映像を見たことがあるから、岩が切れるのも許容範囲だけれど、彼らは恐ろしいだろうね。でも魔法については私も呆然だよ。
慎二くんはチャールズとハンフリーを見て言った。
『これは秘密だ。お前たちを信頼しているから見せた。他言無用だ。』
『『はっ。』』
2人は片膝をつき、跪いた。
「これから毎日ここに通って石畳を切り出す。50㎝四方のタイルを6万枚、100㎞分だね。1~2か月は不在になるから、俺が何をやっているかを教えるために連れて来たんだ。」
そうだったんだ。これは慎二くんしかできないからやむを得ないね。
「今日は1日で何枚切り出せるかを調べるから、小百合は馬車で寝ていて良いよ。」
私が馬車に向かうと、ハンフリーがついて来たので、馬車に乗り込んだ後に
『シンジの指示に従いなさい。』
と追い払った。




